9.メルに触れていると【4】
ん?ヴォルの身体がいつもより熱いですね。肩に触れている額の近くを触ります。ん~、熱いですね。
「ヴォル、横になって下さい。熱がありますよ。」
私はポンポンとヴォルの肩を叩き、横たわるように促します。意外にもすんなり横になってくれたヴォルは、自らの不調に気付いてはいないようです。
「熱…。」
「はい、かなり熱いです。私、下から氷をもらってきます。…って、放してください。」
いつまでも私を腕の中に捕らえているヴォルに、思い切り抗議の意味で腕をポンポンと叩きます。
「嫌だ。」
嫌だ?な…何、可愛く子供みたいな事を言っているのですかっ!
「駄目です、熱が続くと良くないですっ。ヴォルっ?!」
必死に抗議していると、仕方ないと思ったのか少しだけ力を緩めてくれました。その隙を見逃さないように、ヴォルの胸に手をついて身体を起こします。…この体勢も何となくどうかと思いますが。
「氷をもらってくるだけですから。少しだけ、良いですね?」
有無を言わさないように真っ直ぐ目を見て告げました。本当は体温をキチンと計って、熱冷ましとか必要だと思うのですけど。前にも言いましたが、私は薬草の知識が皆無です。自慢にもならないですが、役に立ちません。
「寝れば治る。」
「駄目ですよ。熱冷ましの薬草とかもあれば良いのですけど…。」
「薬草…、あるな。」
あ、あるのですか?って、動く気ないですね。横になったままのヴォルに訴えるように視線を向けましたが、フイッと逸らされました。…何か、ムッとしますね。分かってやっているのですよね?
「ヴォル?」
未だにヴォルの身体の上に乗ったままの私ですが、そこを今は気にしている場合でないです。詰め寄る隙のない程接近している私。ヴォルに真っ直ぐ視線を向け、追求します。
「…袋の中。」
何故、拗ねているように見えるのでしょうか。いつものヴォルと違う、気だるそうな表情です。でも今はそれも横に置いておきましょう。私は腕の力を緩めてくれたヴォルの上から降り、薬草袋の中を覗き込みます。…って言うか、見て分かる訳がないですよ。
「ヴォル、どれだか教えてください。」
「…それ。」
幾つか手にとって、漸く教えてもらいました。私、もしかしたら薬草の知識を身に付けたほうがよいかもしれません。で…、これ。どうしましょう。薬草を持ったまま、固まる私です。
「すみません…この薬草、どうやって薬にするのですか?」
「擂り潰す。」
基本的に薬草は、擂り潰して使用します。中の成分に効果があるようなのです。って、そんな事は分かっていますよっ。道具がないから言っているのですっ。…あ、ここは町でした。買いに行くことも、もしかしたら借りる事も出来るのではないですか。




