第6話「金山の巨石」
工藤俊一と秋月小五郎は、独自の調査を進める中で、横浜から呼び寄せた古い伝手――私立探偵の江戸川勉と、その助手である元刑事の安藤修と合流することになった。
「工藤さんの噂は聞いてますよ。今回はえらく大きい話みたいですね」
江戸川はまだ二十五歳と若いが、粘り強い調査で知られていた。安藤は寡黙だったが、元刑事らしい鋭さで周囲を観察していた。
四人は情報をすり合わせた結果、下呂市金山町にある「金山巨石群」へ向かうことにした。
現地に着いた一同を待っていたのは、想像以上の光景だった。
「……これは、ただの岩じゃないな」
秋月が、見上げるほどの巨石を前に呟いた。案内板には、この巨石群が縄文時代の天文観測施設だったとする説が記されている。夏至や冬至の頃、岩の隙間から差し込む太陽の光が、季節を正確に告げるのだという。
「日本版ストーンヘンジ、ってやつですか」
江戸川が感心したように言う。だが、工藤の関心は別のところにあった。
「見てください、ここ。最近、誰かが機材を設置した跡があります」
巨石の隙間に、三脚を立てたような小さな痕跡が残っていた。土の乱れ方から見て、そう古いものではない。
「太陽の角度を測るような機材だとしたら……何のためだ」
安藤が低い声で言う。
その帰り道、一行は動物病院の院長・木下千恵を訪ねた。地元で長く開業している彼女は、思いがけない情報を提供してくれた。
「実はこの間、往診の帰りに山の中で、変な機材の破片を拾ったんです。精密機器のような……何に使うものか分からなくて」
木下が見せてくれた金属片を、工藤はしげしげと眺めた。
「秋月さん、これ」
「うむ。素人目にも、測量か観測用の機材の一部に見えるな」
金山巨石群の痕跡と、木下が拾った破片。どちらも、太陽の動きを精密に観測しようとする、何者かの存在を示していた。
「太陽の暦を、今さら誰が、何のために調べてるんでしょうね」
江戸川の疑問に、誰もすぐには答えられなかった。だが工藤の頭の中には、これまで集めてきた断片――三柱鳥居、景教、そしてこの太陽観測の痕跡――が、少しずつ一つの輪郭を結び始めていた。
(第7話へ続く)




