ローレンス視点
一夜明け、俺はまだ幸せの絶頂にいた。
昨日、アレンが俺を抱きしめてくれたのだ!
これは、アレンの中で俺への気持ちに変化があったのではないかと、期待してやまない。
もしかしたら、応えてくれる日もそう遠くないのではないか?
と、自分の都合の良い方に考えてしまう。
そして俺は、顔がニヤけてしまうのを必死に抑え、レノンが来るのを待っていると、早速やって来た。
「おはようございます。ローレンス様。
もうお目覚めだったのですね。
遅くなりまして、申し訳ありません」
「いや、大丈夫だ。
いつもより、早く目が覚めただけだ」
すると、レノンは不思議そうな顔をして問いかけてきた。
「・・・何かありましたか?」
・・・おや?
レノンにしては、鋭いじゃないか。
いつも、このくらい理解を示してもらえると有り難いんだがな。
「・・・分かるのか?」
「はい!何年もご一緒しているんです。
お顔を見れば、すぐに分かりますよ!
いつも、ローレンス様の気持ちに応えられるように、精進しておりますから」
レノンはそう言って、支度を始めてくれたのだが、今の言葉に、俺は引っかかりを覚えた。
・・・あれ?・・・なんだ?
・・・いや、待て。
アレンは以前、気持ちに応える資格がないと言っていた。
そして、理由も話せないと。
であれば当然、俺に想いを返してはくれないという事ではないか。
資格・・・それはいったい、何なのだろう。
もしかしたら俺は、最も大事な事を見落としているのかもしれない。
今までは、気持ちを伝える事だけに満足していたが、昨日の事があり、それだけでは物足りないと思ってしまった。
魔石の事件が解決したら、アレンの資格というものが、何なのかを調べる事にしよう。
そして準備が終わり、寝室を出ると、アレンがすでに定位置に立っていた。
・・・ああ。
やっぱり、彼は綺麗だと思う。
何としても、彼の【資格】という憂いを取り除かなければいけない。
そう気持ちを新たにして、アレンへと声をかけた。
「おはよう、アレン。
昨日は、よく眠れたか?」
「はい。
それと先程、侍従が来まして、レオナード殿下がお呼びだそうです」
「そうか、分かった。
では二人とも、すぐに向かおう」
俺達は部屋を出て、兄上の執務室へと向かう。
今日、特殊部隊からの報告があるとは思っていたが、まさか、こんなに早くからとは思ってもみなかった。
そして執務室へと着き、声をかける。
「ローレンスです。兄上、参りました」
「入れ」
ガチャリとレノンが扉を開き、中へと入る。
「ローレンス。朝早くにすまない。
だが、早急に話さなければならないのだ」
そう言う兄上の顔には、なんの感情も浮かんでいなかった。
「昨日、特殊部隊が調べた内容だ。
映像で残してあるから、見た方が早いだろう」
兄上は魔石を差し出し、俺の背後に目をやり、再度話し始めた。
「そこの君、昨日はご苦労だった。感謝する」
「身に余るお言葉を頂き、誠にありがたく存じます」
と、アレンが堅苦しく返していた。
俺は、魔石を受け取り再生すると、辺り一面が暗闇に包まれていた。だが、すぐにダントンと男の声が聞こえてきたのだった。
「彼の方は、なんと仰っていましたか?」
「アーデンヴァルトの国境警戒が当面続く為、すぐに手配は難しいそうです。
落ち着いてからのご案内になりますので、しばし、お待ち下さい」
「それでは、困る!
今なら子供を買う金はあるが、日が経つと用意できるか分からない。
なんとか、早めにお願いしたいのだが」
「・・・そう言われましてもね。
こちらも、リスクを冒してまで、貴方に付き合う必要はないのですよ。
ダメなら、他の方に斡旋するまでです」
「・・・そんな・・・そんな事って・・・
であれば私は、あなた方を国に報告する!
・・・それでも、いいのか?」
「・・・ほう。
では、どうぞご自由に。
ちなみに貴方は、私達の正体がお分かりなのですか?
報告して、貴方が捕まらない事を祈りますよ」
「くっ。
・・・も、申し訳ない。取り乱してしまった。
彼の方に伝えて欲しい。
その条件でお願いしたいと」
「ご納得いただけて、大変助かります。
では、動きがあり次第、こちらから追って連絡致します」
魔石の映像はここで終わっていた。
「今のが、密会の内容だ。
ヴァレーロ公爵は来なかったそうだ。
そして次は、これを見てくれ」
そう言って、兄上はまた一つ、魔石を差し出すので、受け取り再生した。
風の音と、草木を踏む音が聞こえた。
走っているのか、暗闇の中をどんどん進んでいる。
そして前を走るのは、先程、ダントンと話していた男だろうか。
同じ光景が続く中、男が一軒の家へ入った。
すると、家の周りをぐるっと一周したかと思うと、壁穴に魔石をねじ込んだ。
中には、男が仮面を外し、服を着替えている映像が映っていた。
ものの数分で魔石は引き抜かれ、馬に跨った男を追いかけるのだろう。
すると、ヴィンセルが映った。
・・・これを撮ったのが、アレンなのか。
そして、アレンが馬へ跨り駆けて行く。
しばらくして、男がヴァレーロ公爵の屋敷へと入るまでが映し出されていた。
「・・・私は朝一番にヴァレーロ公爵へ手紙を送った。
気づかれない様に、相談事があると書いてな。
・・・はぁ。
これでやっと、解決出来る」
そう言う兄上は、安堵よりも、もっと、別の何かがある様に感じた。
予想していた事が現実となり、心構えをしていたとしても、裏切られた事への思いがあるのだろう。
「兄上、俺も同席していいですか?」
「ああ、もちろんだ。
日時が決まり次第、教える」
とその時、ドアのノック音と共に、侍従が入って来た。
「レオナード様、ヴァレーロ公爵からお手紙が届きました」
「なに?
・・・かなり速いな」
兄上は侍従から手紙を受け取り、封を開け、文字を目で追って行く。
俺は、その様子を見ながら、静かに待った。
「ローレンス。
今日の昼に来れるそうだ。
予定は大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
「では、私はヴァレーロ公爵に返事を書くので、13時前にここへ来てくれ」
それから俺は、兄上の執務室を後にしたのだ。




