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「結婚しよう。」  作者: まひる
第二章
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9.メルに触れていると【5】

 そう思って立ち上がろうとすると、何故かヴォルに腕を強く掴まれました。


「行くな。」


 はい?不思議に思って見下ろしたヴォルに…熱で潤んだ瞳を向けられ、ずっと見ているとこちらがおかしくなりそうです。


「す、擂り鉢を借りに行こうと思っただけです。すぐ戻って来ますから、大人しく待っていて下さい。」


「駄目だ。」


「駄目ってどうしてですか?」


「危ない。」


「…私、子供ではありません。」


「子供じゃないからだ。」


 もぅ、何を言っているのか分からないですよ。いったい、どうしたいのですか。ムッと思って押し黙っていると、僅かに視線をさ迷わせたヴォルが口を開きました。


「…ここにいろ。」


 熱で掠れた声。凄く身体が辛そうなのに、私は何もしてあげられないです。ヴォルは先程の一言の後、熱い呼気を吐き出して動かなくなりました。でも私は部屋から出ていく事を嫌がられてしまった為、ペタンと椅子に腰を下ろしました。手に持った薬草を見つめ、少しだけかじってみます。


「っ?!」


 お、思わず叫ぶところでした。凄く凄く辛くて苦いです。ほんの少しかじっただけで、もう舌がピリピリします。とてもじゃないですけど、このまま口に入れる事は出来ません。医師の作る薬は、かなりの手が加えられている事が分かりました。お医者様、素晴らしいです。


「ヴォル…。」


 またまた私は何も出来ないのです。手にした薬草を握り締めました。…ん?青い匂いがしたので、気になって掌を広げてみました。あら、掌が所々緑になっていますよ。…………あっ!!そうです、絞り出したらどうでしょう。私は薬草の葉を数枚手に取り、綺麗な布に包んでひたすら揉みました。


 これ、かなり良い方法ではないですか?匂いで味が何となく分かってしまう程ですが、薬草の成分が徐々に滲み出してきていました。コップを用意して、その中に絞り出していきます。


「何…してる。」


 不意に声を掛けられ、コップに薬草を絞っていた手が思い切り震えました。あ、勿体ない。少し溢れてしまいましたよ。


「薬草を絞っています。もう少し待っていて下さい。」


「何をやっているのかと思ったら。」


 え…?後ろから声が聞こえたと同時に手首を掴まれ、唖然としている間にその手を舐められました。いえ…実際には手ではなくて、滴る薬草の成分なのですけど。


「っ~?!」


 次の瞬間、声にならない叫び声をあげて私は思い切り飛び退きました。部屋の壁に張り付き、真っ赤になっているであろう顔を隠す余裕もなくパクパクと口だけが動きます。


「熱冷ましは苦いんだ。」


 けれどもヴォルはそう言いながら、私の先程まで絞っていたコップの中身を一息に仰ぎました。


「…メルの手は甘かったな。」


 それだけ呟き、再び何事もなかったかのようにベッドに横になって動かなくなりました。…眠ってしまったのでしょうか。



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