112 竜人
膨大な量の素材から膨大な量の元素を抽出し、膨大な量のミネラル添加剤をゴミ袋のようなビニール袋に入れて【倉庫】に詰めていく。
それと共に差し回しの壺にも流し込み、フルタイムでの魔法の粉製造は行われていた。
精神疲労は確かにあるが、これも修練とばかりにひたすら作る。
これはあいつに渡して交易品にさせようと、ひたすらひたすら造る事になる。
それでもさすがに1年もやると飽きてくる訳で、90リットルのビニール袋に入ったミネラル添加剤を袋の在庫限界まで作った後、差し回しの壺にも満載にして、そろそろ国に戻ると商会の主に相談する。
「最初は水の恵みからの縁じゃったが、このような大商いにしてくれて感謝しておりまするぞ」
そう言って帳簿から計算を始め、初期の頃からの収益から純利を算出し、かねてより取り決めの山分け、つまり半分を受け取る事になるのだが、商品で受け取る事になっていて、倉の中にたんまりと溜め込んである品が次々と運ばれてくる。
「確かに大量に集めるのは少々苦労しましたが、このような品で良かったのかの」
それはやたらに歪んでいたり欠けていたりして、まともに使い物にならない魔石が大量に入った目の細かい布の袋。
確かに商品にはならずとも、魔石は魔石と言う事で、火付けの魔具にいくつか入れてみたりも一応は可能な品。
それでも全世界の商会の不良在庫になっていた品の買取申し込み、しかも魔法の粉との交換取引と言う事もあり、殆ど全ての商会がそれを快諾し、わざわざ運んで持って来る有様になっていたとか。
なんせ別口での魔法の粉の販売ルートなので、順番待ちを飛ばせる事にもなる。
確かに金で払うほうは順番待ちになってはいるが、半端魔石はこれからだ。
だから持参すればすぐさま手に入ると、あちこちの商会はそれにすぐさま飛び付いたのである。
後はオーク素材である。
オークの素材のうち、まともには利用方法も無く、それもまた倉庫の肥やしになっていたような品であり、またしても新たな販売ルートと言う事で、あちこちの探索者ギルドや冒険者ギルド、各国によって違う名だが同じ職種のギルド関係者からの申し込みが相次ぎ、その袋も次々と運ばれてくる。
そう、カルシウムとマグネシウムの確保である。
他にも微小成分の採れる素材も低価格で得られるものばかりなのでそれらも頼んでおり、事ここに至って商会の主は魔法の粉の成分をおぼろげに知る。
(成程の。それらから作られるのじゃな。されど、勝手に作る訳にもいくまいの。冷水の魔技様は商会の恩人じゃからの)
青いままのオーラに気を良くし、作れると思うなら作っても構わないと許可を出す。
商会の主は大層感謝をするが、そこらの小狡い商人ならば、作るなと言っても勝手に作る奴ら。
それぐらいなら控えようと思うその心が気に入った訳で、作れるならば作ってみると良いと許可を出した訳だ。
確かに難題であろうが、使用する素材が分かっているのなら、他の者達よりは開発が進むであろうし、将来的にはそれを可能とするかも知れない。
オレが素材を渡して技術指導した者達が先に売り始める事になるだろうが、後に続けば良いだけだ。
どのみちそれは消耗品なので、人気商品になれば永久に売れる品。
頑張ってみるといい。
そうして魔族領に戻ったオレを待っていたのは、ひまごぉぉぉぉぉ。
はぁぁ、なんか腰が、年かな。
いかんいかん、そういうのは今は忘れていないと。
あちらで作った魔導ハウスの建築を依頼し、材料を渡すと共に技術指導を経て、冷温乾燥の魔導具の提供と素材各種からの抽出機器の提供に、それぞれの技術指導の後の建設と、持ち帰った研究結果を提供し、魔皇女のベッドに横たわる。
いや、ここのベッド、柔らかくて心地良くてさ、よく利用しているんだけど、たまに抱き枕の恩恵があってさ、ああ、ふわふわする。
(またたくさん開発してくれたのね……眠っていると可愛い顔よね、くすくす……滅多には来れないみたいだけど、来た時にはこうして……うん、やっぱりアタシの旦那様だわ……貴方もそう思ってくれると良いんだけど。どうなのかな、マイハニー、くすくす)
(睦まじいの。交代劇の時はどうなるかと思うたが、こうなったのも何かの縁じゃろう。共に我が子じゃし、このまま夫婦で構わぬの。されどそれを表に出すのは嫌がろうし、なれば内々にて定めておけば良かろうの)
(あら、手を当てるとまた……うん、久しぶりだし、11人目、作ってみても良いわね、くすくす)
こうしてオートにうっかりしていたせいもあり、婚外子がまた大量に増えたのも知る事も無く、なので精神疲労もなかなか癒えず、起きたのは通信であったのは幸か不幸かの分類で言えば……
オレ、この世界に何しに来たんだろ。
アイテム作りと魔具作りと魔導具作りしかやってないような。
ああ、狩りとか殆どやってないぞ。
あれから3年も寝ちまって合宿も終わりかよ。
ああ、貴重な5年間がぁぁ……参ったな。
ミツヤは迷宮踏破2桁になり、それを全てそこらの金持ち雑魚に高く売り、それで色々な土産を買ったらしいが、オレが買ったのなんて素材関係ぐらいしか無いぞ。
確かに大量生産や寝ている間にまたぞろ【注入】をさせられたせいでの精神修養にはなったようだけど、それだけと言うのも何だな。
