109 合宿
20日は2000日、つまり5年とチョイは遊べると、ミツヤと共に宿題持参で夏季合宿を異世界で勝手にやろうと思い付く。
部屋の人員への調整を終わらせ、晴れて2人は異世界へ。
「何かもう移住したい気分だぜ」
「じゃあそのまま忘れていようか。そうすりゃ行方不明で、クククッ」
「そうだな。区切りが付かなければそれでもいいや」
「決まりだな」
とりあえず念の為にと持ってきた宿題をやろうと、それなりの宿を借りる。
いよいよ合宿の始まりは良いけど、宿題が終わったら別行動になるだろうから、合宿と言っても数日で終わりだなこりゃ。
ミツヤは迷宮が気に入ったようで、世界各地の迷宮巡りがやりたいらしい。
オレは魔族領の様子を見に行ったり、魔具作りやそれに伴う魔法の開発とかがやりたいので、同行はきつい。
そんなこんなで宿題は数日で終わり、いよいよそれぞれにやりたい事の為に動き出す。
ミツヤはこの近くの迷宮から始めたいと言うので、直接迷宮近くに飛ばしてやる事にした。
「頑張れよ」
「うっしゃー」
【転送】
さて、魔族領の様子を見る為に、またしてもかつての姿で移動する。
一緒に行動しても良いんだけど、そういうのは平和な世界がいい。
こういう世界はやりたい事がお互い違うから、片方の都合に合わせる事になっちまうからだ。
さて、荷物を送ってから70日となると、ざっと20年が近いのか。
【探査】で見てみると、月の友のでかいのが無い。
おっかしいな、やっぱり交易品にしているのかな。
「久しぶり」
「マイハニー」
「やれやれ、どうしてそうなった」
「じじ」
「うげっ」
「くすくす」
「交易品にしているのか? 」
「それがね、どうにも素材が集まらなくて」
「何を使っている」
「羽毛なんだけどさ、どうにも水鳥の乱獲をしているようでね、絶滅の危機みたいなのよ」
「やれやれ、人間は簡単に滅ぼそうとするな」
「そうよね、あっちの世界でも何種類も滅ぼして来たんだし」
「滅ぼしてやりたくなるな」
「まあねぇ、交易相手じゃなかったら、それもアリかも知れないけど」
「売れているのか、酒とか」
「水がかなり売れているのよ」
「あれ、保存は? 」
「氷にしてね、後は溶けないように運ぶらしいの」
「成程な、それなら長持ちするか」
「でもね、氷魔法が無いから苦労しているみたいね」
「どうやって氷にしているんだ」
「冬にね、北方の山に作った氷室まで輸送してね、夏場は溶けないようにしてまた輸送しているわ」
「まるで江戸時代だな」
「くすくす、確かにそうだわね」
「ううむ、氷製造魔導具でも開発してみるかな」
「それきっと莫大な人気を誇るわよ」
「水を売る時にな、氷にして売るとかさ」
「独占は拙いかも」
「なら、あっちでまた騒がしてくるさ」
「そうね、人間と思わせたほうが良いかもね」
「よし、なら」
「また少し良いかしら」
「まさか、また人口数倍化計画か」
「以前のでかなり増えたのよね」
「まあ、数日ならな」
つい、安易な答えを返した事を、オレは後々まで悔やむ事になる。
数日と期限を区切った事で、それはもうひたすらになり、またしても寝たきりオートで発動させる羽目になり、婚外子がまたまた増える事になる。
以前作った食料がぶ飲み状態となり、寝るか飲むかしかやれなくなり、しかも期間は自動で延長になっており、それに気付いた頃には派手に超過していたのである。
「酷いよ」
「くすくす、ありがとうね」
「交易品にするなら追加で出すぞ」
「え、まだあったりするんだ」
「そっちもボックス持ちだろ、だからガンガン渡すぞ」
「なら、お願いね」
うっかりしてたけど、転生だからボックスがあるのを忘れてた。
だからでかいはずのあの塊が無かったんだな。
なので月の友をもう1塊出しておく。
「まだあるだろうが、先に入れとけ」
「男なのに何でこんなに持ってるのよ」
「いや、売れると思ってな。高性能だし」
「確かにそうだけど」
「ゴムは売れると思うか? 」
「人間ならね」
「水筒の代わりになると聞いたが」
「それはマンガの読みすぎね。実際に使ったらきっとゴム臭いわよ。折角の美味しい水が台無しね」
どうやら浅い知識は役に立たないようだ。
特殊系の知識は興味も無いのでついつい浅くなるが、あれもそのクチだったらしい。
「ねぇ、他に日本の食べ物は無いかしら」
「こっちで作れない物か、何があったかな」
「お菓子とかない? 」
試しにと生八橋の箱を1つ出してみると、瞬間的に消えた。
「早」
「くすくす、つい、手が伸びちゃった。懐かしいわ」
「なら、もう少し分けてやる」
「やった」
追加で99箱出してやると、かなり喜んでボックスに入れる魔皇女。
ついでとばかりに菓子パンの箱も1枠出そうと次々出していくと、無言でひたすら入れていく。
どうやらこっちのパンは固いのが常識みたいで、こういう柔らかいパンが懐かしいらしい。
しかも中に色々入っているから余計らしい。
「黒アン、白アン、イチゴジャム、バナナクリーム、メロンクリーム、カスタード、焼きそばパン、揚げパン、カレーパン、蒸しパンの10種な」
「うわぁぁ、懐かしいのが色々ね」
「10種10個ずつ入りの箱だ、あれは」
「物凄い量だった。大事に食べるね」
「後、串肉はどうかな」
「お味は? 」
「魔物の肉だ」
「それはちょっと……あんまり美味しくないのよね」
「他の異世界の魔物の肉でな、それはそれは美味いぞ」
「興味あるかも」
1本出して食わせてみると、たくさん欲しいと言われる。
この世界の魔物肉とは比べ物にならないらしい。
串肉を出したらそこらの子が寄ってきて、串から抜いて1個ずつ食べ始める。
なので次から次に出す羽目になり、ボックスに入れる分と共に大量に放出する事となる。
「この入れ物いいわね。確かウルシよね」
「ちょっと価格を間違えてな、上等な容器になっちまったんだ」
「これは良いわ。空いたら洗って何度でも使えそうだし」
「米びつになりそうか? 」
「そうね、それも良いかも」
100本入り10段セットの串箱を1000出したところで終わりにする。
「後々の楽しみが出来たわ、ありがと、マイハニー」
「それで良いならもういいや」
「くすくす」
この際だから、婿入りの里帰りって名目にしておくか。
別に式とか挙げなくても、何となくそういう感じになってるし。
実際、気分の良いやつだし、特に問題も無さそうだしな。
さて、次は。
「済まんが、ワシのわがままと思うて……」
はぅぅぅ、またかよ。
魔具屋をやろうと王宮から出ようとしたところでバッタリ出会い、またぞろ追加で供給する羽目になり、出発が1ヶ月遅れた事をここに記しておく。
そんな訳で追加のお願いも何とかクリアした後、またしても魔技崩れとして巷を騒がせる事になる。
やれやれ、参ったなぁ。




