9 ルーク、依頼を頼まれる
――こうして、俺はシルフィードファミリーの一員となった。
さらに、ホーム内にある一室を私室として無償で提供してもらえるという。
『二人部屋をタダで貸してもらえるなんて良かったね。それも朝晩の食事付きだってさ』
「ああ、ジェトスはノアを助けてくれた礼だと言っていたな」
『それもあるだろうけど、半分は入団試験を見た上での実力者の囲い込みだろうね』
「どちらでもいいさ。俺たちの目的は変わらないからな」
俺は備え付けのベッドに腰掛け、支給されたファミリーの紋章『二つの丸が重なるように配置された』マークが描かれた腕章を見ながら、静かに息を吐き出した。
言葉が通じるようになり、この街での身分と拠点を手に入れた。孤立無援のサバイバルから一転、情報収集のための環境としてはこれ以上ないスタートラインに立てたと言っていい。
「ナイト、置いてきたラグナの状況はどうだ?」
『修理については出来る範囲では終わってるよ。でも、本来の二十パーセントの出力を出すのが限界だね。駆動関係もかなりダメージを受けてるから、今の設備ではこれが限界だよ』
「そうか。まあ、動かせるようになっただけマシか」
その時。部屋のドアがノックされた。
「ルーク。起きてる?」
「ああ、起きてるぞ」
俺は扉に近づき、ゆっくりと開ける。
そこに立っていたのは、もちろんノアだ。
「どうした、なにか用事か?」
「うん、お父さんがルークに用事があるから、呼んできてくれって」
「団長が? ……わかった、すぐに行こう」
ノアと並んで、団長室へと向かう。
移動の途中で、何人かの団員に声を掛けられたので挨拶を返す。
「みんな、ルークの噂で持ち切りよ」
「ちょっと、張り切りすぎたかな」
「そんなことないよ。舐められるより全然いいよ、特に新人はね」
「確かに、実力重視の世界ならなおさらか」
――コンコン。
「お父さん。ルークを呼んできたよ」
「ああ、入ってくれ」
部屋に入ると、そこにはジェトスの他にも二人の人物がいた。
「急に呼び出して悪いな」
「いや、特に用事もないから大丈夫ですよ」
ジェトスに勧められてソファに座る。
「実はな。早速で悪いがお前に頼みたいことがあるんだ」
「頼みですか? どんな内容でしょう」
「内容を話す前に、まずはこっちの二人を紹介しておこう」
そう言って、二人に視線を向ける。
一人は水色の髪をショートに揃えた女性。そしてもう一人がピンクのロングを後ろでまとめ、丸い眼鏡を掛けた女性だった。
二人ともノアと同年代くらいに見える。
「水色髪の方がファル、ピンク髪の方がリリーナだ。二人ともファミリーの団員だ」
「ルークです。よろしく」
「へぇ〜、キミがノアちゃんが最近よく話してるルーク? ボクはファルだよ、よろしくね〜」
「はじめまして、リリーナです。よろしくお願いしますわ」
二人と挨拶をかわすと、さっそくジェトスが本題に入る。
「今回この二人は、太古の森で『星降』の調査隊に加わっていたんだが、そこで『シーカー族』が見たこともない遺物を運んでいるのを発見したらしくてな」
「星降? それにシーカー族とは?」
「先日空から突然無数の流星が落ちてくるという事象があった。見なかったのか?」
(もしかして、艦隊の破片か?)
『おそらくはね』
「なるほど、あの流星の事ですか。それで、シーカー族とは?」
「そうだな、いわば星渡りの天敵といったところか。とにかく奴らは珍しいものが好きでな、星渡りの部品を盗んだり、魔導機などの遺物を見つけると、自分の巣に持ち帰る習性がある魔獣だ」
すると、それを聞いたナイトが話しかけてきた。
『ねえ、ルーク。そう言えば、問題なかったから報告してなかったけど、最近ラグナに何度も近寄ってきた生物がいたんだ。もしかしてそいつらがシーカー族かも』
(ラグナは大丈夫なんだな?)
『もちろん。脅したら、すぐに逃げていったから何の問題もないよ』
「それでだ。今回お前にお願いしたいのは、この二人にノアを加えたパーティが行う依頼。『シーカー族が巣に持ち帰った遺物調査』のサポート兼護衛をお願いしたい」
「なるほど、サポート兼護衛ですか」
「ああ、この三人も今年で十七歳になったからな。そろそろ自分たちでパーティを組んで探索に出る歳だ。そこで、お前の実力なら不測の事態が起こっても対処出来るだろ?」
ノアたちは十七歳なのか。この国では、十七歳で独り立ち的な感じなのか?
「それで、そのシーカー族って奴の脅威度はどれくらいなんですか?」
「シーカー族ってのは習性が厄介なだけで、決して強い魔物じゃない。ゴブリンどもより弱いくらいだ。危険はそうない。まあ、それでも心配でな。ファミリーの長として……親バカだと思ってくれ」
(危険度も低そうだし、初仕事としては丁度いいか)
「そういうことなら、お受けします」
「そうか、助かる。よろしく頼む」
ジェトスはそう言って、再び俺に向かって深く頭を下げた。
(シーカー族が運んでいた『見たこともない遺物』……。ラグナに興味を示していたってことは、俺たちの世界の機械か、艦隊の残骸の一部の可能性があるな)
『うん、その可能性は極めて高いね。可能ならその巣を叩いて残骸を回収しちゃおう。壊れていても素材は資源として使えるからね』
「ルークよろしくね!」
「よろしくね〜」
「よろしくお願いしますわ!」
三人と握手をかわす。
その後は、別室で今回の予定を立てることにした。
――とは言っても、俺は三人の話し合いを聞いているだけだ。
俺はシーカー族に詳しくないし、あくまでもこれはノアたち三人の依頼だからな。
「まずは、シーカー族の巣を見つけないとだね」とノアが地図を広げる。
「シーカー族は基本的に崖の洞窟に巣を作るから、見かけた場所から近い崖を全て調べればいいんじゃないかな〜?」
「でもファル。全ての崖をあてもなく探すのは効率が悪いわ。餌(魔導器)で釣って、巣まで尾行するのがいいですわ」
「さすがリリーナ! それいいかも〜」
「私もそれがいいと思うわ、その案でいきましょ。明日の朝、雑貨屋で餌になる魔導器を買って出発ね」
ノアの言葉に二人も頷く。
「どうやら、話はまとまったようだな」
「うん、明日の朝出発。よろしくねルーク」
その日は、詳細を詰めて解散した。
そして翌日、初めての依頼が始まった。




