第86話 ドラゴンの鱗
翌日、リデナスタ近郊の草原にいる。領都からみて南西側であまり冒険者などが来ない場所だ。ヴェニカが興味を示していた、私の《ソニックバレット》を実演するために来ている。
「ヴェニカ、鱗の大きさはどの程度なの?」
「そうじゃな、一番大きいものは1リグより少し大きい程度じゃな、小さいものは数十セリグ程度のものまである」
「なら最初は小さいもので試しましょう。出してもらってもいい?」
15cm四方の鱗をヴェニカから受け取った。あまり分厚くなく、思ったよりも軽い。それに何より、綺麗なのだ。表面はエメラルドグリーンに輝いており、太陽の光がキラキラと反射している。手触りも滑らかで、磨き上げられた金属のようだが、冷たさを感じない不思議な素材だった。
「始めは威力の弱いものから試すね。ヴェニカは1回ごとに鱗が脆くなったりしてないか確認してほしい」
「わかった。任せておけ」
弾丸が鱗で跳ね返り、跳弾で怪我をすることを防ぐために斜めに向けて鱗を設置した。狙いが外れた時のために後ろ側と両サイドに土を盛りその後ろに硬化した土の板を設置した。
10m程度離れた場所に立ち、《装填:近》を使用する。9mmの弾丸が私の前に現れた。そして狙いを定めて
「発射」
キンッと高い音がして、弾丸は上空に飛び出していった。
「完全にはじかれたわね、ヴェニカお願い」
「全く問題ない。完全に防いでおる」
「わかったわ。ありがとう、このまま次の威力の検証に移るわ」
今度は20m程度離れた。10mでも良かったのだが、安全を考慮してこの程度にした。《装填:中》を使用する。先ほどより小さいが細長い5.56mmの弾丸が現れる。狙いを定めて発射した。
ピシッという僅かな衝撃波の音と同時に、先ほどと同じような高い金属音がして弾丸は上空に逸れていった。
「これでもダメか……ヴェニカ見てくれる?」
「さっきよりは強力であったが、鱗は問題ない。それにしても恐ろしい魔法じゃのう。発動とほぼ同時に着弾しておる。人種なら避けるのは不可能に近いのう」
「次は遠距離からの狙撃を目的としたものだから、多分結果は同じだけど検証はしてみるわ」
さらに距離をとり50mほど離れた。《装填:遠》を準備する。7.62mmの弾丸が現れ私の前で待機状態になった。狙いの精度を上げるために《イーグルアイ》を起動する。そして小さな鱗に狙いを定めて発射した。
ギンッと先ほどより大きな音がして、今回も弾丸は鱗に弾かれた。
「さすがに、5.56mmよりは強力ね、音が違ったわ。ヴェニカどう?」
「すごいな、防ぐことはできたが、少し削られておる。一応、鱗は変えた方が良いじゃろう」
「わかったわ。ドラゴンがこの程度の傷を受ける場合って、どんな感じなの?」
「そうじゃな、痛くはないが、何か強力な一撃を貰ったと認識する程度じゃ。警戒度を上げる指針にする程度ではある」
鱗を回収してもらい、新しい鱗をセットした。大きさや形、厚さは前のものと変わりがない。
最後に《装填:強》だ。12.7mmの弾丸を使ったアンチマテリアルライフルだ。これをわずか50mの至近距離で発射する。これでどこまで傷がつくかが勝負どころだ。準備して狙撃に移る。
「発射」
ギャインッという音と共に鱗が割れた。ただ、粉々に割れているわけではなく、半分に割れた感じだ。鱗より周りの土の方が被害が大きい。鱗を中心に土がえぐれており、割れる前の鱗に押されてクレーター状になっていた。
「割れたわね、ただ粉々にならずに割れる程度にとどまるのは、さすがドラゴンの鱗だと思う。ヴェニカどう?」
ヴェニカは少し顔色が悪くなっていた。
「これは予想外だな、この一撃だけで私たちをどうにかすることは無理だが、連続で叩き込まれたら場所によっては致命傷になる。単一の魔法でここまで鱗を傷つけられる魔法はないのう」
「そうね、この魔法は完全に貫通力での突破を目的とした物理的破壊魔法だから……試してはいないけど、さらに弾丸を大きくして、スピードを上げれば破壊力はさらに上がるわ。ただそこまでの威力が必要だとは思ってないから、構想程度までね」
「なるほどのう。人相手であれば1つ前までの威力で十分に無力化できるじゃろう。最後のやつは強力な魔物であっても効力があるのう。ドラゴンの鱗を貫くのだ。防げる魔物は存在せん。ただ、《マテリアルガード》のような物理攻撃を軽減する魔法もある。対策は必要じゃろう」
「そうね、でも現状で8発連続で発射可能よ、それを1秒おきにできると考えたら?」
「《マテリアルガード》も意味がないのう、距離さえあればゴリ押しができるわけか……そこまでいくと私でも危ないかもしれん。風のシールドでもどこまで威力が落とせるか……私も対策を考えるか?」
「ヴェニカにこれが向くことはあり得ないわよ。それにこれを実行できるのは私だけよ」
私がヴェニカと戦うことはあり得ない。戦うぐらいならヴェニカに殺された方がましだ。




