46.
「光虹ちゃん、おはよう」
「おはよう」
今日もまた、香織と待ち合わせた場所で朝の挨拶を二人で交わした。
ただ今日は空が曇っているのが少しだけ惜しい。
藍鼠色の雲がひび割れた隙間から花浅葱色の空が覗いている。一面が雲で覆われているせいで、果たしてこの雲たちが本当に動いているのか分からない。
「光虹ちゃん、最近どう?」
香織はいつもと違い、髪をワンカールに統一した髪を大きく揺らして私に聞いた。風が香織の髪の隙間を通って髪をふわふわといじる。
「最近」と大きな言葉を使った香織だが、なんとなく雰囲気から具体的に何を聞かれているのか分かった。
「亜美たちはまだ学校に来てない。そのおかげで、毎日すごく楽しいよ。クラスの子たちともちょっとずつ話すようになったし。」
香織は、嬉しそうに顔を綻ばせた。頬のピンク色が深まるように、香織は口角をくっと上げる。
すぐに私は自分の足元の延長線上を見つめるが、髪はさっきより揺れてるように見える。空の雲の影が香織の髪にまで落ちて、模様のように香織の髪の一部の明度を下げた。
「香織と、葵のおかげだよ。ありがとう。」
そう言うと、香織は少しだけ動きを止め、息を漏らしながら照れたように笑った。ふわふわと揺れる髪で隠れて見えない表情はきっとあの可愛らしい笑みが浮かんでいるんだろう。
また、香織の色は黒じゃなくてあの桃色を薄めた白みたいな色に戻り始めていた。




