4話 ー歪む熱狂ー
「俺はユウト。最強の勇者だ」
鏡の中の自分を見て、ニヤリと笑う。魔力カンスト。
なんでだろうな。全然ダサくない。
むしろ、ちょっとかっこよく見える。
「今日は魔法のテスト、するか」
朝起きて「今日が楽しみ」なんて思ったの、初めてかもしれないな。
改めてステータスを確認する。
ーーー
HP 130 / 130
MP 99999949
STR 80
DEX 70
INT 99
AGI 40
魔法:全魔法使用可能
スキル:魔力99999999
ーーー
いや、明らかにMPだけ多すぎだろ。
HP130ってのが心配すぎるよね、鎧とか当然手配してくれるだろうけど。
一般的な兵士のHPがどのくらいなのか調べないとなぁ。
王女に呼ばれているため、彼女の部屋へと向かう。
廊下を歩いていると、下級兵士が頭を下げてきた。
「わぁ、勇者様!おはようございます。あ、あの、俺はイモントっていいます! 」
……ふーん。
そうだ、こいつのステータス見てみよう。
頭の中でコンソール開く。 ……検索。やっぱりできねーな、と。
このコンソール、俺が魔法を使おうとすると勝手に出てくるチート仕様だ。
まあ、ブックマークから「上級鑑定」をポチっと。
------------------------------------------
名前:イモント
種族:ヒューマン
年齢:24歳
推定寿命:77歳
HP 250 / 280
MP 175 / 180
STR 127
DEX 120
INT 65
AGI 89
魔法:下級鑑定 小回復
スキル:メタス流盾術Lv7 料理Lv2
------------------------------------------
え、MP以外下級兵士と大差ないような気がして若干不安がよぎる。
やっぱ、俺の身体能力だけじゃ戦えねーのかな。今のところ、遠距離一択。
あとは魔力を身体に込めた時どうなるかだね。これもテストしないと。
ちなみにこの「推定寿命」というのは、老化とともに魔力が落ち込むことから、最大MPから換算できるものらしい。というのは、前回、俺に上級鑑定を使った巫女ちゃんから聞いた。
彼女の種族であるエルフなどの長寿種族も膨大なMPを持っているらしい。
でも彼女自身は10歳なのだ。天才少女ってやつかな。
ちなみに俺? 1,844歳らしい。
……意味わからん。
その後もすれ違う全ての人間に羨望を向けられつつ、俺は王女が待つ部屋へと向かった。
王女の部屋に入ると、すでに数名の軍関係者が集まっていた。
書類を手にした将軍風の男や、地図を指し示す若い参謀など。
空気は緊迫している。
王女と軍関係者が俺に順に説明する。
現在、この国は人間種(ヒューマン/亜人)諸国連合で唯一、魔王軍支配領域と隣接する国。
ほとんどすべての連合兵がこの国の前線に集結している。
攻め手側の勢力はおびただしい数の魔物、魔族、魔王配下四天王すべてが侵攻中。
下級魔族ならまだしも、これら四天王に対して連合側はまったく抵抗できていない。
大決戦前夜のような状況らしい。
王女の指はティーカップを持つたびに微かに震えていた。
「全ての魔王軍四天王が前線に……S級冒険者も限界です」
一部のS級冒険者が食い止めているものの、彼らもひどく負傷しており、
いつまでもつか、といった状況のようだ。
……もう後がない。
俺は、報告書ペラペラめくり、眺めていた。
「勇者様、それで現在のわが軍の布陣なのですが…」
将軍といった面持ちのおっさんがまだ話していた。
俺はまるで、クエストの説明を聞いている気分だった。
『どれ長押ししたらスキップできるんだ?これ。』
あー誰かに質問したい。
それでも、焼きたてのパンをちぎりながら、俺は笑う。
「じゃあさ、まとめてやるか」
「……え?」
王女と参謀たちの視線が一斉に俺に注がれる。
「テストだよ。せっかく魔力カンストなんだ。威力確認くらいはしないとな」
自分で言って少し笑う。世界が妙に鮮やかに見える。
人の恐怖も、焦りも、全部くっきり見える。
悪くない。
「少し空、借りるぞ」
窓を開ける。
飛行魔法を起動。
足元に魔力が収束し、そのまま空へ。
城が縮み、兵士が点になる。
ああ、なるほど。
人間って、こんなに小さいのか。
「空飛ぶの最高!」
◇
前線。
地を揺らす咆哮。黒鎧の巨躯――四天王の一角が剛剣を振り下ろす。
