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51.

 私が小学生三年生のとき、お父さんは買い物に出かけていった。

 たしかその時は、おばあちゃんの家で遊んで待ってたけど、急に険しい顔したお母さんが帰ってきて、おばあちゃんに何か必死に話してた。小さい私には何を言ってたのか分からなかったけど、言葉の端に「お父さんがっ」っていうのが聞こえたのは覚えてる。

 それからすぐに、お父さんが誰かを車で轢いちゃったっていうのを知った。お母さんは何も言わなかったけど、お父さんはしばらく家に帰ってこなくて、お母さんは随分疲れてそうだった。

 小学校は、私は田舎のとこだったから、噂が回るのも早くて、お父さんが人を轢いたのがみんなに伝わっていじめられた。小学生は残酷だね。悪いと思ったら、親が言ってたからってそれだけでいじめる理由になる。

 卒業するまでいじめはなんだかんだで続いてて、中学校は知らない人たちばっかりのところにした。だから全くの別人として、生きようと思って、とにかく誰にでも優しくした。優しいだけじゃだめだから、面白い話ができるようにクラスで人気の子を真似してみたり。そうしたら皆私に良くしてくれるようになって。

 ああ、でも、あの本を座右の銘にしてるのは本心だよ。私が優しいのは外面だけだから、中身は優しくないから、優しくなれるようにって。それに、図書館で光虹ちゃんに話しかけたのも偶然。その後に名前を知って、お父さんが轢いた人たちの子どもなのかもって気付いた。

 説得力はないかもしれないけど、光虹ちゃんと友だちになりたかったのは本当。自分と同じ好きなもの持ってる人は珍しかったから。光虹ちゃんは優しかったし。私と違って中身まで。だから、お父さんのことバレたくなくて、必死に繋ぎ止めようとしてた。

 それで、亜美たちのこと知って、光虹ちゃんのこと守ったら、許してくれるかもって思ったの。私が光虹ちゃんをいじめから助け出して、いじめてくる亜美たちをやっつけたら、光虹ちゃんは私のことをもっと好きになってくれると思って。そうしたら、私の中にあるお父さんが人を殺したっていう罪悪感も消えるかもしれないって。


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