言語が導く国のかたち
本作はフィクションですが、難病や医療制度についての描写には
できる限り現実の知見を参考にしています。
ただし、医学的な正確さよりも「登場人物の心」を優先しています。
気軽に読み進めていただければ嬉しいです。
草薙みどり新総裁は、
就任演説でこう述べた。
「日本語は、ただの言語ではありません。
思考の器であり、和を育む道具です。
この国の未来を形づくる力そのものです」
女性総裁の柔らかい声は、
国会の静寂に深く響いた。
その頃、世界の日本語学習者の間では、
奇妙な一致が生まれていた。
「日本語を学んだ当初、
なぜ日本人はこんな周りくどい言い方を好むのか理解できませんでした」
ある学習者はそう語り、続けた。
「ところが学習が進むにつれて、
脳内で思考する際も、日本語で道理を組み立てている自分に気付いたのです。
そして、その習慣は私にはストレスの原因を減らす効果があることにも気付きました」
別の学習者はこう言った。
「日本語で思考することは、
常に誰かへの思いやりや『和』を考えてしまうことになります。
そして、誰かに優しくしてあげたいと願う自分を見つけることになるのです」
この言葉は、
草薙総裁の政策理念と奇妙に重なっていた。
◆行政の動きは、言語の思想と呼応する
行き過ぎた個人批判への情報開示。
難病への社会認知を高める法制化。
厚労省と文科省に配置された“エース”。
五菱+安倍のAIデータセンターの報道。
これらはすべて、
「日本語的な思考=和を守る」という理念と
静かに呼応していた。
日本語学習者が語った
“日本語で思考すると、他者への思いやりが生まれる”
という感覚は、
国家の政策として形を持ち始めていた。
◆AIと本草学の融合は、言語の思想を拡張する
量子コンピュータによる新薬開発が
“未来の王道”として報じられる一方で、
五菱+安倍のAIデータセンターは、
世界中のPCを巻き込むかのような
“集合知のネットワーク”を形成していた。
新しいアイディア、
誰かの失敗、
誰かの応援――
それらが瞬く間に共有され、
日本の本草学への導きが始まり、
日本語という言語への興味も深まっていった。
まるで、
日本語そのものが、世界の研究者の思考を変え始めているかのようだった。
◆川反の男は、その流れを見抜いていた
秋田の川反で冷酒を飲む男は、
静かに笑った。
「言語が変われば、思考が変わる。
思考が変われば、国家が変わる。
国家が変われば、盤面が変わる」
そして、
チェス盤のビショップを指で弾いた。
「ルークは動いた。
次はビショップだ。
斜めに盤面を貫く一手で……チェックメイトが近い」
その声は、
秋田の夜風に溶けていった。
次はビショップの一手が決まるのでしょうか?それとも、杜氏俊のAIデータセンターでの奮闘が語られるのでしょうか?涼香の訓練もどうなっているのでしょうか?気になることばかりですが、キャラクターが自由に動き出すことが多いので、どうなあるものやら…




