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灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


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28

あれから数日経ち、子供達はだいぶ、今の環境に慣れたそうだ。


けれど、話を聞くまでには至っていないようで、もう少し、様子を見てからにするとローレンス様が言っていた。


そして先日、第一王子に報告した事により、ダントン伯爵の様子を探る任務を言い渡されたのだ。



その為、私とヴィンセルは、王都にある伯爵邸へと向かったのである。


「ヴィンセル、今日の聞き込みだけど、準備はいい?」


「・・・・」


・・・またか。

最近のヴィンセルはおかしい。

何かを考えているのか、ぼんやりとしている事が増えた。


私はヴィンセルの肩を叩き、再度話しかける。


「ヴィンセル、聞こえてる?」


すると、上の空で『・・・うん?』と返事をしたかと思ったら『!?ア、アレン!?何でここに!?』と挙動不審になっている。


「いや、一緒にここまで来たじゃないか。

熱でもあるんじゃないか?」


私はヴィンセルの額に手を当てた。


すると、触っているうちに、どんどんと熱くなっていく。


「ヴィンセル。やっぱり熱があるよ。今日は帰る?」


「ね、熱なんてない!大丈夫だから、手、どけてよ」


「分かったから、そんなに怒るなよ。本当に平気?」


「・・・平気。

それに怒ってなんかないから。

ほら、行くよ!」


ヴィンセルは、本当にどうしたのだろうか。

とりあえず、サクッと終わらせて、早く解散した方が良さそうだ。


私達は、屋敷の使用人達から話を聞くべく、変装をし、ヴィンセルに野菜が入った箱を持たせた。


一階の裏口から厨房へと向かう。


「こんにちはー!

野菜の販売で来ました!今日はキャベツがお勧めですよ」


私は扉を開けて、大声で呼びかけた。

すると、料理人がやって来たのである。


「ああ、今日は旦那様がいない日なんだ。折角来てくれたのに、悪いな」


「いえいえ。明日の分とかはどうですか?」


「二、三日は戻らないらしいから、大丈夫だ。

また、その頃に来てくれるか?」


「そうなんですね。

分かりました。では、また来ます」


そう言い残して裏口から退出した。

だが、もう少し詳しい事を知りたい為、そのまま洗濯場まで向かったのである。


そこには、三人の下女が井戸で洗濯をしていた。


「こんにちはー!

野菜の配達に来たんだけど、旦那様が留守だから不要って言われてしまったんだ。

良かったら、貰ってくれないかな?」


「・・・くれるって言うなら嬉しいけど。

・・・本当に、いいのかい?」


「大丈夫、大丈夫!

その代わりに、この事は内緒で頼むよ」


すると、ヴィンセルの箱の中を覗き込む下女達。


「キャベツがお勧めだよ!好きなの持っていってね」


下女達はキャッキャ言いながら、野菜を手に取っている。


「それでさ、旦那様はいつ帰って来るか知ってる?

いやね、また持って来て断られるのも嫌だなって思ってさ」


すると、キャベツを脇に抱えた下女が口を開いた。


「旦那様は、二、三日は帰らないらしいよ。

だから私達も明日、明後日と休みになったんだ。

本当、困るよ。

侍女と違って通いの私達は、日給制だからねぇ。

稼ぎが減っちまって、大変さ」


すると、他の下女達も野菜を選びながら口々に話へ加わる。


「そう言えば、借りてる屋敷で問題があったんだろう?

朝から怒鳴り散らしてたって話じゃないか」


「そうそう、ここまで聞こえる程の大声で凄かったんだから。

確か、男が子供を連れて居なくなったから、探し出せって言ってたね。

あんなに焦るなんて、ただ事ではないよ」


「それで、旦那様もその屋敷へ飛んで行ったんだろう?」


と、下女達の話は尽きそうもない。

私は、これ以上の情報は得られないと思い『じゃあ、僕達は帰るよ。野菜は置いていくから、ゆっくり選んでね』と切り上げたのであった。


敷地を出てから林の中で変装を解く。


ローレンス様の思惑通り、男が子供を攫ったと報告があったようだ。

そう考えていると、ヴィンセルが口を開いた。


「ねぇ、ローレンス様はアレンが女って知ってるの?」


「え?知らないけど・・・って、今それ関係ないだろ」


「本当は知ってるんじゃない?

だって、君と必要以上に距離が近いし・・・」


ローレンス様が男を好きなのを知らないヴィンセルが、口を尖らせて聞いて来た。

本当の事を話せない私は、濁すように伝えたのだ。


「いいや、それは断じてない。ただ、使用人思いのいい方なんだよ」


「絶対違う!そんなふうに見えないし!」


・・・また、面倒臭くなってきた。


「あのさ、ヴィンセルはローレンス様の何を知っているの?

それと、今は任務中なんだ。

関係ない話は今度にしてくれ」


すると、不貞腐れたヴィンセルが『もう、いい』と言い出したのだ。


・・・はぁ。

15、6歳の男子って、こんなに面倒なのか?


マイケルは素直で可愛いのになぁ。

まぁ、まだ12歳だけど、15歳になっても、きっと可愛いはずだ。


そう考えると、だいぶ家族とも会っていない。

この件が落ち着いたら、少し休みを貰おうかなと考えたのであった。


その後は、不機嫌なヴィンセルを連れて王宮へと戻った。


副団長に報告をし、ヴィンセルに『じゃぁ、また』と声を掛けると、伏し目がちに口を開いたのだ。


「・・・さっきは、ごめん。

なんか、意地になってしまった。

・・・じゃあ、また」


そう言って、去って行ったのである。


・・・なんだ。

可愛いところもあるじゃないか。


私は、ほっこりとして緩んでしまった口元を引き締めてから、部屋へと戻るのであった。






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