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燃え盛る炎、息も出来ない程の熱い熱風が私を襲う。
動けない私を抱く女性の顔はよく見えない。
そして、相変わらず私に何かを語り掛けていた。
(今日もこの夢か・・・)
「・・・もう、○○○○か。
アレ○○○。○の○○○○○。
○ず○○○○ろ。
で○○と、許さないからな」
そして私は目覚める。
あれから毎日見続ける同じ夢。
初めの頃は、踠く様に苦しかったのだが、今ではそれも慣れてしまった。
そして、ピアスが壊れたあの日から、徐々に感じる様になった。
私の身体の中を、何かが蠢いている事を・・・。
・・・ふう。
さあ、気を取り直して、昨日の手紙の内容を思い出す。
【会わせたい人がいるから帰って来て欲しい】と書いてあったのだ。
事件も終息したし、帰るなら今だろうと思い、今日にでも、ローレンス様へ伝えようと考えている。
でも、会わせたい人って、まさか、お見合いとかじゃないよね?
とてもじゃないが、今は考えられない。
もしそうだった場合は、やりたい事があると両親を説得して、お断りしようと思ったのであった。
「おはようアレン」
「おはようございます。ローレンス様。
お話があるのですが、今、お時間は大丈夫ですか?」
すると、笑顔で頷いて『ああ、構わない。どうした?』
と優しく聞き返してくれた。
「実は、もう1年以上実家に帰省していないので、長期お休みをいただきたいと思いまして」
「そうだな。
・・・いつ頃だ?」
「出来れば、早めに帰れたらと思っております」
「・・・分かった。
では、来週から一週間、休暇を与えるので、のんびりしてくると良い」
「ありがとうございます。
後ほど、特殊部隊にも報告して参りますので、少し席を外します」
それから私はローレンス様の執務を見守り、お昼時間となった。
「ではローレンス様、特殊部隊室へと行って参ります」
そう告げて、私は部屋を後にしたのであった。
特殊部隊室の扉を開くと、珍しい事に師匠が目に入った。
いつもは団長室にいるのに、どうしたんだろう?
そして師匠の近くには、ヴィンセルと先輩方がいる。
「お疲れ様です。
今、何をしているんですか?」
すると師匠が振り向き、私に気付いた。
「うん?
ああ、アレンか。
いやな、この前の事件の反省会をしていたんだ」
・・・反省会、とは?
それから師匠は、魔石を私に見せながら、ダメ出しをしてきたのだ。
「いいか?
・・・ほら、この時、お前は空気口に魔石を突っ込んだが、これだと音が録音出来てないだろ?
映像は確認出来るが、もしかしたら、何か独り言を呟いていたかもしれない。
だからこの場合は、床下、天井裏から撮るのがベストだな」
「あ、はい。以後気をつけます。
・・・あの、団長。
来週から長期休暇をいただいたので、実家に帰省します」
すると、魔石から目を離した師匠が問いかけた。
「また、急だな。
だが、ローレンス殿下の専属騎士の代理はどうするんだ?」
「え?必要ですか?」
「・・・お前な。
『必要ですか?』じゃない!
自分の主人の安全を第一に考えるのが、専属騎士の役目だろうが!」
私が専属になる前は、専属騎士がいなかったのだから、必要ないと思っていたのだが、そうではないらしい。
そして、師匠は話し続ける。
「ったく。しょうがねぇな。
・・・ヴィンセル。
アレンがいない間の専属騎士を頼む」
「は!?オレですか!?」
白羽の矢が立つとは思っていなかったのだろう。
目を丸くして驚いている。
「お前はローレンス殿下とも面識があるからな。
お互い、気を遣わなくて良いだろう?」
「え!?待ってください!任務だってあるんですよ!」
「大丈夫だ。今はこれと言って、重要案件はないからな。
心して、護衛に徹しろ」
すると、ヴィンセルからぶつぶつと独り言が聞こえた。
「なんでこんな事に・・・。
ローレンス殿下の方が強いんだから、オレ、必要ないじゃないか」
と、やさぐれていた。
私はヴィンセルの肩を叩き『ごめんね、ヴィンセル。この埋め合わせは必ずするよ』と伝えたのだ。
「べ、別に、謝らなくてもいいよ。
ちゃんとやるから」
そう言って、そっぽを向いてしまった。
これは、大変不本意な事だったのだろう。
私は、実家から帰って来たら、食事を奢る事を決めたのだった。
それからローレンス様の元へと帰り、任務にあたった。
そして、いつもの他愛無い会話をしてから自室へと帰る。
両親に手紙の返事をしなくてはならないので、来週から帰れる事を書いたのだった。




