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20/37

ずかん はたらく微生物

本作はフィクションですが、難病や医療制度についての描写には


できる限り現実の知見を参考にしています。


ただし、医学的な正確さよりも「登場人物の心」を優先しています。


気軽に読み進めていただければ嬉しいです。

その年、五菱商事は奇妙な社会現象を調査していた。

背後関係や隠された意図を探ったが――結論は「単なる偶然」。

しかし、その偶然はあまりにも大きかった。


それは、

『ずかん はたらく微生物』のアニメ化と、その爆発的ヒット

である。


技術評論社から出版されていた図鑑は、

微生物の働き、発酵、腸内環境、健康との関係を解説した“知る人ぞ知る”本だった。

だがアニメ化によって、

国内女性の生物学への興味が 3割以上増加 したとされるほど、

人口膾炙に知れ渡った。


そして――

このアニメのヒットと、

涼香の自己免疫疾患の治療研究が、

奇妙な“親和性”を持ってしまった。


腸内環境の改善が免疫の暴走を抑えるというニュースは、

アニメのテーマと完全に一致していた。

そのため、

涼香の治療研究とアニメが互いに話題を再生産するスパイラル現象

が起きた。


精神と免疫、ストレス過多の現代社会――

これらが生物学的見地で見直されるようになり、

社会科学や経済学の“統計頼みの理論”は発言力を落とした。


文科省内では、

「予算を投入するのは電子デバイス・AI・生物学」

とまで言われるようになった。


余談だが、

アニメの挿入歌 『醸す歌』 もヒットした。

勘の良いメディアは杜守神社に押しかけ、

五菱電気+安倍財閥のAI開発との関係を探り、

なぜか南部・宇部・麻生の名家まで取材対象にされるという、

カオスな騒ぎとなった。


渦中の涼香と俊は、

感想を問われる動画が拡散され、

二つの話題は互いにバズを呼び、

社会現象となった。


この頃には、

二人は婚約期間を経て すでに入籍を済ませていた。


というか――

そうしなければ世間が許さない雰囲気

になっていた。


勝手に涼香の庇護者を名乗る者。

逆に俊の“世捨て人的な風貌”に憧れ、押しかけ女房を宣言する者。

SNSはカオスそのものだった。


周囲の大人たちも放っておけず、

あれよあれよという間に舞台は整えられ、

芸能人の挙式と遜色ない披露宴が

帝国ホテル東京

で行われることになった。


なぜか安倍・麻生・南部・宇部など名家の後援もあり、

政財界の主役が一堂に会する規模となった。


◆帝国ホテルの光の間

帝国ホテルの光の間。

政財界の重鎮が静かに席を埋め、

報道陣が遠巻きにカメラを構える。


涼香は白無垢に近い純白のドレス。

俊は杜氏一族の紋をあしらった礼服。


佐伯翁が杯を掲げる。


「俊。涼香。

お前たちの縁と闘いは、もう国民的な注目ごとだ。

今日ここに集まった者たちは、

その未来を祝福しに来たのだ」


涼香は俊の手を握り、

小さく囁いた。


「ありがとう。

あなたが見せてくれた未来を、

私も一緒に歩きたい」


帝国ホテルのシャンデリアが、

二人の未来を照らしていた。

涼香の幸せのピークでは有りますが、それで終わらせるわけには参りません。

もっと彼女にはいのちと愛の素晴らしさを、噛み締めていただかなくてはなりません。

筆者自身、何十年と原因の分からない謎の身体の痛みに悩んできました。

妻も治らない宿業を抱えて、毎日ふたりで闘ってきた気がします。楽しく幸せでは居りますが…

なので、この二人には何としてでも、幸せになって病から解放されてほしいです。

筆者が抱く思いとしては、的外れでしょう。でも、ここまで筆を進めて、二人の成婚という中間地点に至り、どうしても、この思いは溢れ出てしまいます。

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