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ガチャリと、無情にも扉が閉まる音が室内へと響いた。
私は部屋を見回すと、食事が出来るダイニングテーブルとソファ。奥の部屋にベッドが2つ並んでいた。
そして、湯浴みを終えたローレンス様は、ソファに腰掛けている。
「アレンも湯浴みをしてくるといい」
「・・・はい。では行って参ります」
浴室へと入り、服を脱ぐ。
・・・ど、どうしよう。
女だとバレない様にしなければ。
それと、寝る時もサラシを着けなきゃダメかな・・・。
そう思い、私は手早く済ませて部屋へと戻った。
そして、部屋へ戻るとローレンス様が何かを書いていたので、私は、邪魔をしないようにと音を立てずに扉の前へ立ったのだ。
私は自分の格好を再度確認した。
女だとバレる要素はないだろう。
サラシを着けて寝た事はないが、いつもより緩く巻いたので、多分大丈夫だ。
そんな事を考えていると、視線を感じ、顔を上げた。
すると、ローレンス様がジッと私を見ている。
・・・・・・。
え?
・・・なに?
バレたのかと急に不安になる。
そして、目を逸らせず、暫く見つめ合っていると、ローレンス様が口を開いた。
「アレン、今日は疲れたろう?
もう寝ようか」
と言い、寝台へと移動し始めた。
「では、私はそのソファで休みます」
「ベッドは2台あるから遠慮なく使ってくれ。護衛なら大丈夫だ」
そう言って、片方のベッドを勧めてくる。
あまり、頑なに断るのも変に思われるかもしれない。
「では、お言葉に甘えて、失礼します」
と言い、ローレンス様の隣のベッドへと腰掛けた。
すると、ローレンス様が『誰かと一緒に眠るのは初めてだ』と頬を赤くしている。
・・・い、居た堪れない。
私は、どんな反応を返せば良いのか・・・。
そして、考えた末に『私も、誰かと一緒なのは、初めてです』と答えたのだ。
その返事を聞いたローレンス様は、嬉しそうに『そうか』と一言呟き『おやすみ』と言って横になったのであった。
夜も更け、寝室では・・・
(チ、チ、チ、チ、チ)
と、時計の秒針の音が聞こえる。
そして、隣には、静かな寝息と共に、横になっているローレンス様。
・・・ね、眠れない。
とりあえず、羊の数でも数えようかな。
と、気を取り直して数え始めるアレンシアだった。
【ローレンス視点】
・・・アレンの寝息が聞こえる。
さっきまでは、もぞもぞとしていたので、なかなか寝付けなかったのだろう。
俺はアレンの寝ている方に顔を向けた。
コバルトブルーの瞳は閉じられ、赤い、綺麗な髪が顔に掛かっている。
・・・まさか、一緒の部屋で寝られるとは思わなかった。
いつもは見せない、気の抜けた顔を眺める。
そして、切りが良いところで、自分も眠りについたのであった。
そして、朝方・・・
アレンの魘される声に飛び起きた。
隣を見ると、苦しそうに首を掻いている。
ただ事ではないと思い、アレンに声をかけた。
「アレン?どうした?どこか痛いのか?」
近くで見ると、酷く汗をかいていた。
俺は、汗を布で拭ってやり、再び声を掛ける。
「アレン!起きてくれ!」
すると、ハッとして目を開けた。
「ロ、ローレンス様が、何故ここに!?」
と、昨日一緒の部屋で寝た事が頭から抜けているようだ。
「昨日、同じ部屋で寝ただろう?
それより、酷く魘されていたが、何があったんだ?」
やっと、状況を理解したようで『失礼しました』と言い、居住まいを正してから話し始めた。
「昨日と同じ夢を見まして・・・。
それが、悪夢だった為に魘されてしまいました。
ご迷惑をお掛けし、申し訳ありません」
「大丈夫だ。
良ければ、どんな夢か話して貰えるか?」
「昨日は、真っ赤に燃え上がった炎の中、動けない私に女性が手を伸ばしてくる夢でした。
そして今日は、昨日の続きなのか、その女性が私に触れ、何かを話しているのです。
そして、最後に・・・
その・・・
私に向かって、許さない。
と告げたのです」
アレンはそう言い切ると、一度瞳を閉じた。
そして、再び口を開いたのである。
「夢なのに、熱さや肺に入る空気が息苦しいと感じるなんて、不思議ですよね?」
と、そう言って、微笑んだのだ。
「今は、もう大丈夫なのか?」
「はい。なんともありません。
ご心配をおかけ致しました」
そうしてアレンは、湯浴みをしてくると言い、寝室を出て行った。
すると、入れ違いにレノンがやって来たのだ。
「ローレンス様、おはようございます。
これから、準備をさせていただきますね。
それと、子供達の準備は既に終わっております」
「そうか。では、頼む」
準備をしてもらっている中、先程の事を考える。
アレンの夢はいったい何だったのだろう。
しかも、同じ夢の続きを見る事など、なかなかない。
・・・もしかしたら、アレンも覚えていない昔の記憶ではないだろうか?
と、そう思ったのだが、シルバリー家が火事になったと聞いた事は、今までに無い。
俺が熟考していると、レノンから『お待たせ致しました』と声を掛けられた。
意識を戻し、周りを見るとアレンも既に準備が整っていた。
それからは、皆で食事をし、王宮へと戻ったのである。
そして、その後の対応に追われ、アレンの夢の件は、そのままになってしまったのだった。




