幼き日の思い
俺は何日か考えたが、思いつくのは薬屋のじいの事だった。じいに聞くのが良い気がした。
『エステル、俺薬屋のじいの所に行こうと思うんだ。何か出来ることがあるかもしれない』
『うん、行こう』
薬屋に着くと、
「じい?いる?シンだけど」
「シンか。どうしたんじゃ?」
「ポーションの材料を寄付したいんだ。」
「いきなりどうしたんじゃ?」
「スタンビートが起きて、ポーションが足りなくなりそうだったんだけど、ギルドは忙しそうで薬草なんかを納品できなさそうなんだ。だから、じいに寄付して、少しでも役に立てて欲しいと思ったんだ。」
「話は分かったんじゃが、わし一人じゃそんなにたくさんは作れんのー。シンはたくさん素材を持ってるんじゃないかの?」
「じいの裏の部屋が全部埋まるくらいあるかな。」
「使い切れんのー。全部寄付したいんかの?」
「うん」
「・・・・・・・・そうじゃのー。他にもポーションを作っていて信用できそうなところはある。そこを紹介しようかの?」
「お願いします。」
ぺこりと頭を下げた。
「後、」
「ん?なにかの?」
「俺に他に出来ることは無いかな?」
「んー。鍛冶屋の鉄が足り取らんらしい。と言うか、魔物以外の素材は、全体的に足りてないんじゃよ。」
「何かあったのかな?」
「今Cランク以上の冒険者が北のダンジョンに行っとるじゃろ?その影響で納品依頼が、進んでおらんみたいじゃのう。これもわしの分かる範囲で、紹介しようかの?」
「それもお願いします。」
こうして俺は、出来る限り素材をお店に直で納品し、ダンジョンの素材を採取する生活を7日間続けた。
その間にギルドは大分落ち着きを取り戻し、
俺とエステルは、どちらも一千万ゴールド以上のお金を手に入れていた。
俺は、孤児院の事を思い出していた。
俺が小さいころ、何才だったかは覚えていない。
孤児院の院長が泣いていた。
いつも笑っている院長先生が泣いているのは、普通の事ではないように感じていた。
俺は院長に声をかけた。
「いんちょうせんせい、どうしてないてるの?」
「シン、悲しい、いえ、悔しいことがあったのよ」
「くやしい?」
「みんなにご飯を食べさせることが出来なくて悔しいのよ。力が無いのはくやしい事よ。・・・シンには少し難しかったかもしれないわね。さ、みんなの所にもどりましょう。」
「ぼくねー!ぼうけんしゃになってねー!おかねいっぱいもらってこじいんのいんちょうをたすけるよー!」
「ああ!ありがとう」
院長先生はそう言って俺を抱きしめた。
あの頃は分からなかった。俺に才能が無いことを。
どういう事があって院長が泣き出したのか?
前後の事はあまりよく覚えていない。
でも、院長先生が泣いていて、力が無くて悔しいと言っていた。
その事だけは覚えているんだ。
俺は冒険者になるときに一千万ゴールド寄付するまで孤児院には行かないと決めていた。
今にして思えば、一千万ゴールドではそこまで助けにはならないだろう。
スタンビートの前に孤児院に行った時も、中途半端な金額しか寄付できなかった。
俺はエステルに事情を話して、孤児院へ向かった。
エステルは憑依を解き、準備があると言って出かけて行った。
エステルが戻ってくると大量のお菓子を買い込んでいた。
孤児院
「まあシン、お帰りなさい。」
早速院長先生が声をかけてきた。
院長先生はいつものようにお茶を入れてくれていた。
エステルは子供にお菓子を配っていた。すぐに周りに子供が集まっていた。
やっぱりエステルは子供に人気があるな。
院長先生が椅子に座ると、
「それで、前の話を聞かせてもらえるかしら?」
「ん?なんかあったっけ?」
「スタンビートがあった日に、どうして寄付をするのか、理由を聞いたでしょ。もう一回ここに生きて帰ってきて、理由を教えてくれることになっていたわ。」
「理由か・・。院長先生が前、力が無いのは悔しいって言って泣いてたから。俺が冒険者になって寄付しようと思ったんだ。それだけだよ。それでこれ。」
そういって俺は一千万ゴールドの入った袋を手渡した。
「寄付するね。」
「ああ!あの時の事をまだ覚えていたのね。」
院長先生はボロボロと涙をこぼして泣き出した。
「一千万ゴールドじゃ何も変わらないとは思うけどね。」
「そんなことは無いわ。とてもうれしい。シンもりっぱになったのね。」
院長先生が泣き出したことで、子供が心配してこっちに寄ってきた。
エステルもこっちに来て一千万ゴールドを、院長先生に寄付した。
「エステル、良いのか?」
「うん」
「エステル、ありがとう。」
俺は、院長先生が泣き出したこともあり、
この場に居にくくなって、逃げるように孤児院を後にした。
どうも人が泣いているのは苦手だ。
外に出ると俺は、
「次は一億だな。」
と自然に声を出していた。
エステルはいつの間にか俺の後についてきていた。
エステルが後ろから抱き着き、
「そうだね。シンならすぐに出来るよ」
と言った。
「エステル、俺、20階に行ってレベルを上げたいんだ」
「私も、行く。」
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