6.俺はメルを手放せない【2】
ウマウマさんの声が聞こえます。私は重い瞼を何とか開けると、寝不足の為か鈍痛のするこめかみを触りました。
「起きたのか、メル。」
いつものようにヴォルの声が後頭部から聞こえます。
「はい…。おはようございます、ヴォル。」
「眠れなかったようだな。」
ボンヤリと目の前の魔法の火を見ていると、ヴォルが身動きする事なく後ろから告げてきました。あ、やっぱり分かりますよね。抱き枕にされているのですから、起きているかどうかなど確認するまでもないでしょう。
「はい…。」
隠しても仕方がないので、私は素直に答えました。
「もう一日休むか。」
「え?」
あまりの驚きに、思わず口に出してしまいました。
「聞こえなかったのか。もう一日休むと言った。」
淡々と告げるヴォルですが、その真意が分かりません。ヴォルは早くセントラルに戻らなくてはいけないのではないですか?期限が、とか言われていた気がします。
「問題ない。」
そうなのですか。私の表情を見てとったようです。まぁ、ヴォルがそう言われるのでしたら。本当に私、今日は疲れがとれていません。動く気もしないのはどうかと思います。特に何かをする訳ではない私なので、怠け者だと言われても仕方がない程です。
「食事はとれるか。」
「あまり食欲はないのですが…。」
「食べれるなら食べた方が良い。」
そうですよね。頭では分かっているのです。でも…、おかしいですね。私に食欲がないって、普通なら有り得ない事なのですよ。自分で言うのも何ですが、食欲だけはなくなった事がないのです。
「食べさせてやろうか。」
「っ!?」
ま、まさかヴォルからそんな言葉が出るとは思いもよりませんでした。しかも私を後ろから抱き締めたままって、おかしくないですか?
「け、結構ですっ。」
恐らく真っ赤になったであろう私。じょ、冗談にも程がありますっ。そういうの、慣れてないのですからっ。
「そうか。残念だ。」
またしても不穏な発言です。だ、だって…ヴォルと私はそういう関係ではないはずです。
一人狼狽えている私をよそに、ヴォルはいつものように食事の支度を始めました。何となく私も起き上がってみます。先程より心が軽い気がするのは、気のせいでしょうか?もしかして、ヴォルがまたまた気を遣って下さったのでしょうか。
私は何もしていないのに、これでは本当に足手まといです。抱き枕になるだけで、恩返し出来ているとは到底思えないのでした。まぁ、それ以外役に立たないのかも知れませんけど。
気が付くと目の前に食事が並んでいました。どれだけボ~ッとしていたのでしょう。ヴォルは何事もなかったかのように私の隣に腰掛けていました。




