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『犬神物語』〜転生少女と不思議な絆〜 《改稿版》  作者: 犬神 匠
第三章 交わる記憶、覚醒の契り

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第7話『夜空を約束した午後』

前回までのあらすじ(第二章)

〜語り手:犬神愛衣より〜


ねぇ……あなたも、誰もいないはずなのに、

“見られてる気がする”って――

ふと、感じたこと、ありませんか?


空気がすぅっと冷たくなって、

背中の奥がゾクッとするような……


そんな、理由のわからない“違和感”。


高校二年生の犬神いぬがみ千陽ちはるちゃんも、ある日、その気配を感じたんです。


明るく元気な彼女の心の奥には、

ずっと消えない“もや”のような感情がありました。


放課後、チハルちゃんは愛犬ゲンキと散歩に出かけ、

“見られている気配”に戸惑いながらも、

何度も訪れていたはずの場所へ足を向けます。


でもその日だけは、

そこがまるで違う空気をまとって見えたんです。


静かに、でも確かに――

なにかが、動き始めていたのです。


そして、

銀髪の転校生、天野ヒカリさんと出会います。


その出会いに、ぴくりと耳が揺れたのは、

きっと偶然なんかじゃなかった。


しっぽが、ぶんっ、ぶんっ……って揺れるくらいに、

はっきりと、伝わってきたのです――


* * *


「――転校生の天野ヒカリです」


静かで、それでいて芯のある声が、教室にすーっと広がっていった。


その瞬間、思わずヒカリの方を見ちゃう。


えっ、あの子……!?


この前、展望台で会ったばかりなのに――

なんでここにいるの!? ほんとに……!?


派手な子じゃないのに、そこにいるだけで空気がふわっと変わる。

なんかもう、目が離せないんだけど……!


さらりと揺れる銀色の髪が、光をきらっと弾いてる。

それだけでも、すっごく特別に見えるのに。


ヒカリの瞳は、静かな湖みたいに澄んでいて――

その奥は、すごく深そうで。


椅子にすっと座ったまま、こちらに気づいたみたいに、ふわっと静かに笑ってくれた。


――あっ。


息が止まりそうになった。


「また会えたわね、犬神さん」


「う、うんっ!びっくりしたよ〜!まさか同じクラスになるなんてっ!」


「私も驚いたよ。でも…なんだか、不思議と違和感ない気がする」


ヒカリの微笑みは、ふわっとやわらかくて――

どこか儚くて、つい見とれちゃった。



授業が終わると、ヒカリの周りにはクラスメイトが次々と集まってきた。


「ヒカリちゃん、どこから来たの〜?」

「好きな食べ物は?」「趣味ってなに?」


質問攻めの中でも、ヒカリは落ち着いてて、丁寧に答えていく。


「引っ越してきたのは少し離れた常盤町ときわちょうから。好きな食べ物は和菓子かな。趣味は……可愛い犬のグッズを集めること」


――“常盤町”って言葉に、私のアンテナがビビビッと反応っ!


「えっ、奇遇〜っ! 私も前は常盤町にいたんだよ!?」


「……そうなんだ」


「もしかして、どこかですれ違ってたかも……! わぁ、なんかすっごく不思議な感じ〜っ!」


思わず前のめりに話しかけちゃって、ヒカリがちょっと目をまるくする。

でもすぐに、ふわっと微笑んでくれて。


そして――さらにビックリ!


「犬のグッズが好きなの!? わ、わたしも大好き〜っ!!

ぬいぐるみとか文房具とか、お気に入り見つけるたびに、つい衝動買いしちゃうんだよね〜っ! もう止まらなくて〜っ!」


テンション爆上がりの私に、ヒカリは少しだけ身を乗り出して、こっそり打ち明けるみたいに――


「……可愛い犬のグッズが揃ってるお店、常盤町にあるみたいで。前から気になってたの」


「うわぁ、ほんとに〜っ!?

そのお店、私も知ってるよ〜!」


なんか一気にテンション上がっちゃった!

こういうの、ほんと好きっ!


「じゃあ、今度そのお店、一緒に見に行こっ♪」


ヒカリは一瞬だけ戸惑った顔をしたけど、

すぐに「……うん、いいかも」って小さく頷いてくれて――


「実は、そこの限定グッズとかも気になってて……えっと、その……」


「限定!?」


思わず声が跳ねた。


「それ、もう行くしかないやつじゃんっ!」


もし私がほんとのワンちゃんなら――

ぜ〜ったい尻尾ぶんぶんで、全力で振ってたと思うっ!


