↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/38

30 ルーク、パーティーに出席する

 会議が行なわれる日の朝、ホテルに王国から迎えが来てジェトスたち会議組が出ていった。

 俺たちが出席するパーティーは夜からなので、それまではホテルに待機だ。


 俺が少し遅い朝食をとろうと食堂へ向かうために、一階のロビーへ降りると言い争う声が聞こえた。


「ですから、私はリンデガルド様の使いで来ているのです。すぐに呼んで来なさい!」


「アンジェリーナ団長の命なので、お引き取りください」


「なんだと! 私の商会がどれだけ騎士団に出資しているか、わかっているのですか!」


「何と言われようと、無理なものは無理です」


 その男は、先日直行便の中で会ったマルマという商人だった。

 そして、俺を見つけると下卑た笑みを浮かべ、揉み手で近づいてくる。


「これは、これはルーク様、丁度良いところに。先日は失礼しました。じつは……」


 俺はマルマを無視して、食堂へ向かう。


「あ、あのルーク様!」


「俺はこれから朝食なんだ。お前と話す気はない」


「なっ! キ、キサ……ぐぅ。い、いえ。本日はリンデガルド様の使いで……」


「話す気はないと言ったんだが、聞こえなかったのか? これ以上しつこいようなら……」


 そう言って、後ろでこちらを窺っている騎士団員に視線を送る。


「ぐぅ……」


 マルマが苦々しい表情になり黙り込む。


「俺は会う気もないし、話す気もない。そう伝えろ」


 マルマが何かを言いかけるが、それを無視して歩き出す。

 俺を追いかけてこようとする気配を感じたが、騎士団員に抑え込まれているようだ。


(まったく、しつこい奴だ)

『どう考えても、厄介ごとの匂いしかしないね』


 ロビーでの騒ぎを無視して、食堂で朝食を注文する。

 すると、そこにノアがやってきた。


「ロビーの方が騒がしかったけど、何かあったの?」


「例のマルマって商人がちょっとな」


「え? 大丈夫だったの?」


 ノアが心配そうな表情を浮かべ尋ねてくる。


「ああ、問題ない」


「ならいいんだけど」


 その後、二人で朝食をとるとパーティーの時間まで自由に時間を過ごす。


 日も暮れ、そろそろ時間だというので、礼装用の軍服を着てロビーに降りていく。

 ロビーに降りると、なぜか宿泊客だけではなく、護衛に当たっていた騎士団員も俺に注目する。


(なんだ? この服で問題ないって話だったんだが?)


 そこへ、後ろから声がかかる。


「これは、見違えたぞ」


 そう声を掛けてきたのは、二人の護衛を引き連れたアンジェリーナ様だった。


「どうも注目されているようなんですが、どこかおかしかったでしょうか?」


「いや、そんなことはない。皆、貴方を見てどこぞの王国貴族かと勘違いしているのだろう」


「これは、俺の国の軍服なんですけどね」


「なるほど、貴方も軍属でしたか」


「ええ、まあ」


 時間がなかったとはいえ、やはり現地で調達すべきだったか。

 仕方ないとはいえ、この惑星に不時着してから注目されすぎている気がする。


(あまり目立ちたくないんだがな)

『今更だね』


 ナイトが呆れたように言う。


「ルーク、お待たせ」


 そこへ、ドレスに身を包んだノアがロビーへ降りてきた。

 そのドレスは、紺に銀色の宝石が散りばめられ、まるで夜空に星々が煌めくように輝いている。


「アンジェリーナ様。本日はよろしくお願い致します」


 ノアがアンジェリーナ様に向かって、軽くカーテシーをとった。


「ノア嬢も素敵ですね」


「恐れ入ります」


 ノアも姫様に褒められて嬉しそうだ。

 そして、何か言ってほしそうに俺の方を見る。


「似合ってるよ、びっくりした」


「そう? ありがとう!」


 俺が褒めると嬉しそうに顔を赤くする。


「では、そろそろ出発してもいいかな?」


 ノアと二人で頷き、ホテルの外に待っていた豪華な魔導機へ乗り込む。

 僅かな振動とともに魔導機が空へと飛び立つ。


「この魔導機、空を飛ぶんだな」


「わたしも、こんな魔導機初めて」


「これは、私専用の魔導機でな。特注品だ」


 アンジェリーナ様が得意げな表情で教えてくれる。


「えっ、アンジェリーナ様専用なんですか?!」


 ノアが驚きの声を上げる。


「貴方の魔導機兵を見させてもらった、お礼です」


 そう言って微笑んだその目には、「またお願いしますね」と言わんばかりの期待が込められていた。


 移動を開始して十分ほど。

 眼下にパーティー会場となる丸い建物が見えてきた。


 ライトアップされた建物を囲むように、魔導機兵が整列して立っている。

 左右に分かれて整列する魔導機兵の間を、招待客を乗せた魔導機が次々と通過していく。


 俺たちの乗った魔導機も、次第に高度を下げ魔導機兵の間を潜る。


 その際、左右の魔導機兵が剣を天に掲げ、アーチを作る。

 アーチを潜り会場の入口に到着すると、魔導機を降り赤い絨毯へと進む。


 隣を歩くノアを見ると、さすがに緊張しているのか表情が硬い。


「大丈夫か?」


「う、うん。さすがに緊張するね」


 俺はそっとノアの手を取ると、こちらを見てくるノアに頷いて、ゆっくりと会場へと歩き出す。




 ◇




 ライトアップされたパーティー会場を見渡せる部屋の一室から、窓の外を見ながら男が言う。


「それで、奴には伝えてきたんだろうな」


「そ、それが……」


 小太りの中年男が言い淀む。


「まさか、伝えていないのか!」


「い、いえ。リンデガルド様からだと伝えたのですが……。奴めが話を聞く気はないと言いまして」


「なんだと! 我からの用件だと知りながら聞かなかったというのか!? それで、お前はおめおめと帰ってきたと?」


「いえ、もちろん引き留めようとしたのですが、警備の騎士団に取り押さえられまして……」


 それを聞いたリンデガルドの顔が、憤怒に歪む。


「ちっ! アンジェリーナ姫の指示か! お飾りのくせに出しゃばりおって!」


「あの、どう致しましょうか?」


 小太りの中年男マルマが、萎縮し震えた声で指示を乞う。

 しかし、リンデガルドはそれに答えず窓の外を睨みつけたまま何も言わない。


「あ、あの。リンデガルド様?」


「手勢を集めろ。例の奴らにも連絡だ」


「し、しかしそれは……。か、かしこまりました!」


 リンデガルドに睨まれたマルマは床に頭をこすりつける勢いで下げると、足早に部屋を退出していく。


「忌々しい混血め。騎士団長の席から引きずり落としてくれる!」


 華やかに彩られたパーティー会場を睨みつけたその瞳には、ドス黒い憎悪の炎が揺らめいていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。