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異世界転生したので選んだら神様になりました  作者: ユリウス


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リライト EP.29、EP.30

~side D~


 王女といえば、ちょっと名のある俺と同い年の、定められた道を行くお嬢様だと思って

いたが、俺は彼女が発するこの雰囲気に気を取られていた。

「ご紹介ありがとうございます。改めまして、僕はシュルトウォルテン町の町長の息子

で、アルス=ボルク=シュテイン=ブラフマーです。この春から王立学園マラージュに通

います。将来は国のために役立てたいと思います。

先ほどは王女様に失礼を致しました。」

 頭を下げ、挨拶をする。こんなところで王家の方に会えるなんて、失礼なことをしない

ようにと思って内心びくびくしていたが、そう思っていると、

「顔を上げてください。そうですか、あの急な発展を遂げたシュルトウォルテン町のご子

息ですか。つまり、あの『聖光のアルス』様だというわけですね。私もあなたのことは存

じ上げています。あなたがお強いのは、そんな理由がおありになられたからというわけで

すね。わかりました。ご丁寧な紹介をありがとうございます。

こちらは私の友達の、シルベーヌ=カーゴイン=ボン=サラマンダーと言います。」

「紹介に預かりました、シルベーヌと申します。あなたは私たちを襲った男たちとは違う

ようだ。本当に怖い思いをした。今日は入学式だというのに。」

「大丈夫ですか。私たちも今日から王立学園マラージュに通います。あなたには助けてい

ただいたし、あなたとはお友達になりたいと思っております。」


 二人はついて来ようとしたが、警務官に引き止められていた。

 市場の店主は気前よく、頼んだ料理にさらに一皿を添えてくれた。その厚意に、小さな

幸運を感じる。

戻ると、二人は柔らかくほころんだ表情で迎えてくれた。

市場の料理を前にして、素直な感想が交わされる。脂の乗りやソースの味わいに感心しな

がらも、どこか楽しげだ。

 宮殿の料理に慣れているはずの二人が美味しいと言ってくれたことが、何より嬉しかっ

た。王女の微笑みに胸が高鳴るが、平静を装う。

やがて青ざめた従者が現れ、場の空気は引き締まる。疑念の視線が向けられるが、二人は

即座に助けられたのだと説明する。無礼な態度をたしなめる言葉は毅然としていた。

時報の鐘が鳴り、学園へ向かう時刻を告げる。

 王女は冷静に事情を語り、救ってくれた人物として名を紹介する。

従者は戸惑いながらも肩を縮める。二人の言葉には誇りと覚悟があった。

 やがて高らかに告げられる名――未来に魔王を討つ伝説の勇者。

その宣言に群衆がどよめき、名は市場に広がっていく。

 ただの朝食の時間は、いつの間にか物語の始まりへと変わっていた。



EP.21


~side A~ 懇親の講話


ざわつく周囲を見回し、俺は肩をすくめた。

「いやいや、照れるからさ。この話は騒ぐほどのことじゃないって。」

むきになって否定すると、リサが静かに言う。

「でも、三人で話したことではあったわよね。」

そこへ戻ってきたシルベーヌが、少し不満げに口を尖らせた。

「いいじゃない。

社会が動くのは、大きな事件や戦争だけじゃないわ。善い出来事が積み重なって、町は平

穏に運営される。遺跡や名所、ダンジョン――今あるものを伝えるのも大事。」

彼女は一歩踏み出す。

「でもね、本当に国を動かすのは“人の関心”よ。

人の興味が集まれば、人が動く。人が動けば市場が生まれる。市場ができれば経済が回る。

それは立派な国づくりよ。」

ふっと笑う。

「ファンクラブだって立派な資源。

今、あなたに集まっている関心は力になる。この興業はきっと繁栄するわ。」

そして真顔になった。

「有名税を払う覚悟があれば、人徳が集まる。

あなたを一つの象徴として、社会的地位を築けるのよ。」

――すごい。

まだ子供なのに、中世貴族の労働管理や市場原理を理解している。

人々の関心から市場を作る発想。

俺が父さんに提案した商売の理屈と同じだ。

物を売るなら長所を示す。

売れれば利害が生まれる。

販売の仕組みを描き、経済や物流まで想像させる。

社会とは、物語で動くものなのかもしれない。

「それはいいわね。」

シルベーヌは続ける。

「王立学園マラージュなら、貴族の顔だけで高く売る必要はないわ。良質な物を適正価格で

