史実での秋田藩十二所の名医「赤ひげ先生」について
本作はフィクションですが、難病や医療制度についての描写には
できる限り現実の知見を参考にしています。
ただし、医学的な正確さよりも「登場人物の心」を優先しています。
気軽に読み進めていただければ嬉しいです。
大きな熊のような柳が腰をかがめ、涼香の視線まで降りてきて尋ねた。
「……赤ひげ先生をご存じですか?」
涼香が首を傾げる。
「山本周五郎の小説の……?」
柳は静かに首を振った。
「いや。秋田の赤ひげだ。
大館の十二所、三哲神社に祀られている名医だよ。
貧しい者を見捨てず、山を歩いて往診し、
死後は村人たちが神として祀った」
涼香は息を呑んだ。
「そんな人が……本当に?」
「本当にいた。
生活と医療を一つにして、
弱者を救い続けた医師だ。
私はその精神を継ぎたいと思っている」
柳は涼香の検査結果を見つめながら続けた。
「腸内環境が乱れれば、心が乱れ、免疫が狂う。
生活を整えれば、心が整い、免疫が味方になる。
赤ひげ先生が言った“生活の医学”は、
令和になってようやく科学が追いついたんだ」
涼香は胸に手を当てた。
「……私も、治りますか」
柳は即答した。
「治す。
赤ひげの精神で、君を救う」
◆柳 貞明、三哲神社に立つ
大館・十二所。
山あいの静かな集落に、三哲神社はひっそりと佇んでいた。
柳 貞明は、杉木立の参道をゆっくりと歩いた。
風が抜け、葉の音がさわさわと響く。
「……赤ひげ先生。
あなたが守った“生活の医学”、令和でも必要とされています」
社殿の前で手を合わせると、
どこか懐かしい気配が胸に落ちた。
「涼香さんを救うために、
あなたの精神を借りに来ました」
柳は静かに頭を下げた。
その背後で、
川反の化け物がいつの間にか立っていたが、
柳は気付かなかった。
地元の偉人なので、取りあげてみました。
この十二所は戊辰戦争で、南部藩と佐竹藩の戦闘が行われた場所でもあります。
とても雰囲気のある集落ですので、機会が有ったらお立ち寄りください。




