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灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


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ローレンス視点

兄上からの呼び出しで執務室へと向かっている。


今日は大臣達との定例会のはずだ。

きっと、何かあったのだろうと思い、レノンに兄上の執務室の扉を開けてもらった。


「兄上、お待たせ致しました」


「ローレンス、忙しいところ悪いな。

早速だが、定例会でアーデンヴァルトの話が出た。

国の上層部が誘拐を行なっているという噂があるようなんだ。

早急で悪いが、子供達から事実確認がしたい。

今から行けるか?」


「はい。

兄上も同席されますか?」


「いや、知らない私が居ると口が重くなるだろう。

なので確認後、報告を頼む」


俺、レノン、アレンの三人は、そのまま子供達の居る客室へと向かった。


部屋へ入るとルーナがベッドの上で、医師に包帯を替えてもらっていた。


「ルーナの足の具合はどうだ?」


「はい。腫れも引き始めましたので、あと一週間程、安静にしていただければ大丈夫でございます」


すると、ルーナが口を開いた。


「リオンとテオは、向こうの部屋で本を読んでるよ」


「そうか。では、君は安静にしているように」


『うん』と返事をするルーナをあとに、隣の部屋へ移動した。


「リオン、アーデンヴァルトの事を聞きたい。

知っている事を話して欲しい」


そう問いかけると、本から顔を上げたリオンが『分かった』と言い、床から立ち上がった。


レノンに誘導されて椅子に腰掛けたリオン。

机を挟み俺が座り、その後ろにアレンが立つ。


「早速だが、どうやってこの国へ来たんだ?

覚えている事を事細かく話してくれ」


すると、リオンは一度目を閉じてから静かに話し始めた。


「その日は、父ちゃんの仕事の手伝いをしていたんだ・・・」


※ーーー※ーーー※ーーー※ーーー※



俺の家族は、鍛冶屋を営んでいる父に染色工房で働く母と俺、ごく一般的な家庭だ。


父ちゃんは、お酒を飲む時はいつも、口癖の様に言う。


「昔のアーデンヴァルトは良かった。

金が全ての国じゃなかったんだぞ!

俺達平民だって、幸せに暮らせていたんだ。

父ちゃんもな、今のしがない鍛冶屋じゃなく、魔石の加工職人をしていてな、それに、ピカイチの腕前だったんだ!

・・・今とは違い、昔はザックザックと魔石が掘れたのに、今は全くだろう?」と。


昔を知らない俺は、なんて答えていいのか分からなくなるんだ。


だって、アーデンヴァルトは貧富の差が激しく、金持ちが正義だ。

俺達みたいな平民は、働いて働いて、やっと、その日の暮らしができる。

学舎に通いたくても、そんな余裕すらない。


だから、そんな夢物語を嬉しそうに話す父が、信じられなかったのだ。


今日も父ちゃんの手伝いをしていると、良い服を着た役人が入って来た。


そして、父ちゃんに紙を見せながら言ったんだ。


「子供を一人差し出せ。それが、この国の為になる」と。


すると、父ちゃんはその紙を役人から引ったくり、ビリビリに破いて言った。


「ふざけるのも大概にしろ!

こっちは、高い税金納めてんだ!

それに、子供だと?