数十人が粉々に粉砕された。
「持ちこたえろ!」
神殿騎士テオの叫びも虚しく、彼のタワーシールドも砕け、仲間の絶叫が耳をつんざく。
もう限界だった。
そのとき。
空が、白く裂けた。
上空に、ひとりの影。
テオは空を睨む。
次の瞬間、空間そのものが軋む。
◇
殲滅魔法ヘテロドレイク。
消費MP:12,000,000
……ふーん。意外と安いな。
正直、名前と消費MPしかわからないけど、殲滅だよ?せんめつ。
はい、発動。
巨大な魔法陣が空を覆う。
幾何学模様が幾重にも重なり、美しい。
ふふっ。 わらってしまう。
空が白く裂け、太陽の光まで遮る巨大な魔力の渦が現れる。
前線の兵士たちはその圧に押され、盾を握る手が震える。
「……これこれ。こういうの見たかった!」
落ちろ。
魔法陣は天空に向かって無限に広がり、幾何学模様が何層にも重なる。
魔法陣から魔力の奔流が戦場に落下するたび、大規模な爆発が起こった。
あまりの威力に戦場の大地が大きく隆起。空気の分子までが振動し、地面が波打つ。
中心地は地面が赤く溶け、地獄のような状態であった。
魔法陣から最後に大きな光の柱が現れた。
その光は金色の炎と青白い雷光が混ざり合ったような色彩で、存在を塗りつぶした。
多くの下級魔物と四天王と人間種たちの血みどろの戦場だったその場所は
大きな暗い闇のようになっていた。
煙と粉塵が戦場を覆い、残るのは巨大な焦土と沈黙。
血の匂い、焦げた土、砕けた岩の破片――戦場の生々しさだけが残り、戦いの爪痕が永遠に刻まれる。
煙の向こう側、さっきまで数千の鼓動があった場所には、
ただ焼けた土が爆ぜる音だけが残っていた。悲鳴すら聞こえない。
耳の奥にこびりつくような、不自然で重い沈黙。
――――救った、はずだよな。
なのに、胃の奥に冷たいものが残る。
黒煙の向こうで、まだ一体だけ四天王が立っていたが、片腕を失い、膝をついている。
俺は高度を落とす。
「お前はまだ生きてるんだね。俺はユウト。最強の勇者だ。」
血を吐き、驚愕の声を漏らす四天王。
「勇……者……だと……?」
「うん」
軽く手を振る。
残りHP、ほぼゼロ。
魔法を選ぶまでもない。
身体強化魔法Lv100
消費MP:500,000
「魔力を込めて~、パンーチ。」
四天王だったものは「プチュ」のような音で、破裂し、消滅した。
やはり魔力を込めれば、肉体の攻撃力もめちゃくちゃ強化されるようだ。
◇
少し離れたところで戦闘音がする。
……ん?
黒煙の向こう、点々と大きめの魔族がまだ戦っているようだ。
まだ生きてるやつがいるな。
「せっかく来たんだ。全部片づけるか」
飛行魔法で近づく。
下では兵士たちがこちらを見上げていた。
「勇者様だ!」
「助かった……!」
歓声。
悪くない。
上級魔族が瓦礫の影から這い出る。
「逃がすか」
爆炎魔法Lv70
消費MP:300,000
光が落ちる。
魔族は蒸発。
――爆炎の中、盾を掲げていた兵士の鎧が弾け飛んだ。
焦げた匂いと、短い悲鳴。
「あ……?」
誰かの声。
まあ、戦場だ。
遠くで別の魔族が走る。
「しつこいな」
範囲拡張。
白炎魔法Lv150
消費MP:1,800,000
白い爆裂。
魔族と、その周囲で戦っていた人影ごと、
大きな白い球に補足され――消えた。
沈黙。
「おい……今の、味方も……」
風が焦土を撫でる。
まだ微弱な反応がいくつか。
面倒だ。
まとめていくか。
殲滅魔法・小規模版。
消費MP:4,000,000
光が走る。
戦場は、さらに静かになった。
空から見下ろす。
動くものはない。
完全勝利。
「これが……俺の力か。もう誰も俺を笑えない。誰も俺を傷つけられない。最高だ……!」
MP残量は、まだ七千万台。
……減った感じもしない。
全然余裕だな。
◇
地上。
神殿騎士テオが、立ち尽くしている。
「……あれが……勇者……?」
そのすぐそばで、瓦礫の中から覗く銀の剣の柄。
レオンのものだ。
だが、返事はない。
遠くで誰かが呟く。
「俺たちの……仲間まで……」
歓声は、もう上がらなかった。
俺は城へと向かう。
やり切った感。
「テストは上々、だな」
小説書いてみたくて処女作になります。
至らぬ点しかないと思いますが、毎日投稿するのでご容赦ください。
※この作品はアルファポリスにも掲載しています。




