ローレンス視点
兄上が、公爵に協力を願い出ている時に、俺は俺で考えていた。
首謀者は、偶然ヴァレーロ公爵の使用人を使ったのか、それとも、ヴァレーロ公爵に恨みがあるのか・・・。
だが、決定的な証拠が出ていないとなると、後者が濃厚だろう。
巧妙に仕組まれているのを見ると、かなり前から計画していたはずだ。
「公爵、誰かに恨まれるような事はあったか?」
兄上とヴァレーロ公爵は何かを話していたのだろう。
二人ともこちらに顔を向けた。
「ローレンス、もう少し聞き方ってものがあるだろう?」
「いえいえ、レオナード殿下、大丈夫ですぞ。
・・・そうですね。
恨みを買う事はしていない、と言いたいのですが、我が公爵家は権力や財力を誇っていると自負しております。
それを妬む者がいたとしても、おかしくはないですな」
・・・まぁ、ありきたりな理由だな。
すると、兄上が口を開いた。
「でだな、最近三大臣が発言した事柄を書き出してみたんだ。
これを元に、ヴァレーロ公爵に探ってもらう事になった」
「そうですか。俺は何か手伝いますか?」
「いや、まだ大丈夫だ。
ヴァレーロ公爵が三大臣と接触後に協力してもらうので、そのつもりで頼む」
そう兄上は俺に伝えたあと、ヴァレーロ公爵を見つめて話し始めた。
「ヴァレーロ公爵、大臣達の話し合いだが、先程話した内容で会話を進めてほしい。
早ければ、その日中に首謀者が分かるだろう」
「ええ、分かりました。
では、近日中に探って参ります。
それと、これはお願いになりますが、マティスをこちらで引き取らせていただいても宜しいでしょうか?」
俺は、布を掛けられたマティスへと目を向けた。
兄上も同じ様に見ている。
そして、兄上は静かにヴァレーロ公爵へ問いかけた。
「この者は、犯罪に加担している。
犯罪者は埋葬される事なく、焼かれるのが通常だ。
引き取って、どうする?」
「重々承知の上です。
ですが、こうなってしまったのは、私にも責任があると思うのです。
埋葬は出来なくとも、最後に、家族と会わせてやりたい。
ですから、どうか、引き取らせてもらえないでしょうか」
兄上も悩んでいるのだろう。
口に手を当てている。
「・・・分かった。
連れ帰る事を許そう。
だが、埋葬は出来ない。それを認めてしまうと、他の者に示しがつかなくなるからな」
「はい。寛大なご配慮、痛み入ります。
それでは、先ほどの件、必ず、お力になれる様に尽力して参ります故、もうしばらくお待ち下さい」
その後、再度話を詰めてから、ヴァレーロ公爵はマティスを連れ帰る為の手配をして、一緒に退出して行った。
そして、兄上の手元を見ると、拷問の首輪が握られている。
「なぁ、ローレンス?
この首輪を使っている国は分かるか?」
「そうですね、私が読んだ書物は10年程前の物でしたから、今はどうか分かりませんが、近隣だと、リンドバルドになります」
「・・・ああ。
あの、アーデンヴァルトに攻め入った国か・・・」
リンドバルドは、アーデンヴァルトに攻め入ったものの、魔法を前にして、押し切る事が出来ず、小競り合いを長い事続けていた。
今は小康状態だが、この事が国力低下に繋がったのだろう。
今は、国を立て直す事に力を入れていると聞く。
「兄上、首謀者の特徴って分かりますか?」
すると、首輪から目を離し、俺を見てから口を開いた。
「なんだ、やぶから棒に。
・・・だが、そうだな。
なんとなくだが、人を信用しないタイプだと感じる」
「例えば、どんなところですか?」
「ダントン伯爵は、首謀者の顔も名前も知らない。
それに、マティスだ。
彼は、拷問の首輪がどんな物かを知らなかったはずだ。
知っていたら、真実を話そうとはしなかっただろう。
つまり、首謀者は裏切られる事を前提で動いているのではないかと思ったんだ」
・・・なるほど。
兄上の見立ては、概ね合っているのだろう。
「ありがとうございます。
俺も少し、調べたい事があるので、ヴァレーロ公爵からの報告があったら、また呼んでください」
そう言い残して、俺は執務室をあとにしたのであった。




