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「今日は、エヴァンとダイアナの歓迎会かつ、カイルの仕事完全復帰会かつ、ケニーの圧倒的勝利会だあーー!!」
店の定休日、ついにエヴァンとダイアナの歓迎会を開いた。
そしてカイルのパン屋での禊勤務が終わったことと、ケニーがいじめっ子を打倒したこともおめでたいから、一緒に祝うことにした。
ただし本人たちが言いたいかは分からないため、内容はぼやかしておく。
「フェリックスさん。わたくしたちの歓迎会は分かりますけれど、後ろの二つは何ですの? 仕事完全復帰会と圧倒的勝利会?」
「オレ、明日から店の営業日は全日勤務することになったんだ」
「僕のは、この店とは直接は関係ないですね。ただ僕に自信がついただけです」
「自信がついただけ、ではありませんわ。自信をつけることって、とても大変ですもの。何が理由かは分かりませんけれど、すごいことですわ」
「ありがとうございます、ダイアナさん」
どうやらケニーはいじめっ子に勝利したことで、自分に自信がついたらしい。
たとえいじめっ子に勝利しなくても、ケニーはケニーであるだけで素晴らしいことだが、子どもにとっては勝利が分かりやすく自信に繋がりやすいのだろう。
ちなみにケニーに負けた三人衆は、三人揃っての圧倒的敗北がよほど恥ずかしかったようで、町でケニーと目が合うと逃げていくようになったらしい。
てっきり三人衆がリベンジをしに来ると思っていたらしいケニーにとっては、かなり拍子抜けだったようだ。
「俺は旨いメシが食えれば何でもいいですよお!」
ふと見ると、エヴァンは普段男の娘店員として働いているとは思えないワイルドさで肉にかぶりついていた。
店でも昼食としてまかないを出しているが、エヴァンはいつもこのような食べ方をしていたのだろうか。
念のために、まかないを食べる際は制服を着替えるように、と言っておいて正解だった。
「でもさすがに料理が多すぎはしませんか? 僕たちだけでこの量は無理ですよ」
ケニーがテーブルいっぱいに並んだ料理を見て苦笑した。
最初はテーブルを二つくっ付けてその上に料理を並べようと思ったのだが、量が多すぎるためにテーブルを三つくっ付けている状態だ。しかも三つのテーブルをくっ付けているにもかかわらず、テーブルの上には隙間が無い。
「やっぱりか。おめでたいことが重なったからって、気合いを入れすぎちゃったみたいだ」
「あっ! じゃあ余った料理は俺が持ち帰っても良いですかあ!?」
料理が多すぎるという発言を聞いたエヴァンが、高々と右手を上げた。
「エヴァンさん、残飯を持ち帰るんですの?」
「何を今さら。さすがに客の残飯は持ち帰ってねえですが、俺、いつも余った食材をもらって帰ってますよお。ベーコンの切れ端とか、固くなり始めたパンとか」
「そうだったんですの!?」
エヴァンが廃棄品を持ち帰っている事実を知ったダイアナが、自身の口を押さえながら驚いた。
そんなダイアナの様子を、カイルが呆れたような顔で眺めている。
「なんでキッチンスタッフなのに気付いてないんだよ。勝手に持って行くわけにはいかないから、フェリックスさんがエヴァンに渡してたんだろ?」
「確かにフェリックスさんがパンや肉の切れ端をエヴァンさんに渡しているところを見たことはありますけれど……余った食材を持ち帰るという発想が無かったので、エヴァンさんにゴミを出してきてくれと頼んでいるのだと思っていましたわ」
ダイアナはそんな風に思っていたのか。
エヴァンが欲しがらなかった場合でも、捨てるのではなく俺たちの夕飯に使用しようと思っていた物だったのだが。
「ダイアナさんって、もしかしなくてもお金持ちの家の人ですよね?」
まだ食べられる物をゴミと勘違いしたダイアナに、ケニーも価値観の違いを感じたらしい。
「なななっ、なんでそう思うんですの!?」
「逆になんでそう思われないと思ってるんだよ。あんな馬車で通勤しておいて」
カイルがダイアナのことを横目で眺めながら溜息を吐いた。
「馬車……まさかそんなもので気付かれてしまうなんて。もっと店から離れた場所に停めるんでしたわ」
「馬車の件が無くても、いろんなところに出てるな、金持ちの匂いがプンプンと」
思わず俺まで加勢をしてしまった。
だってあまりにも、ダイアナは良いところのお嬢さん臭が強すぎる。
「プンプンですねえ。口調も、立ち振る舞いも、読み書きが出来ることも、馬車での通勤も。もちろん従業員が余った食材を欲しがるのは珍しいことでもねえのに、その発想自体が無かったことも金持ちの証拠ですよお」
自分では隠しているつもりだったらしい身分が全員に察せられていることを知り、ダイアナが頭を抱えた。
「ダイアナさんは、どこのご令嬢なんですか? ここの近くですか?」
「もっ、もう、わたくしの話は終わりですわ! 別の方の話をしましょう!? そうですわ、フェリックスさんはこの店を開く前はどこで働かれていたんですの!?」
ダイアナはこれ以上話していると自分がどこの家の令嬢かまで吐かされてしまうと思ったのか、話題を変えようとした。
しかしその話題は俺が困るんだよなあ。




