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最強

 太陽が沈みかけた頃、ようやく洞窟の中から足音が聞こえてきた。

 洞窟の入り口の上に待っていた俺はサムへ向けてジェスチャーでドロシーが来ていることを伝えるとサムは了解と手信号を送ってきた。

 あとはサムの合図で俺が飛び降りるだけだ。


 サムにはドロシーが俺の真下に来るタイミングで合図を送ってもらうように指示してある。

 後は俺がドロシーへ向けて蹴りを放ちながら飛び降りるだけでドロシーを倒せるっていう作戦だ。我ながら完璧すぎて怖い。


 今か今かとその時を待ち侘びているとサムが大きく手を振った。


「ドロシー! お前に恨みはないけど覚悟しやがれ!」


 ドンピシャだ。ドロシーは俺に気づいたようだが、もう遅い。今からじゃ避けられない。


「やれやれ……」


 と、思っていたのだがドロシーは体を軽く捻るだけで避けてしまった。

 そして俺の蹴りはドロシーに当たらず地面に激突した。


「う、うぅ……」


 ジーンと痺れるような感覚が足全体に広がっていく。


「どんな攻撃を仕掛けてくるかと思えばただ落ちてくるだけなんて面白みがないなぁ」


「な、なにをぉ!?」


 失望したような言い草に腹を立てて言い返そうとしたが目があった瞬間、体全体が固まってしまった。

 

 ドロシーの存在感がデカすぎて自分を小さい存在だと本能的に分かってしまったからだ。


 ……俺がビビってるのか? こんなこと今まで一回もなかったのに。


「で、君はなんで私を狙うんだい? 昨日は何かの間違いかと思ったけど違うみたいだしね。君に何かをした記憶はないし……気になるから教えてよ」


「うっ、お前が最強って聞いたからだよ」


 一瞬気圧されてしまったがなんとか勇気を振り絞って言い返す。


「……ぷっ、ぷはは! あはははは!」


 突然笑い出したドロシーにびっくりしてしまう。


「え、なに……どうしたの?」


「あはは……ごめんごめん。私を最強だって分かっていて攻撃してくる子なんて初めてだからね。つい面白くなっちゃった」


「……褒めてんの?」


「そんなわけないじゃん! やっぱりドロシー様を倒すなんて無理だったんだよ! 謝って許してもらおうよ!」


 いつのまにか横にいたサムが俺の頭を無理やり下げさせようとしてきた。


「やだよ! 謝るのは俺が勝ってからだ!」


 サムの力よりも俺の力の方が強い為に簡単に抵抗できてしまう。


「ぷっ、ははは! 君は本当に面白いね。友達の子も安心したまえ、これくらいの事で私は怒ったりしないからね」


 その言葉を聞いたサムの力が弱くなるのを感じる。


「で、君は私が最強だから攻撃してきたとそれで間違いないね?」


「ああ! そうだよ!」


「じゃあ君は今何をしているだい? 最強(わたし)はまだ立っているよ?」


 その言葉が第二ラウンド開始のゴングになった。


「勿論倒す!」


 ドロシーへ向け駆け出し拳を振るうが軽く体を動かすだけで避けられた。


「子供にしてはなかなか動けるね」


「はぁ!? クソ! ならこれで!」


 体を捻って無理やり変な体制で蹴りを繰り出すが、簡単に受け止められてしまう。


「へぇ、そんな体制から蹴りを出せるなんて体が柔らかいんだね。でもそのせいで威力がのってないお粗末な攻撃になってるね」


「うるせー! 余裕ぶってられんのも今のうちだけだからな!」


 それから俺は思いつく限りの攻撃を仕掛けるも全て無効化されてしまった。


「ぜぇはぁ……ぜぇはぁ……くそっ、掠りすらしないなんて」


「もう限界のようだね」


 俺はギリギリ限界だが、向こうは全然余裕そうだ。息一つ切らしていない。


「まだ……だぁ!」


 力を振り絞り拳を振るうがいなされてしまい倒れそうになった所を脇に抱えられてしまった。


「もう暗くなるし、今日はここまでだね」


「うがぁ! 離せ! 俺はまだ戦えるぞ!」


「はいはい分かったから、でも私も君に聞きたいことがあるし今日はここまでだ。……君も一緒にくるかい?」


 そういうとサムの方を向いて質問した。


「あ、え……はい」


 サムは少し悩んだ後頷くと、歩き出したドロシーの後ろを追いかけるように歩き始めた。


「こら! おい! 離しやがれ!」


「ダメだ。君は降ろした瞬間逃げようとするだろ? 君を捕まえるのなんて簡単だけど、私は忙しいからね。無駄な時間と労力はかけたくないんだ」


「絶対逃げない! 約束する!」


 絶対逃げ切ってやる! お前なんかに捕まるか!


「……君は嘘をつくのが苦手なようだね」


 少しの間俺の顔を見たドロシーは要求を拒否するのだった。


 


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