そんなの、死んだって渡すわけないだろ!!」


そう言って、役人に立ち向かう父ちゃんは、カッコよかった。


けど、役人の仕事を妨害した事による罰で、何処かへ連れて行かれたんだ。


その後の父ちゃんを俺は知らない。

ちゃんと、家に帰れている事を願うばかりだ。


そして俺は、そのまま役人に王宮へと連れて行かれた。

だだっ広い部屋には、数多くの子供が居たんだ。


それから、4、5人に振り分けられ、空の魔石に魔力を込める事をさせられた。


その時に出会ったのが、テオとルーナだ。

もう一人居たのだが、すぐに何処かへと連れて行かれたので、名前は覚えていない。


俺達三人は、来る日も来る日も魔石に魔力を注いだ。


暴力を振るわれる事はないが、役人が言うんだ。

「これで、国は豊かになる。君達が、頑張れば頑張るほどに、未来は明るくなるんだ」と。


だから、やらないという選択肢はなかった。

・・・だって、みんな幸せになりたいから。


俺達の力で、それが叶うのであれば、頑張る他に道は無かったんだ。


それから、何日経ったのか分からない程の日数が過ぎ、俺達三人は呼び出された。


「なんだろうね?頑張ってるから、ご褒美をもらえるのかな?」


「僕ね、この前聞いたの。

呼び出されると、お家に帰れるんだって。

早く、パパとママに会いたいな」


そう楽しそうに話すルーナとテオに、俺の心も弾む。


俺達の努力が実ったのかもしれない。


ワクワクしながら、役人達がいる部屋をノックした。


すると、役人より身なりの良い、如何(いか)にも金持ちだ、という風貌のおじさんがいた。


おじさんは、俺達をジロジロ見てから言ったんだ。


「では、三人まとめて頂こう」と。


そうして、俺達の目の前で金の取引が行われているなか、役人がニヤリと笑って言った。


「お前達は、いい金になるんだ。

本当に、俺達の未来を照らす光だよ。

・・・ははっ。

ああ、それと、逃げ出そうなんて考えるなよ?

もし見つけたら、何度だって、売り(さば)いてやるからな」


その言葉に、目の前が真っ赤に染まった。

(いきどお)りの無い怒りが込み上げる。


そして、その役人は『まぁ、逃げられないか。お前らのようなガキは、所詮、親の所しか行く当てがないもんな』と笑いながら捨て台詞を吐いたのだ。


俺の握っている拳が震えた。

期待して、頑張ってきた自分が馬鹿みたいだ。


隣を見ると、テオは理解していないのか、ぼんやりと取引の光景を見ている。

そして、ルーナは下唇を噛んでいた。


俺だって、本当は殴りかかりたい。

けど、子供の俺達が何をしたって、どうにもならないんだ。

きっと、酷い目に遭わされる。


そう思うと、足がすくむ自分に情けなくなった。


その後、俺達は魔力封じの腕輪をされ、すぐに引き渡されて馬車へと乗せられた。


ガタゴトと揺れる馬車の中、おじさんが『着いたら、たっぷりと仕事を与えてやるからな。楽しみにしているんだぞ』と上機嫌に言ってきたのだった。


※ーーー※ーーー※ーーー※ーーー※


「・・・その後は、あの屋敷で魔石に魔力を込めていたんだ。

役人と違って、折檻(せっかん)がすごくて、テオは話せなくなった。

ルーナだって、足に酷い怪我を負わされた。

俺だって・・・。


・・・・・。


・・・俺達は、なんにも悪い事なんてしてない!

なのに、なんで?

・・・なんで、こんな目に遭う?」


すると、後ろに立っていたアレンがリオンに近寄り、抱き締めたのだ。


「リオン。

・・・そうだね。君達は何も悪くない。

悪いのは、君達を利用した大人だ。

だから、約束をしないか?」


「・・・約束?」


「ああ。

君達は、もう自由なんだ。

だから、幸せになれるように、私も出来る限りの事をすると約束する。

・・・どうだろう?」


「・・・なんで?

そんな事したって、お兄さんの得にはならないよ?」


するとアレンは、眉を八の字にして悲しそうな顔で口を開いた。


「得とか損とか、そんな事は関係ないんだよ。

あとね、私には弟がいるんだ。

だからかな、君達のような小さい子には、笑っていて欲しいと思ってしまう。

だから、私にも手伝わせて欲しいんだ」


「・・・うん、ありがとう」


そう言って、ぎこちないが、年相応に微笑む彼の姿に、俺も、アレンも目を奪われたのだった。


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