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突撃

「オラァァァッ!!」

「グルァァァァっ!!」


拳がぶつかりあった瞬間、金属のような音とともに吹き飛び壁に激突した。


「ぐっ!?」


先程までのダメージは負わなかったがそれでも赤鬼との力量差があり。俺だけが吹き飛び赤鬼は数メートル後ろに動かした程度だ。


「アッキーに力で挑もうなんていい度胸だよね。アッキーのパワーに敵うやつなんていないんだから」

「パワーがダメならっ!」


俺は足に力を込め赤鬼にまっすぐ突っ込む。

赤鬼はそれを待ち構えるように振りかぶっている。


「お兄さんはバカかなぁ。アッキーに力押しなんてーーー」

「同じ土俵ではもう戦わねぇよ」


俺は一撃、赤鬼の顔面を殴りつけるとすぐに拳の射程範囲から脱する。

赤鬼は俺が逃げたあとに殴りつけるが当然俺はそこにはおらず、伸び切った腕の死角に素早く潜りこみ数発連打を左足に入れすぐに引っ込むヒット&アウェイを繰り返していく。


「ちまちまとウッザいなぁ」


いつまで経っても当たらない攻撃に彼女はイライラし出している。

赤鬼は確かにパワーはあるがその分その巨体ゆえにスピードがどうしても犠牲になってしまう。

そのスピード勝負に持ち込みじわじわとダメージを蓄積していく。

時間はかかるが今やれる最善の策を実行していく。


「アッキー、早くそいつ殺してよ!」

「グルルアァァァァッ!!」


彼女の声に反応し赤鬼の攻撃も激しさを増していく。

しかし逆に怒れば怒るほど攻撃は雑になり単調になっていくためこちらとしては願ったり叶ったりだ。

そしてーーー


「……アッキー!?」


急に赤鬼がガクンっとその場に膝をついた。


「なんで? アッキーがあんな攻撃でこんなすぐにやられるわけ……まさか!?」

「気づくのが遅いんだよ」


よくある戦い方だ。

巨大相手に戦うにはどうすればいいか。

それは一点集中によるダメージの蓄積だ。

連打で撹乱させておいて実質足を集中的に攻撃していたことに気が付いていなかったようだ。


「アッキー、起きて!」


るなが叫ぶが赤鬼は膝をついたままうめき声を上げるだけで動かない。


(今がチャンスだ!!)


今が好機だと踏み込み、今度は速度ではなく破壊力を重視し拳を握り込み渾身の一撃を叩き込むことにした。


「これで最後だ!!」


拳が赤鬼に届く瞬間、視界にちらりと映ったのは、るなの悲痛な口端が上がった獰猛な笑みだった。


「アッキー、シェイク」

「グルルアァァァァッ!!」


るなの呟きに赤鬼は応えるように右腕を地面に叩きつけた。

今までの力まかせのものとは違うそれは地面を揺らし、そこから派生した衝撃波が俺の体に触れると痺れて動けなくなった。


(これは、マズいっ!?)

「つ〜かま〜えた♪」


赤鬼はゆっくり立ち上がり俺の方を向き、右腕を振りかぶる。

その拳は今度こそ俺を一撃で仕留めようと拳に力を込めると元が丸太よりも太く大きいのがさらに肥大化していく。

俺は必死になって逃げようともがくも衝撃の余波がまだ体に残ってうまく動けない。


「はい、おーしまい♡」


振りかぶった拳が振り下ろされる。

それはまるで処刑に使われるギロチンのように感じた。

ズドンッと鈍い音を立て床に突き刺さった拳は一点に力を凝縮させたのかひび割れることなく、抜いた拳のあとには拳大の穴が空いているだけだった。


「さっすがるなのあアッキーだぁ♪ るなに歯向かうからこうなるんだもんね、べーだ」


るなはあっかんべーをしてはしゃぎまわる。

これまで自身の赤鬼の全力を受けて耐えられたものがいないため、これで終わったと思っているからだ。

しかし、赤鬼だけは空いた穴を凝視し動かずにいた。


「……アッキー?」


動かずいまだ警戒を解かない赤鬼にるなは眉を寄せる。

無音が続いたが、しばらくすると穴から何かが飛び出した。


「うっそ……」


るなは驚愕した声を漏らした。

そこから飛び出した、生きている俺を見たからだ。


「げほっ、げほっ」


とはいえ無傷とはいかず、全身血だらけで骨もいくつか折れているのか立っているだけで精一杯なほど満身創痍ではあるが。


「お兄さんってゾンビかなんか? よく無事だよね」

「本当に、ギリギリだったけどな」


赤鬼の攻撃が当たるギリギリで左腕に全力を注ぎ込み防御し、なんとか成功し絶命だけはなんとか免れた。

正直あの時はもうダメかとも思ったが。


「さーて。そんじゃ2回戦いっとくか?」


本来ならボロボロで動けないはずなのに体の奥底からマグマのような熱さが湧き上がってくる。

まだ戦える。もっと戦いたいと心の底から思えてくる。

自分でもこんな激情は初めてで、それに伴う多幸感に口の端が上がるのを止められない。


「……いいよ、もっと遊ぼ(ころし)あおうか」


彼女も俺と同じ気持ちなのだろう。

闘争心をむき出しにした笑みをこちらに向ける。

そしてまた二人がぶつかり合うために地面を爆発させるような踏み込みで一触即発するその時。


「そこまでだ」


突如現れた大柄な男が凛たちの間に立ち塞がり俺と赤鬼の腕を掴み静止させた。



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