第一王子視点
「兄上、失礼します」
ローレンスの声に返事をすると、侍従と共に入って来た。
「早かったな。
早速だが、話そうか。ここに座ってくれ」
そう伝え、前の席へと腰掛けるように促した。
私は、机の書類が山積みになっているのを退けようと整理をしていると『兄上?俺も執務を手伝いますか?』と聞いてきたのだ。
私は感動のあまり、手に持つ書類を落としてしまった。
まさか、弟の口から、私を気遣う言葉を聞けるとは・・・。
嬉しさで胸がいっぱいになる。
「ローレンスが気にかけてくれた事に、私はとても嬉しいよ」
と、思わず口から出ていた。
だが、大変勿体無いが、今はそんな余韻に浸っている場合ではない。
そして、すぐに我に返り、口を開いたのだ。
「ローレンス、有難いが、今はこちらが優先だ。
今日、急遽定例会が行われたんだ。
とりあえず、順を追って話すから聞いてほしい」
そうして私は、定例会を振り返りながら話し始める事にしたのだった。
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「シェディオン公爵、アーデンヴァルトの件は、何か分かりましたか?」
と、リーズベルト公爵の進行で話が始まった。
今日は急だった為、父上は出席していない。
「まずは、ネーベルフ侯爵の言っていた通り、噂は本当であった。
魔石の採掘量も年々減り、財源がない為、平民の子供を売って足しにしているようだが、焼け石に水だろう。
平民達は鬱憤が溜まっているようだが、貴族に魔力で敵うはずもなく、静観状態だ。
今のところ、我が国への被害はないと思うが、国境の警備は、これからも続けて行う事を推奨する」
「ご報告、ありがとうございました。
他の方は何かありますか?」
すると、ネーベルフ侯爵が話し始めた。
「実は、その子供達の売買先ですが、他国の貴族相手に行なっているようです。
隣国メーヒェンでも同じ事件があり、経緯を教えていただけたのです。
低位貴族が主に魔石の製造、販売を行い、それを斡旋していたのが高位貴族だったと言うのです」
それに驚いたように返したのはヴァレーロ公爵だった。
「なんと!高位貴族でそんな恥知らずな者がいるとは・・・。
理由が気になるところではありますが、それよりも、レオナード殿下、現状は如何ですかな?」
・・・白々しい。
特殊部隊から、ヴァレーロ公爵の使用人で間違えないと報告を得ている私には、そう感じた。
そして今日、ダントンと密会するのにも関わらず、私に調査進捗を聞いて来るなんて、面の皮が厚いにも程がある。
「ええ、調査は順調ですよ。
近々報告ができる事を楽しみに待っていてください」
私は、ヴァレーロ公爵からの宣戦布告を受けたのであった。
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「定例会の内容は概ね、子供達に聞いた内容と相違なかった。
だが今になると、ヴァレーロ公爵の態度も気になる。
事が明るみに出る可能性があるというのに、躊躇いの仕草さえなかった。
・・・もしかしたら、何か策があるのだろうか」
やはり、今日の報告を待つしかないのか。
何としても、特殊部隊には証拠を持ち帰ってもらいたい。
すると、静かに話を聞いていたローレンスが口を開いた。
「本当にメーヒェン国でも同じ事件があったのでしょうか?」
「・・・なに?どう言う事だ?」
「いえ、ただ気になっただけですが、シェディオン公爵の話は子供達と一致していた。
だが、ネーベルフ侯爵の話は、裏が取れていないので、本当に信用していいのか、分からないだけです」
・・・確かにそうだな。
ネーベルフ侯爵は他国とのやり取りも多い事から、当たり前の様に信用してしまった。
ヴァレーロ公爵が、ああなのだ。
簡単に信じる事はできない。
「そうだな。
メーヒェン国へも事実確認をしてみよう。
それと今夜、ダントンとヴァレーロ公爵が密会する予定だ。
特殊部隊からの報告があり次第、また声を掛ける。
だから、そのつもりでいてくれ」
その後、ローレンスは侍従を連れ、退出して行った。
今夜が勝負だな。
・・・皆、頼むぞ。
そして気持ちを切り替え、山積みの書類に手を伸ばしたのであった。




