4.無自覚め【2】
「えっと…、放して…頂けませんか?」
変にドキドキしてきます。濡れた身体は寒くはないのですが、互いの体温がありありと伝わってくるのです。どうしましょう…。この状況って、かなり際どくないですか?私の心音がヴォルに伝わってしまわないか、非常に心配ですよ。
「…泳ぐか。」
「えっ?」
一人でドギマギしていた私ですが、ヴォルはあまりいつもと変わらない様子で告げました。ドキドキしているの、私だけなのですね。
「濡れたからな。ついでだ。」
「は…はぁ。」
何でしょう。まぁ、この湖で泳ぐ事に反対はしませんが。私って、やっぱり女としての魅力が足りないのですかね?
ヴォルはさっさと私から身体を離すと、そんな事を考えていた私をよそに湖に飛び込みました。勿論服のままですが、装備品はいつの間にか外してあります。どうせ濡れているのでしょうが、服のまま泳いだら危なくありません?まぁ、着替えなんてないですけど。
「どうした、メル。」
水の中から顔を出したヴォルは、いつまでも来ない私を呼びます。えっと…、この際細かい事は気にしないようにしましょう。
「はい、行きます。」
私もヴォルにならって、そのまま湖に再び身体を沈ませます。あ、勿論飛び込みはしませんでしたよ。
湖はとても深く、すぐに私の足が届かなくなりました。立ち泳ぎは出来るのですが、やはりこうも普通に服を着ていると難しいですね。私は泳ぐのに疲れ、お腹を上にして水面に浮いてみます。あぁ、気持ち良いですね。暫くぼんやりと漂っていました。
「メル。」
「っ?!」
突然耳元でヴォルの声が聞こえました。ビックリです。溺れそうになりましたよ。
「危ないぞ。」
体勢を崩して沈みそうになる私の身体をいとも簡単に抱き留めたヴォル。そうですよね。この辺りでもヴォルの身長なら、しっかりと足がつくのですよ。
「って、ヴォルが急に声を掛けるからじゃないですかっ。」
「そうか。」
ギャアギャア騒ぐ私をそのままに、ヴォルは岸に向かって歩いていました。え?もう終わりですか?
「あまり長く水の中にいては身体を冷やす。」
残念そうな私に気付いたのか、ヴォルが説明をしてくれます。私、またそんなに顔に出てます?何となく悲しくなるのですが、隠すつもりもないので良い事にしますよ。
「乾かすぞ。」
「はい。」
水から上がるとさすがにヒヤッとしました。思ったより身体が冷えていたようで、ヴォルの魔法で温風を受けられて良かったです。本当に便利な魔法です。