向こう、どうすっかな。
全員にフタなら放置も良いが、熟練俯瞰の暫定管理には既にバレているしな、バックレるとたちまちにして企みを露見させられる事になるだろう。
そういうのはちょっと困るから、やはり帰らねばなるまいな。
帰るにあたってついでとばかりに月の友の塊を全て出し、万年単位での保険にするも良し、交易品にするも良し、好きに使えと渡しておいた。
「もう当分来れない事になるだろう」
「物凄くたくさんありがとう。これはお礼」
ううむ、こういうのも久しぶりと言うか、ふざけてミツヤとした事はあるが、長時間ってのもなかなかにふわふわしていいな。
ああ、甘いんだな、この液体は。
ふわふわして甘くてこれは良いな。
「ぷはぁ、くすくす、ご感想は? 」
「甘くて美味しかった」
「くすくす、うん、美味しかった」
(やっぱり同じ感性なのね。魔族ってこうなのかしら。だからこそ皆は純朴なままでいられるのね。妊娠すらもあんな方法ですもの。でも、こうなれて良かったと思ってるわ。それは寿命の事もあるけど、ああいうのはもう無くても良いと思ってたし。だからこれからもこのままで暮らしていくけど、またきっと……長くなってもずっと待っているから、いつかまた来てくださいね、旦那様、くすくす)
ううむ、640億の月の友って一体どれぐらい保つんだろう。
交易品にしてジャンジャン売りまくれぇぇ。
てな訳で、あんまり意味が無かったようだけど、最後にご褒美のあったオレの異世界合宿は終わる事になった。
「最後にちょうだい」
「何人目だ」
「実はキリ良く30人目」
「うがっ」
「くすくす、こんなに子作りが楽なんて良いわ、この種族最高ね」
「幸せか」
「うん、とっても」
「そうか、なら、また来る」
「待ってるから、ずっと待ってるから」
「何時か必ずな……【注入】」
「ああ、少し、強いような」
「1万だ」
「次の、魔皇子、に、なれるかな」
「次の次ぐらいじゃないのか」
「くすくす、そうかも」
☆
『おお、久しいの、親父殿』
『いや、もうじき帰るんだけどな』
『さては忘れておったの』
『ハウスの事は聞いたか』
『スルーかの』
『そんな言い回しも習ったのか、困った長老だ』
『流し込みはやっておるが、暇なのは確かじゃ。何か方策は無いかの』
『お前、竜と魔族との間に子は作れないと思うか? 』
『なんじゃ、と』
『作り方は竜と同じだぞ』
『なんと、そのような事になっておったとは』
『オレの予想ではドラゴニュート、竜人になりそうなんだ。どうだ、魔族の守護竜よ。その配下、作りたくはないか』
『これは善き事を教わったの。我が配下か、うむっ、うむっ』
『ただし、躾はきちんとしろよ。魔族を苛めるような子はオシオキだぞ』
『分かっておるとも。あのような純朴な輩、人族とは比べ物にならぬわい。谷の者達は実に損をしておると思うておるところじゃ』
『次は長くなるが、何か土産を持ってこよう』
『なればそれを楽しみに待っておりまするぞ、親父殿』
『幾久しく守護を頼むぞ、我が子よ』
『承った』
☆
《てな訳で設定よろしく……ううむ、そう来るとはな……どのみち、超越者が勝手にやった事。バカンスが長くなるのはそのせいであり、管理関係には予想外の出来事。存在に矛盾が生じるので止む無く設定はしたものの、本意ではない……名目の天才だな……そのうち魔族と竜人とのハーフも増えるだろうし、混血が進めばそのうち全ての魔族がハーフやらクォーターになるだろう。そして世界から魔族が消えて大義名分が失われようとも、それすら超越者の仕業だから管理関連には責は無い。平和な世界になって修練世界じゃ無くなるかも知れんが、そうなっても別に世界がどうこうなる訳じゃない。ならその平和な世界を維持する為にも、人を超越した存在は必須となる。魔族の守護神はそのうち世界の調停者の位置取りとして、人族のやり過ぎた行いを質す存在になる。なんてな……ふうっ、お前、そういう才能もあるんだな。全く、とんでもない奴だ……それでよろしく……まあ、オレに責も無さそうだし、止むを得ない事態か、ああ、それでいいさ……次のシナリオは超越者の仕業さ、クククッ……確かにシナリオだな。ただし、相当に自由なシナリオだ……クリエイトは好きにすれば良いさ……ああ、そうしよう……じゃ、またな……うむ、また来るといい》
(どんどん成長していますね。あの彼を計略に掛けるのにも驚きましたが、新たなシナリオの構築までこなすとは……それはそうと、新たな修練世界の策定をしませんと、くすくす)
「やっぱり戻るのかよ」
「まあ、一応な」
「ならまた来るんだな」
「心残りか」
「まあ、他の世界も気になるけどよ」
「故郷と定めたなら、あんまりは来ないほうがいい。飽きたら終わりだからな」
「あ、それがあったぜ」
「まあ、先々までの道しるべは頼んでおいた。だから下手すると万年先までそれでいけるかも知れん」
「となると、100年でも可能って事か」
「近々、速度を緩めるらしいからな、もっと先でも構わんかもな」
「なら、また来たくなった頃だな」
「ああ、懐かしくなった頃にまた来ようぜ」
「うしっ、そう言う事なら一度戻ろうぜ」
「行くぞ」
「うっしゃー」
【転移】




