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自分が描いたイラストの異世界に転移してしまった  作者: マホロ
第2章 邂逅(かいこう)

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第90話 工房が欲しい

 翌日、工房付きの貸家を探すために商業ギルドにやってきた。登録した時と同じように受付で番号札を貰いソファーで待っている。


「ちょっと楽しみだわ。貸家だけど自分の工房が持てるのは……ヴェニカは何かしたいことはないの?」


「私か?特にないのう。暇なら寝てるだけじゃし、ミオが製薬しているのを見るのも結構楽しいぞ?私たちは、長い時間を過ごすから暇なのは慣れとるんじゃ」


「そうなのね……でもやりたいことがあったら言ってね、できる限り一緒にやるから」


「ふふふ、そうじゃな。何かあれば言うさ」


『フェシーは何かないの?』


『私ですか?私も特にありませんね。たまに夜中に狩りを楽しんでますが、それで十分です』


『そうなの?知らなかった。どうやって外に出てるの?』


『ヴェニカに窓を開けてもらってます。自分でも開けることはできますが、どうしても音が出てしまってミオさんが起きてしまいそうになるので……』


『そうなんだ、ヴェニカもありがとうね、手伝ってもらって』


『気にするな、些細なことじゃ』


 こんなゆったりとした時間を乱す存在が現れた。商業ギルドのギルドマスターだ。ヴェニカに向かって話しかけた。


「こんにちは、今日はどういったご用件でしょうか?」


「……」


「あの、ご用件は?」


「……」


「ご用件を言っていただければ、すぐにご案内できますけど……」


「うせろ……」


 ギルドマスターはしゅんとなって裏に下がっていった。この前と同じように背中が煤けていた。ギルドマスターが去ると代わりに職員がやってきた。


「お待たせしました。ご案内します」


 職員に案内されて商談ブースへ通される。すでに担当者と思われる男性が笑顔で待っていた。


「商業ギルド、不動産部門担当のニルスと申します。よろしくお願いします。今日は工房付きの貸家をお探しと聞いております。条件などはございますでしょうか?」


「薬師のミオです。よろしくお願いします」


「行商人のヴェニカだ」


「条件はですね、まず工房がある程度広いことですね、そこですぐに商売をするつもりはありません。次に庭があれば嬉しいです。薬師なので薬草やハーブを少し育てようと思います。それと庭に小さな小屋を建てたいので、それができる物件がいいです。あと大幅な改築はしませんが、ある程度の改築を認めてもらえる場所がいいですね。最後に住むのは私とヴェニカ、それから頭の上にいるフクロウのフェシーです」


「なるほど、なるほど、住居兼工房の物件ですね、そして庭があること……場所の希望はありますか?職人街が良いとか、大通りに近い方が良いとかです」


「そうですね、特にここがいいと言った希望はないですね、ただ女2人なので出来る限り治安がいい場所でお願いします」


「そうなるとかなり限られてきますね。簡単な説明をしても良いですか?」


「はい、お願いします」


「図面を持ってくるのでしばらくお待ちください」


 ニルスさんは図面を取りに裏へ下がっていった。どんな物件が出てくるかワクワクしてしまう。いちから自分で設計して建てるのも楽しいのだろうけど、やっぱり建築に関してわからないことが多いし時間もかかる。それなら多少改築して良い物件を自分好みに仕立てる方が工夫というスパイスを入れて設計でき、時間もそこまでかからないだろう。最低限の施設があれば後は自分好みにすればいい。


「お待たせしました。候補は4件になります。まず1件目ですが……」


 ニルスさんが図面をテーブルの上に広げた。


「この商業ギルドから北側に歩いて10分程度の場所にある物件です。工房の広さは一般的なものです。特に狭いということはありません。それから庭はあまり広くはありませんが、薬草とハーブを育てる程度であれば問題ないと思います。ただ、小屋を建てるスペースまで取れるかは微妙なところです。住居部分は4部屋とキッチン、ダイニングがあります。お二人で住むのであれば十分かと思います」


 図面を見てみると、平屋で通り沿いに工房と住居の入口がそれぞれに配置されている。使い勝手は悪くなさそうだ。ただ庭の広さがやはり狭い。これでは庭にお風呂の小屋が建てられない。薬草園を諦めれば建てることは可能だが、やはりそこを譲ることはできない。


「なるほど、とりあえず次の物件の説明をしてもらっていいですか?」


「承知しました」


 次の図面をテーブルの上に広げた。今度は2階建て物件のようだ。


「こちらは職人街の大通りの中心から、西側に入って15分程度の物件です。2階建てなので庭は広くなっています。ここであれば薬草やハーブを育てる場所も十分確保できますし、小屋を建てることも可能です。工房は先ほどより少し狭くなりますが、住居部分があるので諦めていただくしかありません。住居部分は1階にキッチンとダイニング、2階に3部屋となっており、テラス部分があるのでここでお茶を飲むのも悪くないでしょう」


 悪くない物件なのだが、やはり工房が狭いのが気になる。なかなかピンとこないものだ。残りの2件に期待したいところではある。

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