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「何でもいいけど。このままじゃ店がマズいんじゃない?」
「そうなんだよな。さすがに売り上げゼロだと店を続けるのは難しい。しばらくは耐えられるが……」
「もしかしてお金が無くなったら僕はまた奴隷に逆戻りということですか!?」
「さすがに一度引き取ったからには責任を持つつもりだが、これまでのような生活は出来なくなるだろうな。最悪、野宿になるかも?」
俺たちはがらんとした店を見渡し、三人同時に溜息を吐いた。
「宣伝方法を見直した方が良いのかもしれない。フェリックスさん、これまではどんな宣伝をしてきたんだ?」
「宣伝?」
俺が首を傾げると、カイルとケニーも首を傾げた。
少しして最初に首を傾げるのをやめたのはカイルだった。
「フェリックスさん、まさか店の宣伝をしてないの!? 一度も!?」
「えっ、駄目だった? 店が出来ればここは何だろうって入ってくる人がいると思ったんだが」
「町にある店ならそうかもしれないけど、ここは町から離れた場所に建ってるんだよ!? 町にある店だって開店前に宣伝はするだろうし」
「完全に忘れてた」
「えー……」
なるほど。店に客が来ない理由はこれか。うっかりしていた。
可愛い店に可愛い男の娘がいれば自然と店が繁盛すると思っていたが、そういうわけではなかったようだ。
「過去を悔やんでも仕方がありません。これから宣伝方法を考えましょう!」
ケニーの言葉にハッとする。
失敗して学んだなら、次に活かせばいい。
「宣伝するならチラシが必要だよな。二人とも、文字は書けるか?」
カイルとケニーが一斉に首を横に振った。
「あちゃー。文字が書けないと客からのオーダーをメモするのも難しいな。客が少ないうちは口頭で良いだろうが、二人には文字を学んでもらわないと」
とりあえず文字の習得についてはおいおい考えるとして、まずは今出来ることをやろう。
「じゃあチラシの文字は俺が書くから、二人は可愛い絵を頼む。あとは店までの簡単な地図。地図の見本は俺が描くから、真似をして描いてくれ。二人のように文字の読めない人は多いから、絵を見るだけでこの店のことが分かるようなイラストもよろしくな」
こうして俺たちは流れ作業でチラシを作っていった。
俺が文字を書いて、カイルが見本を真似して町から店までの地図を描いて、ケニーが余白に可愛らしい絵を描く。
従業員の制服のイメージをロジーナに伝えるために買っておいたクレヨンが役に立った。
「よく絵が描けるな、ケニーは」
「えへへ。好きなんです、絵を描くのが。カイル君の地図も分かりやすいと思いますよ」
「オレのは見本通りに描くだけだからな。見本も無くスラスラ絵を生み出せるケニーとは違うって」
「俺から見たら二人とも上手だと思うぞ。自信を持っていい」
まだここに来てから数日しか経っていないことが嘘のように、二人ともこの家でリラックスが出来ている。
二人一緒に引き取ったことが良かったのかもしれない。きっとどちらか一方だけを引き取っていたら、こうはならなかっただろう。
二人が残っていたのは偶然だったが、俺には追い風が吹いている気がする。
このチラシを配って宣伝をしたら、きっと客がたくさん来る!
* * *
「フェリックスさん。どうしてもこの服で宣伝をしないといけないんですか?」
「もちろん。これが一番店の宣伝になるからな!」
フリフリひらひらの制服を着たカイルとケニーが顔を赤くしながら歩いている。
町まであと少しというところで、怖気づいてしまったらしい。
「今さらだけど、この服装で町に行くのはなかなか根性がいるな」
「……どうしても無理なら引き返そうか」
もじもじしている二人を見て、さすがの俺も申し訳なくなってきた。
しかし俺の提案を聞いたカイルとケニーが、激しく首を横に振った。
「あの生活を守るためなら、オレの恥なんかどうでもいい! 男は度胸だ!」
「弱気なことを言ってすみません。僕も野宿で生き残れる気はしません。なのでこの制服で野宿を回避できるなら、やります!」
何とも頼もしい限りだ。
二人が頑張ってくれているのだから、この宣伝を無駄にするわけにはいかない。
俺も全力で頑張ろう!
町に着いた俺たちは、注目の的となった。
図らずも、町に到着した途端に宣伝のための舞台が整った形だ。
「先日開店した、丘の上の『男の娘カフェ』でーす! よろしくお願いしまーす!」
注目が集まっていることに気付いた俺は、すぐに宣伝を始めた。
俺の声でハッとした様子のカイルとケニーが、慌ててチラシを町行く人に配り始めた。
フリフリの服を着たカイルとケニーの姿を見て笑う者もいたが、俺がにらむと笑みを消した。
俺は自分のゴツイ身体が嫌いだったが、こういうときには便利かもしれない。
「可愛い男の娘たちに接客されながら、可愛いお店でご飯を食べてみませんかー?」
この調子でチラシを配りまくろう。
『男の娘カフェ』という隙間産業的カフェだから、きっと刺さる人と刺さらない人がいる。
むしろ、たまに刺さる人がいる、くらいに考えておいた方が良いかもしれない。
だからとにかく多くの人に宣伝をしなくては。
俺たちはひたすら町を練り歩き、チラシを配りまくった。
これで効果が無かったら泣くしかない。
俺以上にカイルとケニーが頑張ってくれたのだから、どうか宣伝効果よ、出てくれ!




