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今日は男の娘カフェの定休日。
この休みを利用して、俺は新しいメニューを考案することにした。
今はサンドイッチの具を日替わりで変えて誤魔化しているが、さすがにもう少しメニュー数を増やした方が良い気がしてきたからだ。
「売れなくても材料が無駄にならないように、出来るだけ同じ材料を使うもので、それでいて飽きられないような工夫をしないと……」
以前メニュー数は少ない方が管理しやすいという結論に達したが、実際に店を営業してみてそれではダメだと気付いた。
なぜなら、この店はリピーターが多いからだ!
つまり同じ客が何度もうちの料理を食べることになる。
「うーん。同じようなメニューだけだとリピーターが飽きちゃうよな。うちの店はリピーターのおかげで何とかやれてる状態だから、リピーターが来なくなったら、また閑古鳥が鳴いてしまう」
だからリピーターが飽きないように、メニューを充実させる必要があるのだ。
「と言っても、俺に作れる料理なんてたかが知れてるもんなあ」
前世では実家暮らしだったから料理は親が作ってくれていたし、高校に持って行く弁当は冷凍食品を詰めていただけだ。
この世界に来てからも幼少期は親が料理を作ってくれていたし、魔王討伐の旅に出てからは肉を焼いたり魚を焼いたりするだけのワイルドな冒険者飯しか作ってこなかった。
さすがにトーストやサンドイッチくらいは作れる――味は可もなく不可もなくと言われたが――とはいえ、いきなり難しい料理を作るのは無理だ。
この世界では料理のレシピをインターネットで検索することも出来ないから、なおのこと凝った料理は挑戦しづらい。
「トーストやサンドイッチと差別化できて、俺でも作れるような料理……うーん……」
「何を悩んでるんだ?」
「うわっ!? 何だ、カイルか」
「僕もいますよ」
誰もいない店内で頭を悩ませていると、いつの間にか一階に降りてきていたカイルとケニーが俺に声を掛けた。
「何か問題が発生したのか? この前の迷惑客がまた来たとか?」
「もしもあの客がまた来たとしてもまた投げ飛ばすから、その件は問題ない。そうじゃなくて店のメニューで悩んでたんだ」
「ええ……その解決法は果たして問題無いのでしょうか」
「ケニー、この店に常識を持ち込むのは野暮だ。ここでは常識を忘れるんだ」
カイルが何とも言えないアドバイスをケニーにしている。
やっぱりこの世界でも迷惑客を投げ飛ばす対応は常識的ではなかったのか。しまった。
……まあこれからも迷惑客は投げ飛ばすつもりだが。
「迷惑客のことは置いておくとして……メニューはロジーナさんと相談をして、簡単なものだけにするって決めたんじゃなかったでしたっけ?」
ケニーが不思議そうな顔で首を傾げた。
「そうなんだが、実際に店を開店したら新規客よりもリピーターが多いことに気付いてな。メニューが少ないとリピーターに同じものばかりを食べさせることになるから、改善が必要だと思うんだ」
「あはは。特にデザートはプリン一択ですもんね」
そう言って、ケニーが苦笑した。
俺にもっと魔力があれば、冷蔵庫だけではなく冷凍庫も稼働させてアイスクリームを作る選択肢も生まれるのだが、あいにく俺の魔力では冷蔵庫だけで手一杯だ。
冷凍庫を扱うことが出来るのは、魔法使いくらいだ。この世界の冷凍庫は、間違っても俺のような格闘家に扱える代物ではない。
「でもここに来る客のほとんどは料理に期待して来てるわけじゃないだろ? 料理よりも、可愛いオレたちに会いに来てるんだと思うよ」
アイスクリームに思いを馳せている俺に向かってカイルが言った。
「それはそうなんだが、いくら二人に会いに来てるとしても、さすがに同じものを食べ続けるのには限界があるだろ」
「可愛いオレたちに会うためなら、そのくらい気にしないんじゃない?」
カイルの意見はもっともだ。こういったコンセプトカフェは、コンセプトに惹かれた人たちがリピーターになるのだ。ゆえにそれ以外の部分には多少目を瞑ってくれることが多い。
しかし、だからと言って料理をおざなりにしていいわけではない。
いくら男の娘に会いに来たとは言っても、料理が同じものばかりでは、だんだん食事が苦痛になってしまう。
客の寛容さに甘えていたら、いつの間にか客がいなくなっていた、なんてことになりかねない。
「……って、今日は定休日だから遊んできていいんだぞ。二人で虫捕りでもしてきたらどうだ?」
「僕、虫はあまり好きじゃないです」
「うんうん。虫捕りよりも新メニュー考案の方が楽しそうだよな!」
「遊びの一環と思ってくれてるなら良いが、無理に付き合う必要は無いからな? 陽の光を浴びて走り回ることも子どもには必要だ」
「あっ、今日はまだ畑に水撒きをしてなかった。陽の光を浴びながら水撒きをしてくるよ」
そう言ってカイルがスキップをしながら畑へ向かった。
カイルは自分の蒔いた種が育っていくのが嬉しいらしく、頼んだわけでもないのに毎朝畑に水撒きをしている。
何だか小学生の頃にやったあさがおの観察を思い出してくすりとする。あの頃は俺も毎日あさがおの成長を見守っていたっけ。
「うわあああーーー!!」
そのとき、庭からカイルの叫び声が聞こえてきた。




