41.
朝アラームでおきた瞬間、頭の中に”最悪”と”絶望”の二文字が浮かんだ。
私は掠れて漏れ出る息を吐き出しながらけたたましく鳴るアラームを止めた。こころなしか頭が痛い気がする。
天井が嫌に近く感じて、私は寝返りを打った。薄い布団が肩を擦った。頰を冷たい髪が擦る。喉の奥がぐると低く鳴る。
一分。アラームの数字が一つ増えた。私はまたくるりと寝返りを打った。
二分、三分と時間が進んでいく。私は何度も布団と触れながら顔を埋めた。だけど、それでも目は嫌なほど覚めていて、私は仕方なく布団から出ることにした。
カーテンを開けると燦々と陽光が差し、私はもう一度カーテンを閉めた。顔に当てられた熱い日差しはすぐに冷めて、私はしゃがみ込んだ。傷ついた床の目が私を覗き込んだ。私はそれを隠すように手で覆う。頬が落ちてしまうんじゃないかと思うほど表情筋が沈み込んでいく。カーテンの隙間から漏れる光も今は鬱陶しい。顔へ垂れてくる髪は歯痒くて私は勢いよく上を見上げた。同時に後ろへ倒れこむ。 床に耳をピタリと当ててみると、下の階から小さな物音が聞こえてきて、今日はミサキさんが朝から仕事だったことを思い出す。多分、今家を出ていった頃だろう。
私は立ち上がり、下へと降りていく。
なんとなく足の下を支える階段がいつもよりもくすんで見えた。ギシギシときしむ階段を踏みつけるたびに、頭の片隅に香織と葵のあのときの顔が浮かぶ。驚いたような顔。信じられないとでも言うような顔。いつもと、違った私をみるような顔。
パキッと小さな結晶が割れるみたいに頭が響いた。私は自分の頭を平手で叩く。しかし大した力を込めることもできず、少しだけ視界が揺れただけだった。
リビングについたものの、朝ごはんを食べる気になんて到底なれなくて、私はソファに沈み込んだ。なんの準備もしていないが、いつも朝ごはんを食べる時間くらいは暇になる。
私は両手を外へと投げ出し、手のひらを合わせた。
香織と葵はあのとき何を思ったんだろうか。仲良くしていた人がいじめられていただなんて。クラス全員から嫌われて、いじめられるような人だったなんて。哀れんだろうか?あのときの彼らの目はいつもの私を見つめる目じゃなかった。
胸の奥で何かがひび割れる音がする。
知られたくなかった。
間延びしたあくびが襲い、目からは涙が一滴落ちていった。
どうやって、二人と目を合わせればいいのだろう。どうやって、口を開けばいいのだろう。
また、あの目で見られたら。そう思うと自然に肌が粟立った。




