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28.
冷たいドアを開けると、柔らかな光と一緒に、美咲さんの柔和な顔があった。
奥にある窓から差し込む西日が、美咲さんの輪郭線を黄色の混ざった白い光に変えた。
髪を綺麗にまとめた美咲さんの赤茶色の髪は、日差しによって数本の髪が透き通って透明に見える。ドアを開けた先にいるなんて予想していなくて、少しばかり驚く。でもすぐに美咲さんの表情が胸を落ち着かせてくれた。
「おかえりなさい」
しっとりと、じんわり滲む声だった。
鼓膜にすっと通るその声は、いつもよりも小さくて、そして優しかった。
「た、ただいま」
寸刻の間、つい黙ってしまったが、はっと我に返って返事をする。
「お疲れ様、頑張ったね。」
ふっと色づくみたいに目を細めて笑う美咲さんが、首をほんの少しだけ傾けてそうねぎらった。
美咲さんの髪がふわりと揺れて、そこから光の綿がふわふわと浮かぶようだった。
「…うん。」
「ありがとう」というのはなんだか恥ずかしくて、わたしはたった二文字そう言った。
美咲さんはそれを眉尻を下げて愛でるように見た。
そして、程よく筋肉のついた細腕を腰に当て、私に向かって言った。
「ご褒美ってわけではないけど、たまには外食しない?」




