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『犬神物語』〜転生少女と不思議な絆〜 《改稿版》  作者: 犬神 匠
第五章 命の輝き

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第18話『はじまりのワンダフル!』

——光希と初めて言葉を交わした、遠いあの日。


それは、私がまだ“ちっちゃかった頃”のこと。


「おじゃましまーす……」


ママと一緒に、おともだちのおうちに遊びに来た。

でも、ちょっとだけドキドキする。


ママとミツキちゃんのママはとっても仲良しだけど、

わたしはミツキちゃんと、あまりお話ししたことがないから。


お部屋の中を、きょろきょろとのぞく。

すると、お庭でミツキちゃんが笑いながら、白いモフモフのワンちゃんと遊んでいた。


「……犬、好き?」


ミツキちゃんのママが、にっこり笑いながら私に声をかけてきた。


「えっ? あ、うん! だいすき!」


わたしが大きな声でこたえると、ミツキちゃんのママはやさしくうなずいた。


「ミツキがね、ユキと遊んでるの。よかったら、いっしょにどう?」


お庭のミツキちゃんが、ユキの背中をぽんぽんとたたきながら、こっちを見て笑ってくれた。


「ユキね、すっごく元気なんだよ! 走るのも、遊ぶのもだいすきなの!」


ユキ。

お庭をぴょこぴょこ走り回ってる、まっしろのふわふわワンちゃん。


「……ユキ?」


「うん。雪の日にね、ママがひろってきたの。ちっちゃくて、まっしろで……まるで雪みたいだったから、ユキって名前にしたの」


ミツキちゃんがユキちゃんの頭をなでると、ユキちゃんはうれしそうにしっぽをフリフリ。


とっても楽しそう。


(いいなぁ……私も、あのワンちゃんと遊びたい……)


そう思ったら、そっと手がぎゅってなる。


「……あの、わたしも犬、さわりたい」


ドキドキしながら声をかけると、ミツキちゃんが ぱちんと目を大きく開いて、わたしを見つめた。


「……いいよ」


ちょっとだけ、はずかしそうな声。


それからわたしは、ミツキちゃんとユキちゃんに

そーっと近づいた。


最初は やっぱりちょっとドキドキしてたけど、

ユキちゃんは、わたしのにおいをくんくん嗅いでから、

ぺろっと手をなめてくれた。


「わっ……!」


びっくりしたけど、

なんだかくすぐったくて、あったかくて――

勇気を出して、ふわふわの頭をそっとなでてみる。


「もふもふだぁ」


やわらかい毛並み。

ぽかぽかした体温。


ユキちゃんのあったかいぬくもりにふれたら、

さっきまでのドキドキなんて、どこかへ行っちゃった。


その瞬間――

わたしの中で何かがパァッとはじけた。


「ワンッ!」


思わずユキちゃんに向かって、うれしそうにほえちゃった。

するとユキちゃんも、「ワン!」って元気にこたえてくれて——


「えっ? いまの、ちはるちゃん?」


ミツキちゃんがびっくりした顔で、こっちを見る。

けど、すぐにクスッと笑顔になってくれた。


「ワン!」


ミツキちゃんもユキちゃんみたいに、わんわんって元気にほえてくれた!


なんだかすっごく楽しくなって、わたしたちはお庭でころげ回りながら、わんわん言って、いーっぱい笑った。


「ねえ、ミツキちゃんのこと、みっちゃんって呼んでもいい?」


わたしが聞くと、ミツキちゃんは ちょっと真剣な顔で考えて……


「うん。いいよ。わたしもちーちゃんって呼ぶね!」


こうして、わたしとミツキちゃんは、ただのご近所さんじゃなくて、ほんとうのおともだちになったんだ。


* * *


それからしばらくして、今度は、みっちゃんがわたしのお部屋に遊びに来た。


「へぇ〜、ちーちゃんの部屋って、なんだか落ち着くね!」


みっちゃんは、きょろきょろしながら部屋を見まわしていた。すると、ふと机の上にあったボールに気づいて、小さな声をあげた。


「ねえ、これってなぁに?」


みっちゃんが手に取ったのは、

ちょっとすりきれた黄色いボール。


手のひらにすっぽり入るくらい小さくて、

ところどころに小さなキズがついていた。


「あ、それはね……」


わたしはボールを見つめながら、

ゆっくり話し始めた。


「ずっと前にね、ある日迷子になっちゃったの。泣きそうだったときに、ある人がこのボールをくれたんだ。『これを持ってたら大丈夫』って」


そっとボールをにぎりしめると、そのときの安心した気持ちがよみがえってくる。


「それ以来、このボールはわたしの大切な宝物なの」


みっちゃんは、じっとボールを見つめたあと、ふんわり笑って、「へぇ〜、そんな大事な思い出があるんだね」ってやさしくうなずいてくれた。


「うちのパパもね、サッカーが大好きで、よくいっしょにボールけって遊んでるよ!」


それから、ちょっと照れたように続けた。


「それにしても、ちーちゃんって ほんとに犬好きだよね。ユキともすぐ仲良くなっちゃったし」


「うん! わたし、犬がだいすきなんだ。でもね、うちでは飼えないの……だから、またユキちゃんに会いに行くね」


「もちろん! ユキも、きっと楽しみにしてるよ!」


みっちゃんが、ニッて元気いっぱいに笑った。


* * *


そして年月が過ぎて——春。


新しい制服に袖を通し、

私たちは、ついに中学生になった。

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