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戦闘

桂木と接敵する少し前。

事務所のある建物の屋上に着地した二人はどう襲撃を行うかを話し合っていた。


「奇襲でって言われたし、隙を見てこっそりってことだよな?」

「るな、そんなつまんないことしたくない」

「いや、つまるつまらないじゃなくてな。騒ぎを起こすなってヴァンからも言われたろ?」

「そんなの面倒になる前にぶちってやっちゃって、そんでダーッて逃げちゃえばいいじゃん。いっつもそうしてるし」

「あのなぁ……」


あまりにも大雑把な作戦、かつ小学生のような物言いに俺は頭を抱える。

いや、見た目小学生だからこういうふうに考えるか。


(そういえばこいつって歳いくつなんだ?)


ふとそんな考えがよぎる。

見た目だけで言えば明らかに小学生なのだが、人は見た目と年齢がマッチしないことがあったりする。

もしかしたらこんなチビッ子な見た目より年上だったりもあるだろう。

そんなことを思いながらじっとるなを見つめていると彼女と視線が合った。


「なによ……あ、ふぅん」


るなは凛の視線に何を思ったかニヤニヤと笑う。

彼女がこのような笑い方をしているときはきっとくだらないことなんだろうなと付き合いの浅い俺でもなんとなく察することは出来た。


「ちょっとぉ、何処見てんのよこのロリコン」

「は?」


わざとらしく腕で胸を隠しるなはニヤニヤくねくねしだす。


「分かってんだから。とうせるなの可愛さとせくしーさに欲情したんでしょ。キッショw」

「……はんっ」


そんなるなの恥ずかしがっているフリに俺は思わず鼻で笑ってしまった。


「あ"?」


俺のそんな態度が琴線に触れたのか、るなは殺意のこもった目と声で返す。


「今なんて言いましたでしょうかコノヤロー」

「だって、その体では流石に、なぁ?」


るながキレる一歩手前でいるなか俺は含み笑いを堪えるように目を逸らす。

さすがにぺたんな体型に列状を催すほど俺の性癖はひねくれてない。


『君たち。じゃれつくのは後にしてくれないかね。なにやら階下で動きがあったみたいだ』


ヴァンの呆れたような苦笑じみた声に下に意識を戻し耳をすませるとなにやら声が聞こえてくる。


『嫌だ、嫌だァァァっ』

「っと。るな、アホなことやってる場合じゃないっぽいぞ」

「あとで覚えてなさいよ……あっきー!」


俺にとっては都合よく、るなにとっては間の悪いことに階下で叫び声が上がるのが聞こえた。

俺に促された彼女は恨めしそうな顔をしてから気を取り直したようにひと息吸い、自身のヒャッキの名を呼ぶ。

すると今まで何もない場所からるなの眼前に赤鬼が現れた。


「あっきー、この床ぶっこわせー!!」


るなは赤鬼に命令するとそれに呼応するように咆哮をあげ、拳を床に思いっきり叩きつけるとコンクリートの床は大きくひび割れ砕け崩れていく。


「さて、あとはなるようになれだ」


階下に落ちながら俺も意識を集中し左手に『ヒャッキ』を宿すと戦いに備えるように気を引き締めた。


ーーーーーーーーーー


「あれ、が目標でいいんだよな?」


階下に着地するとそこには人の身の丈の何倍もある大きな蜘蛛がそこにはいた。

見た目が紫と黒の色合いで毒々しい印象があり、初見からかなりの不気味さを感じさせる。

そいつはギチギチと口を鳴らしながら複眼を全てこちらに向けて威嚇している。


『目標はそれで間違いない。直ぐにやつが吐く糸は強力だから気をつけたまえ』


俺のつぶやきにヴァンはそう回答する。

そしてその言葉を合図に横にいたるなはニヤリと笑う。


「あっきー、そいつをグッチャグチャにしちゃって!」


ヤクザも学生たちも瓦礫に埋もれ、こちらを視認できていないうちに速攻をかけようと、るなは赤鬼に命令を下す。

赤鬼はるなの言葉に従いまっすぐに大蜘蛛に突進し殴りつけた。

拳が当たり鈍い音が聞こえ、大蜘蛛は吹き飛び壁に激突すると壁一面にヒビが入り、晴れかけた粉塵がまた吹き上がる。


「ひ、ヒィィィッ」


瓦礫から逃れていただろう小太りの少年はいきなりひび割れた壁に驚き、こちらをちらりと見たあと一目散に部屋を出ていった。


