3.守り刀として【2】
「早く来い。」
せ、請求されてしまいました。
「あ、あの…もう一つのベッドは?」
「飾りだ。」
飾りって…。ヴォルの考えている事が分からないです。女性が苦手で、私は平気で。それに毎夜の抱き枕。慣れていく自分が怖いですね。私は椅子から立ち上がると、スゴスゴとヴォルに歩み寄ります。
「っ!?」
反転されてフワリと抱き締められ、そのままヴォルと一緒にベッドに横になりました。
「…メルが腕の中にいると良く眠れる。」
「えっ?」
今聞こえたのは何だったのでしょう。私の願望でしょうか。後ろにいるヴォルの顔は見えませんが、静かな呼吸が聞こえてきます。寝付きが良いですね。
私は一人で色々と考えてしまいがちですが、実際には何も変わりません。浮かれたりヘコんだりした所で、今の私にここから脱け出す事は出来ません。と言うか、その気がないのです。
ヴォルの傍は心地好いです。色々と勝手に不安になったりしますが、村で働いていた頃よりずっと私でいられる気がします。
「私も、ヴォルの腕の中は温かくて…きです。」
とても小さな声で呟きました。背中から与えられる温もりに身をゆだねながら、私はそのまま夢の中に旅立ちました。
「………。」
その時、ヴォルが私をジッと見ていたのも知らずに。
ザワザワと活気ある声が聞こえてきます。そう言えばこの宿、商店のすぐ側にありましたね。ぼんやりとそんな事を考えつつ、ゆっくりと意識を上昇させていきます。
「起きたか、メル。」
「おはようございます、ヴォル。」
いつ起きているのか、ヴォルは必ず私より先に起きています。私が起きるのを待っているかのように、目覚めと同時に声を掛けてくるのです。
「出掛けるのですか?」
私が身体を起こすと、ヴォルはすぐに着替え始めます。簡素な鎧を身につけ、今日は頭から首まで布を巻くようです。初めて会った時、こんな格好でしたね。普段は首に巻いているだけなので、これはわざと顔を隠しているのかも知れません。
「ギルドに行って来る。」
ギルドと言うのは、冒険者の方々の同業者組の事ですね。それくらい私だって分かります。
「朝食は宿の下で食べてくれ。代金は部屋につけておいてもらって構わない。後…。」
「はい、分かっています。外に出ないように、ですね。」
「…すまない。」
「良いですよ。行ってらっしゃい、ヴォル。」
僅かに瞳を曇らせたヴォル。そんな痛そうな顔をしないで下さい。今の私がヴォルの傍にいたいのは、本心からなのです。まぁ勿論、そんな事は言えませんけどね。