「チハル、距離感バグってない? でもまあ、そこがいいんだけど☆」


亜沙美がくすっと笑いながら言うと――


「たしかに、犬神さんらしいじゃん」

「限定って聞くと、テンション上がるもんね」


そんな声があちこちから上がって、教室の空気がふわっとやわらぐ。


「えっ、そう!? だって嬉しいんだもん〜っ!」


思わずそう返すと、ヒカリが少しだけ目を丸くして、

でもすぐに、ふわっとやわらかく微笑んでくれた。


なんだか、じんわりあったかくなって――

えへへっ、私、すっごく嬉しくなっちゃった。



そんな気持ちのまま、私はお昼になるのが待ちきれなくて――そして、昼休み!


亜沙美と隆之と一緒に、いつもの屋上へゴーっ☆

春の風がほっぺをなでて、わくわくしながら階段をのぼっていくと……


――そこには、もうヒカリの姿があった。

フェンスにもたれて空を見上げるその横顔がね、なんていうか……

まるで小説の中から出てきたヒロインみたいで!

思わず『わぁ…』って、声に出しそうになっちゃった。


「ヒカリ、ここにいたんだ〜」


声をかけると、ヒカリがふっと笑って、

こっちを見てくれた。


「ええ。風が気持ちよくて、つい」


その顔を見ていたら――

ほんの一瞬だけ、少し寂しそうに見えた気がした。


「あっ、ヒカリも一緒にお弁当食べる?」


「いいんじゃないか。外で食べるには悪くない条件だ」


「ほらほら、ここ空いてるよっ! みんなで食べたら絶対楽しいじゃん〜♪」


ヒカリは、ちょっと迷ったみたいだったけど、

「……じゃあ、少しだけ」って言ってくれて――

私は「やった〜!」って、思わず手をぎゅっと握っちゃった。


ヒカリは少しだけ照れたように、そっと私たちの輪に加わってくれて、一緒にお弁当をひらく。

春の風を感じながら、もぐもぐタイムっ♪


「はぁ〜〜〜っ、やっぱ屋上って最高っ! 風も気持ちいいし、空も広〜いっ!」


「日差し、強いな。日焼けには気をつけろ、亜沙美」


「うぅ、今それ言わないでよ〜!」


そんなやり取りに、みんなでくすくす笑って、

ふと、空を見上げた。


「……ねぇ、こうして空をのんびり眺めるのも、

悪くないよね」


「おっ、チハル詩人か〜?」って亜沙美に突っ込まれたけど、私はちょっと照れくさくて――でも本当の気持ちを伝えた。


「わたし、夜に星を眺めるのが好きなんだ。すっごく静かで、空が広くて、光ってる星があると……なんか、ほっとするの」


「星を見てると、なんだか懐かしい気持ちになっちゃうことがあるんだよね」


「えっ、チハルってそういうタイプだったの? 意外なんだけど〜!」


「確かに。空なんて、意識しないと見ないもんだな」


ふふっ、やっぱ照れるな〜。


そんなふうに思っていたら――


「……わかるかも」


ふと横を見ると、ヒカリが静かに空を見上げてた。


「ヒカリも、星を見るの好きなの?」


「そうね。夜空って……なんだか落ち着くの」


その瞬間、胸の奥がふるっと揺れた。


なんだろう……どこかで、似たような感覚を覚えた気がして。


「そ、そっか。ヒカリも夜空、好きなんだね」


ヒカリは小さく頷いて、遠くを見つめた。

その横顔が、ほんの少しだけ切なげに見えた。


「高い場所から町を眺めるのが、好き。

星もキレイだし、静かで……なんだか、落ち着くから」


「ロマンチック〜♪」って言いながら、私はいたずらっぽく笑ったけど、


「犬神さんも、そう思う?」

ヒカリがそう聞いてきて――


「もちろんっ!みんなで一緒に過ごす今も、すごく特別だな〜って思うもんっ!」


私がそう言って大きく伸びをすると、ヒカリはふわっと微笑んで、なんだか安心した顔をしてた。


そして、ぽつりと……


「……また、星が見たくなってきたかも」


その言葉に、私の中の何かがキラッと光って――


「よしっ!じゃあ今度、みんなで星を見に行こっ!」


「おーっ、いいじゃんそれっ!」


「天気予報は確認しておく。晴れそうな日を選べば問題ない」


みんなでわいわい話してる中、

ヒカリがちょっと不思議そうな顔をして、でもすぐに嬉しそうににっこり笑ったんだ。


「……楽しみ」


ヒカリはふわっと笑って――

その表情が、すごくきれいだった。


──夜空の下で、みんなで笑い合える時間。


それって、すごく素敵だよねっ。

そう思ったら、胸の奥がふわっとほどけて――

ワクワクが止まらなかった。

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