3.守り刀として【3】
ヴォルが出ていった後、私も着替え始めます。そして宿の下で朝食を食べました。この辺りは食物が豊かなのか、野菜が豊富に出てきます。普段のサバイバルなご飯には生の野菜なんてあまり出てきませんから、これはこれで新鮮な気持ちで食事が出来ました。
朝食後部屋に戻った私は、昨夜の記録を見直します。ヴォルに教えてもらい、書き記した旅の記録。あ、ドゥーナガの町で子供に誘拐されたのでした。元々ヴォルに誘拐されてきた私ですから、誘拐の誘拐です。…間抜けですね、私。
窓を開けて空気を入れ換えます。自分の気分も、こうやってすぐに入れ換えられたらどんなに良いでしょう。
「さぁ…自己嫌悪はおしまいです。今は記録を書くという行為に没頭しましょう。」
実際、他にやる事がないのです。私は記録を続けます。見てきて覚えている事柄も記入してみます。平原の風、森の空気。高原や山脈の景色…見ているだけなら、どれも素晴らしいものでした。ただ魔物がいる事を除いて。
「魔物、本当にいたんですものね。」
村にいた頃、話には聞いていました。でも実際に目にして、本当に驚きました。そしてヴォルの強さにも。遠いセントラルという場所からやって来た人。しかも一人で。
普通、冒険者は数人の単位で固まって行動するものです。魔物に対して有効に戦闘を行う為、生存率を高める為。剣や魔法、素早さなどを自らの仲間内で担当を割り振ります。回復役も重要ですね。結界や補佐的魔法を使う人もです。
でも、ヴォルは一人で旅をしてきたのだと言います。実際今現在、私は一切役に立っていないのですから間違いないのでしょう。
人が嫌いなのでしょうか?あまり人と話さないとも言われていました。普通に精霊言語を使うって、おかしいですよね。女性が苦手って言うのにも驚きましたけど、あの歳までどういう生活をしてきたのですか。まぁ、年齢は知りませんが。でも明らかに、私より年上ですよね?
「私、本当に何も知らないですね。世界の事も…、ヴォルの事も。」
開いた窓から空を見上げます。青い空に、一つだけポッカリと浮かぶ雲が見えました。…私、みたいですね。
このまま何も知らないまま、この生を終えるのでしょうか。それでも頭が良い訳ではないので、色々な事を覚えられる訳ではないのですけど。




