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灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


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36

あれからローレンス様は、色々な書物に目を通していた。


私は扉の前でジッとその様子を見ていると、ローレンス様が、小さい声で呟いたのだ。


「心理学とは、奥が深いのだな」


・・・これは、独り言なのだろうか。


生憎(あいにく)、今はレノンさんがいない。

無視していいのか、返した方がいいのかを考えていると、また、静かに呟いた。


「・・・そうか。

であれば、一度確認してみるか」


・・・やはり、独り言だったみたいだ。


すると、ローレンス様は椅子から立ち上がり『アレン、子供達に確認したい事がある』と言うので、私も後に続いたのであった。



その頃のヴァレーロ公爵は・・・


今日は、相談したい事があると大臣達に約束を取り付けてあるのだ。


そろそろ、我が公爵家へと集まってくれるだろう。


先日、ローレンス殿下から首謀者の目星を言われた時は、マティスの事もあり、頭に血が上ってしまったが、今冷静に考えると動揺している私がいる。


今まで、皆、より良い国へとなるように、力を合わせてきたのだ。

それなのに、裏切り行為をして国を(おとし)め、あまつさえ、私の使用人を使われたとは信じられない。


・・・いや、信じたくないのだ。


だから私は、首謀者は別にいると、希望を持ってこの場に(のぞ)んでいる。


そして、しばらくすると大臣達がやって来た。

私は、レオナード殿下に言われた通りに、話を進める事へと意識を向ける。


「ヴァレーロ公爵、相談事とは珍しい。

何かあったのか?」


体格が良く、顎に豊かな髭を貯え、猛禽類の様な目つきをした男、シェディオン公爵が問いかけてきた。


「皆さん、お忙しい中、足を運んでいただき申し訳ない」


私は挨拶をし、皆に席を勧めた。


「急だったものでしたから驚きました。

早速ですが、どんな事でしょうか?」


眼鏡をかけ、神経質そうな面持ちに細身の男、リーズベルト公爵が口を開く。


「はい。実は、紛い物の魔石の件で、色々ありまして・・・」


「なに!?

犯人が分かったのか!?」


そう息巻くシェディオン公爵に私は手を振った。


「いえいえ、違うのです。

実は先日、レオナード殿下から、その件でお話がありましてね。

もしかしたら、私を疑っているのではないかと思いまして・・・もちろんですが、私は潔白です」


「ええ、もちろん信じます。

ヴァレーロ公爵が国の為に、どれほど貢献なさっていたのかを間近で見ておりますからね。

ですが、何故疑われる様な事になったのですか?」


そう返してきたのは、私達よりも(とお)は若く、まだ、男盛りであろうネーベルフ侯爵だった。


「・・・それが、分からないのです」


すると、リーズベルト公爵が『どういう事ですか?』と問いかけてきた。


「レオナード殿下は『まだ理由は言えないが、そろそろ解決するだろう』と、おっしゃられて、色々と聞かれましてね。

それが、私にだけ確認したい事があると言われたので、もしかしたら、疑われているのでは?と、勘繰ってしまったのですよ。

ですから、何か知っている事があれば、教えていただきたいと思い、今日はお集まりいただいたのです」


すると、顎に手を当てたシェディオン公爵が口を開いた。


「私はアーデンヴァルトの件で動いていたからな。

魔石の情報は持っとらんぞ。

だが、その言い方だと、其方を疑っているのではないのではないか?」


「そうであれば、良いのですがね。

ですが私も、対抗策があるのと無いのでは、心持ちが違いますから。

・・・因みに、アーデンヴァルトは、あれから動きはありましたか?」


「うーん、まぁ、そうだな。

・・・もう少し、情報を集めてから報告しようと思っていたんだが、最近は前女王派が何やら動いていると聞く。

内乱の兆しは見えないが、理由が分からない以上、警戒は怠る事なく、続けようと思う」


「そうなんですね。

確かに、アーデンヴァルトはこの事件の発端ですからな。

・・・そう言えば、ネーベルフ侯爵はメーヒェンで、同じ事件があったとおっしゃいましたな?

是非、詳しく教えていただけませんか?」


すると、茶を飲む手を止めて返してくれた。


「以前話した通りですが、アーデンヴァルトの子供達に空の魔石へ魔力を込めさせていたそうなんです」


「それは、誰からお聞きになったんですか?」


「外務担当者から聞きました。

とても親切な方でしてね、注意喚起をしてくれたのです。その時、お名前を聞いたんですが、話の内容に驚かされまして、すっかり、忘れてしまったのですよ」


「まぁ確かに、驚きますね。

因みに、リーズベルト公爵は、何か知っている事はありませんか?」


すると、眼鏡を人差し指で押し上げて話し始めた。


「私は、陛下の補佐として日々動いているのはご存知の通りですが、魔石に関する件は、レオナード殿下の持分の為、こちらに情報は入って来ておりません」


一通り聞き出したが、有益な情報は得られなかった。

強いて言えば、アーデンヴァルトで動きがある事ぐらいだろう。


「皆様、ありがとうございます。

私も、自分の身の回りを調べたいと思います」


そうして、私達は解散した。


そしてこの集会で、本当の意味での真価を発揮するのは、この後なのである。


レオナード殿下の読みでは、何かしら接触して来るはずだと言っていた。


それが今日なのか、はたまた、一週間後なのかは分からない。


私は、皆を見送り、屋敷へと戻ろうとしたら、声を掛けられた。


「ヴァレーロ公爵、この後、少しよろしいですか?」


・・・ああ、裏切り者は其方(そなた)だったのか。


「ええ、大丈夫ですぞ。では、こちらへ」


そうして、私は裏切り者を連れて、一緒に屋敷へと戻ったのであった。


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