リークがルーク
本作はフィクションですが、難病や医療制度についての描写には
できる限り現実の知見を参考にしています。
ただし、医学的な正確さよりも「登場人物の心」を優先しています。
気軽に読み進めていただければ嬉しいです。
涼香の体験入隊が全国的な話題となってから数日後。
突如として、彼女の持病――
難治性で命にかかわる自己免疫疾患
という情報が漏洩した。
最初は匿名掲示板。
次にSNS。
そして、まとめサイト。
拡散は一瞬だった。
「そんな重い病気だったのか……」
「応援したい」
「強くなりたいって言葉、泣ける」
同情の声が集まる一方で、
冷たい意見も同じ勢いで噴出した。
「防衛省とのやらせだろ」
「財閥の娘なら金で治療できるだろ」
「罹患者の少ない難病に税金使うな」
「貧困家庭への補助金を増やせ」
「美少女を使ったプロパガンダか?」
まるで、
これ以上彼女を“悲劇のヒロイン”にさせてはいけない
という統一された意志が働いているかのような、
奇妙なネガティブキャンペーンだった。
杜氏俊は、
スマホの画面を見つめながら、
胸の奥が冷たくなるのを感じていた。
(……誰が、こんな情報を……)
しかし、秋田の川反では――
冷酒を片手にした男が、
静かに笑っていた。
「リークがルーク、か」
男は、
チェス盤の駒を指で弾くような仕草をした。
「次はビショップが動いて……チェックメイトだ」
その声は、
秋田の夜風に溶けていった。
今回はちょっと短めになります。いきなりチェスの話題が入りましたが、これは将来への布石です。伏線というものですか?それにしても人のすることに何でも反対、美談へも眉につばな人達の思考はどうなっているのでしょうね。人の不幸だけを望んでいるのでしょうか?




