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「お兄ちゃん、今日はこの本を読んで?」
「ルーナ、少し待ってくれるか?
リオンに新しい文字を教えたら行くよ」
「はーい」
少し時間が空いたので、私は子供達の部屋で過ごしていた。
リオンには新しい文字を、ルーナとテオには本を読んでやる。
そして、今日はダントン伯爵が、彼の方と密会する日だ。
私は子供達の部屋を後にして、特殊部隊室へと向かう。
その途中、ヴィンセルに会った。
「やぁ、ヴィンセル。一緒に行こう」
「・・・うん、別にいいよ」
なんだ?今日のヴィンセルは素直だな。
・・・ちょっと聞いてみるか。
「あれから何か分かった?」
「いや、それらしき人物が見当たらないんだ。
もしかしたら、貴族ではないのかもしれない」
「だとすると、途方もないな。
今日はどうするのかを団長に聞かないとね」
私とヴィンセルが話していると、前からゾロゾロと使用人を連れた、偉そうなおじさん達がやって来た。
目を凝らすと、ヴァレーロ公爵とネーベルフ侯爵がいる。
なんでこんな所に!?
バレないとは思うが、念の為、ヴィンセルの後ろに隠れた。
すると、私達がいる手前の部屋へと入って行ったのだった。
「はぁ、びっくりした。さぁ、行こうか」
と、促すが、ヴィンセルは公爵達が入って行った扉を見つめて動こうとしない。
「・・・ヴィンセル?何かあった?」
「・・・・・いた」
「え?何が?」
「仮面の男」
・・・え!?うそ!?
「誰なの!?」
すると、急に歩き出したヴィンセルが『話は団長室でする』と言い、私達は急いで特殊部隊室へと向かったのである。
「「失礼します」」
「ああ、入れ」
団長室へ入ると、師匠は夜会での映像を見ていた。
「昨日からダントン伯爵を見張らせている。
動きがあれば、すぐに出てもらうから、そのつもりでいろ」
「叔父上!さっき仮面の男を見たんだ」
「なに!?誰だ?」
「・・・ヴァレーロ公爵の使用人だ」
!!?
「だとしたら、作戦変更だ。
・・・アレン。
今日の任務は、お前にかかっている。
いいか?よく聞け。作戦の話をするぞ」
作戦内容は、ダントン伯爵を見張っている隊と合流して追跡、その後、密会現場で待機の上、状況が許すのであれば、魔石に音声と映像を残す事。
そして密会終了後、私とヴィンセルは彼の方を尾行して証拠を得るように言われた。
その際に、私がメインで張り付き、ヴィンセルが何かあった時のサポート役となったのだ。
「叔父上。オレじゃダメなんですか?」
「お前より、アレンの方が気配を消すのに長けている。その代わり、夜目が利くお前が見張りについた方が得策だろう」
私達は了承をし、すぐに別隊と合流する為に、特殊部隊室を後にしたのであった。
【ローレンス視点】
アレンが子供部屋へと行ってから、結構な時間が経つ。
子供達に話を聞いた日から、休みの日でも時間があれば行っているようだ。
余程、心に刺さる物があったのだろう。
書類を繰りながら考えていると『お茶の準備をする』と言って、出ていたレノンが戻って来た。
「ローレンス様。
今、レオナード殿下の侍従に会いまして、すぐに執務室へといらして欲しいとの事です」
「分かった。では、向かおう」
そうして俺は、処理していた書類の束を端に寄せてから部屋を出たのであった。
向かう道すがら、廊下の窓から外を眺めると、大臣達がいた。
・・・もしかして、シェディオン公爵からアーデンヴァルトについて、報告があったのかもしれない。
そう予想して、兄上の執務室へと急ぎ向かったのであった。




