表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/63

35

報告の為に、ヴィンセルと団長室へと向かった。

すると師匠は、先程、先輩達が撮ったであろう映像を見ていた。



そして、私達に気付いた師匠が映像を止めて顔を上げたのだ。


「遅くまで、ご苦労だった。

・・・収穫はあったか?」


その言葉にヴィンセルが反応した。


「この魔石に全てが記録されています。

・・・やはり、ヴァレーロ公爵でした」


「・・・そうか。

二人とも、もう遅いから早く休め。

映像はこちらで確認する」


師匠はそう言って、ヴィンセルから魔石を受け取ったのであった。


そして、今日の任務は終わったのである。

帰り際に、ヴィンセルを見ると、神妙な面持ちをしていた。

とても、声をかけられる雰囲気ではなかった。



それから私は、中庭からローレンス様の部屋を見ると、まだ灯りが付いていた。


急いでいたから何も伝えずに出てしまったのだ。

・・・もしかしたら、怒っているかもしれない。


私は部屋へと急いだ。


扉を静かに開けると、ローレンス様は、机に向かい仕事をしていた。


「ただいま戻りました。

・・・あの、ローレンス様。

何も伝えずに任務に行ってしまい申し訳ありませんでした」


すると、何も言わずに立ち上がったローレンス様が、こちらへとやって来る。

顔を見ると、眉を寄せていた。


・・・やっぱり、怒ってる。


私は、手を握りしめ、一度、瞼をギュッと閉じた。

覚悟を決めて待っていると、身体に温もりを感じたのだ。


いつかの爽やかな香りが鼻腔へと駆け抜ける。


「・・・心配した。

・・・・無事で良かった・・・」


そう辿々(たどたど)しく話すローレンス様に、心から私の事を心配してくれているのが分かる。


こんなに思ってくれる人は、きっと、家族以外では、この人だけだろう。


そう思ったら、私もローレンス様の背中に、そっと腕を回したのであった。


すると、ピクリと驚いた様子のローレンス様に思わず笑みが溢れた。


いつもは、遠慮なく抱きしめたり、突拍子もない言動をして、私をドギマギさせるくせに、自分がされると驚くなんて・・・。


・・・ふふっ・・・本当に可愛い人。


私は遠慮なく、ローレンス様の香りを吸い込んでから、離れたのであった。


そして顔を見ると、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。


何も言わずに、ジッと私を見つめているローレンス様を見つめ返し、静かに問いかけた。


「ローレンス様、抱きしめ返されるのは、どうでしたか?

・・・驚いてましたよね?」


すると、信じられないと言わんばかりの顔をして呟いたのだった。


「・・・ああ・・・幻想かと思った」


「幻想ではありません。現実です。

・・・だから、ちゃんと覚えておいて下さい」


そう伝える私に、目を丸くしてから微笑んでくれたのだ。


「ああ、忘れるわけがない。

知っていると思うが、俺は記憶力には長けているんだ。

・・・こんなに嬉しい事は、初めてだ」



私は、彼の顔を見つめながら思う。

きっと、私も忘れる事はないだろう。と。


それほどまでに、私の中のローレンス様の存在が大きくなっているのだ。


そして、また思う。

・・・女の私でもいいと言って欲しい。


・・・だが、それこそ幻想だ。


私は、気持ちにそっと蓋をし、口を開いた。


「ローレンス様、今日の任務で分かった事があります。報告よろしいですか?」


「いや、明日兄上から話があるはずだ。

それよりも今は、この気持ちを噛み締めたい。

・・・抱きしめ返される事が、こんなに幸せだとは知らなかった」


そう言って、今だに感極まっている。


そこまで喜んでくれるとは思わなかった。


私は、もう夜遅い事や、任務でヘロヘロな事を忘れてしまう程に、ローレンス様の幸せそうな顔を見る事への嬉しさを覚えたのであった。


それから程なくして、気になる事があったので、問いかけたのである。


「こんな時間までお仕事とは、何かあったのですか?」


すると、ローレンス様は、机の半分を占領している書類に目を向けてから答えてくれた。


「これは、兄上の仕事を手伝っているんだ。

兄上からは、さっさと寝ろと言われたんだが、アレンがいないから眠れないだろう?

ボーッとしているぐらいならと、無理やり預かってきたんだ」


「・・・あの、すみません」


「アレンが謝る事ではない。

俺が、勝手に待っていたいだけなんだ。

だから、気にしなくていい」


そう言ってはくれるが、やっぱり居た堪れない。


任務があれば、行かなくてはならないが、終わったら早めに帰って来ようと、改めて思うアレンシアであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