「やったか!?」


俺の言葉に大蜘蛛はふらふらしており、かなりのダメージを負ってはいるのが見て取れた。


「ちっ。あっきーの攻撃に一瞬で判断して後ろに下がって直撃を避けたみたい。虫のくせにめんどくさいなぁ」


一撃で倒すことが出来なかったのでるなは苛つきながら舌打ち毒づく。


「もう、一撃で死んじゃいなよ。雑魚がしぶとく生き残るの見るほどるなもヒマじゃないってのに」


イライラしながらポケットから飴を取り出し口に含む。


「あっきー、早くトドメ刺して」


るなの言葉に赤鬼はまた雄叫びを上げ大蜘蛛に向かっていき、拳を喰らわせようと構えを取る。


「しかしこうまで圧倒的だと俺がここにいる意味ないようなーーー」


俺がそうぼやいている途中で視界にノイズが走る。

今回の画像は蜘蛛の糸で操られたヤクザが縦横無尽に襲いかかってくるイメージ。

しかも全員が何処から持ってきたのかドスや包丁など様々な刃物を握っている。


「るな。危ねぇっ!!」

「ちっ」


俺声に大蜘蛛にとどめを刺そうと追撃しようとしたるなは後ろから包丁などの凶器を振りかぶるヤクザの攻撃を察知できた俺は彼女を抱きかかえ上に飛ぶ。

ヤクザたちの攻撃は互いに互いを刺してしまい痛みに悲鳴をあげその場に倒れた。


「ウザいなぁ。ヤクザを先にやっていい?」

「人の道から外れてる方々でもそれはダメじゃね。ヴァン、そこんとこどうなの?」

『ターゲット以外は基本殺さずでよろしく頼むよ』

「だってさ」

「あぁもうめんどい!」


ヴァンの指令では俺たちの狙いはあくまでも蜘蛛の討伐と、その宿主の捕獲だ。

そのことをるなに伝えると彼女は苛立だしげな表情で悪態をつく。

しかしこちらがまごついている間に彼らの周りをヤクザや学生たちに取り囲まれてしまった。

どいつからも手足などに糸がくっついており大蜘蛛に操られているのは明白だ。

そんな中瓦礫から這い出てきた桂木は息も絶え絶えにこちらを見るとへらへらと笑いながら指さす。


「ひ、ひゃはははっ。なんか知らねぇが相手はたったふたりだ。やれ、お前ら。俺を守りながらあの二人をぐちゃぐちゃにしてやれ」


桂木の言葉に操られているヤクザや学生が刃物を握りこちらに走り出してくる。


「よし、俺が他の奴ら引き付けとくからお前は大蜘蛛に集中しろ」

「こっちの集中散らしたら後でペナルティだかんね。あっきー!!」


るなの号令で一度開けた距離を赤鬼が大蜘蛛に詰める。

それを大蜘蛛が操るヤクザたちが壁になるように立ちふさがる。


「おっと、邪魔はさせねぇぞ」

「はぁっ!?」


俺はるなを小脇に抱え直し、赤鬼よりも早くヤクザたちの前に立ち塞がり優しく撫でるようにして吹き飛ばしていく。

死ぬほど加減しての攻撃なので死ぬことは無いと思う……多分。


「こらー、るなをモノみたいに扱うな。てか気安くるなに触れるな」

「任せるって言ったのそっちじゃん。これならお前も守れるし俺も補助に回れるしな」

「……なら、いいし」

「あ、おう?」


噛み付かんばかりのるなが急に大人しくなり、俺は肩透かしを食らう。

いつもの反応なら喚き散らしているがそれも最初だけでそれからは特に不満もなくされるがままになっている。


(もっとあれこれ言うかと思ったけど……ま、いいか)


暴れられるよりは遥かにマシと思考を切り替え、赤鬼に向かってくる人間たちを排除していく。


「そして、つかまえた」


大蜘蛛を守る壁がなくなり、逃げ場も封じられあとはもう狩られるだけの存在だ。


「キシエェェェェェッ!!」


追い詰められた大蜘蛛は尻をこちらに向けると糸を撒き散らす。

こちらを捉えるための糸だろう。

しかし普段ならまだしも、追い詰められ苦し紛れの蜘蛛の糸など避けるのは簡単だ。


「つぶれちゃえ、ムシならムシらしくさ」


るなの冷たく言い放った言葉とともに、赤鬼の拳を打ち付けると今度こそ大蜘蛛の真芯を捉え、鈍い音とぶちゅっと潰れる嫌な音が耳に聞こえる。


「ギャシャーーーーー!!!」


悲鳴をあげしばらくは小刻みに動いていた大蜘蛛はしかし、次第に動かなくなり沈黙した。

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