提供する。国主だけに頼らず、名籍売りだけで終わらせない。商業都市を築くのよ。」

リサも嬉しそうに頷いている。

国主――女神フレイ。

確かに、彼女の築いた英雄譚や戦争の歴史は大きな観光資源だ。

だがリサは、戦果で潤う国を望んでいないのかもしれない。

もしここで話したことを活かせるなら、前世の知識で市場規模の拡大だって考えられるのに。

そこへ、金髪の従者が口を挟んだ。

「王女様がこのようなことをなされるから…。不敬な輩に違いありません。金で雇い、自ら

の力を誇示したのかもしれません。『剛力』を使えば鎧くらい壊せますでしょう。」

空気が一変する。

「失敬な!」

リサが鋭く言い返した。

「強化魔法は使われていましたが、あれは鉄鋼や黄鋼製の鎧。傷一つつけず粉砕するなど

不可能です。聖光のアルスの強さは十五歳にして伊達ではありません。」

意外なほど強い口調だった。

俺は慌てて場を和らげる。

「従者の方も心配してくださってますし。お二人が席を外されたから探してくれたわけです

し、危険だったのは事実ですから。」

従者は硬い声で言う。

「それではこれにて。礼は申し上げました。王女様方とはお別れです。」

馬車へ向かおうとした、その時。

「いいかげんになさい。」

王女の声は静かだったが、逆らえない強さがあった。

「礼を尽くせぬのであれば、彼は私たちが学校まで送ります。あなたは解任です。」

「なっ……」

従者は言葉を失う。

「父に連絡を。手紙を。」

即断だった。

手紙を書き終えると、王女は振り返り、馬車の前で手招きする。

「アルス様、どうぞ。」

俺は恐縮しながら近づいた。

彼女は迷いなく手を差し伸べる。

「シルフィ、乗って。さあ、どうぞ。アルス様。」

満面の笑みだった。

――この人は、決めたら動く。

俺は、その手を取った。言い訳めいた照れがこぼれた騒ぐことではないと否定しても、

三人の話は続いていた。

間に入る声があり、

流れは変わる。

笑顔とともに、

肯定の空気が広がる。

良い出来事が、

平穏へと続いていく。

運営は続き、

場所は人を呼ぶ。

今あるものを伝えることは、

確かに大切だ。

人を動かす力は、

関係の中に生まれる。

社会が動けば、

経済もまた動く。

揺れる空気の中で、

言葉は少しずつ熱を帯びていく。

正しさだけでは足りない。

理屈だけでも動かない。

人が動くとき、

そこには感情がある。

誇り。

羨望。

そして少しの照れ。

未来の設計図を描きながら、

誰かの視線を意識している。

強さは証明できる。

だが魅力は、証明できない。

それでも人は惹かれる。

市場も国家も、

結局は心の動きから始まるのだから。

空気が変わる。

理屈の場に、

疑いが差し込む。

称賛は簡単だ。

だが信用は脆い。

ひとつの無礼な言葉で、

築きかけた評価は揺らぐ。

力を誇示したのか。

偶然か。

作られた演出か。

疑念は、

静かに人の間を渡っていく。

しかし、

そこで立つ者がいる。

感情ではなく、

立場で。

「それは違う。」

その一言が、

流れを断ち切る。

対立は熱を生む。

だが統制は、

秩序を取り戻す。

少年は気づく。

守られるということは、

試されているということでもある。

信頼は、

擁護によって強くなる。

そして同時に、

責任もまた重くなる。

ざわめきは消えない。

だがもう、

先ほどの軽さはない。

これは遊びではない。

関係は、

公の場へと移ったのだから。

緊張の後、

場には静かな重みが残った。

疑いは消えない。

だが、立場がそれを押さえ込む。

守ると言った者は、

ただ感情で言ったのではない。

それは宣言だ。

この場での立ち位置を決める宣言。

少年は理解する。

自分は一人ではない。

評価は共有され、

立場は固定され、

関係は公開された。

もう後戻りはできない。

従う者は戸惑い、

命じる者は迷わない。

決断とは、

周囲を動かすこと。

そして――

差し伸べられた手。

それは優しさだけではない。

招待でもない。

共に進むという意思表示。

少年がその手を取る瞬間、

構図は完成する。

三人の関係は

私的なものから公的なものへ。

感情はまだ曖昧だ。

だが立場は明確だ。

象徴は選ばれた。

そして、

象徴は歩き出す。




遅れまして申し訳ございません。

EP数を間違えていました、申し訳ございません。

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