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体の変化

「今日の授業は野球だ。ミニゲーム形式でやるからな」


体育の授業で体育教師の声に生徒たちはじゃんけんでポジションを決めていく。

凛は外野を選択し所定の位置に立つ。


「さっぶ」


冬の風は身を切るように冷たい。

最初は動かなくて済むかなと思い外野を選んだが、逆に動かなすぎて体が冷える。


「内野に行っときゃよかったかな……はっくしゅ」


寒さにくしゃみをすると鼻水が出てくる。

とりあえず寒さに耐えかねてその場で足踏みをしたり軽くジャンプしたりして体を温めておかないと寒さで風邪をひいてしまいそうだ。

ちなみに猫宮たち女子らは体育館でバレーだそうだ。

寒いのには変わらないだろうが風から身を守れる分、まだこっちよりマシだろう。

まったくもって羨ましい限りである。

なんてことを考えながら体育館を見ているとふと視界になにかが映った。


「ん?」


それは人影のようにも見えたが、瞬きをしている一瞬の間にいなくなっていた。


「……まさか、な」

「白鐘、ボールいったぞー!!」


見覚えがあるような奴がいたなと体育館の屋根を見ながらぼーっとしていると、生徒の焦った声が聞こえた。

ちらりと視界の端に捉えたライナー気味な白球がこちらに真っすぐ飛んでくる。


「おいバカ捕……いや避けろ!」


構えるでもなく、逃げる様子もない俺に内野にいる生徒がそう叫ぶ。

そんな生徒たちの思いとは裏腹に、ほぼ予備動作無しで危うげなくボールをミットではなく素手で掴み取る。


「へ?」


内野も外野もそれ以外の生徒たちや、体育教師ですら唖然としそんな声が聞こえる。

そんな中俺はミットのボールを取り、キャッチボールくらいの要領で内野に投げ返す。

投げたボールは打たれた時よりも何倍も速いスピードで、キャッチャー目掛けて一直線に飛んでいく。


「ひっ!?」


そのあまりの速さにキャッチャーは逃げ、ボールはそのまま壁に当たりヒビが入った。


「げっ」


凛自身も驚きはしたものの、それよりも頭の中で出た言葉が「やっちまった」の一言だった。

『百鬼』を内に消すことは出来てもその力の一端は本体の凛に影響を与えているようで、素の身体能力がかなり増しているようだ。


(でもなんだろ。いつものあれが出ない?)


いつもある危険を知らせるノイズと映像が今回は出なかった。


(今朝の猫宮の時は出たのに。なにが違うんだ?)


俺があれこれ考えているとクラスのみんなが俺の周りに集まってきた。


「な、なぁ白鐘。次ピッチャーやってみないか?」

「おいふざけんな。俺を殺す気か!?」


あの後全員が動くことを忘れていた中、ピッチャーをしている生徒だけがボールを拾いに行き塁に出ている奴らをタッチアウトしていった。

ちゃっかりしていると言うか、立ち直りが速いやつもいたものだ。

そしてピッチャーをしている生徒のさっきの言葉というわけである。

それをキャッチャーが本気で止めていた。

そりゃもう涙目で。


「てかどんな力で壁にヒビ入れるバケモンみたいな球投げられるんだよ」

「いやいや、あんな馬鹿みたいなこと人にできるかっての。当たった壁が元々脆くなっててぶつかった拍子にヒビがいっただけだって」

「そ、そうだよな。人間でこんなことできるはずないもんな」


咄嗟についたでまかせではあるが、皆は少しずつそんなもんなんだと認識しだす。

確か人ってあまりにもかけ離れた状況に出くわすと脳内でうまい事変換するみたいだけど、今がその状態なのだろう。

おかげで今はなんとか誤魔化せたが今後は気をつけよう。


「でも、あの返球ってヤバくね?」

「プロどころかメジャーも真っ青だったよな」


まぁもちろん全員誤魔化し切るのは難しいのも無理はないことでもあるが。

そこはもう諦めるか無視するしかない。


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