第84話 ヴェニカのカードケース
早速ヴェニカのカードケースに空間拡張の魔法を掛けることにする。フェシーは大丈夫だと言ってくれてはいたが、魔力の枯渇に備えて魔力ポーションを用意しておく。慎重に1立方キロメートルの空間をイメージして魔法を唱えた。
「ディメンションプラス」
カードケースがわずかに光り、私の中の魔力がカードケースに移っていく。特に魔力が枯渇する様子はない。数秒後、魔力の移動が終了した。用意してあった魔力ポーションを収納してみる。すっと手元から消えた。多分中に入ったのだろう。そして今度は手元に出してみる。魔力ポーションが現れた。
「大丈夫そうね、認証の魔導具なしで試して、そのあと認証の魔導具を入れて試してみて」
「わかった。やってみる」
ヴェニカはカードケースを受け取ると、長い杖を保管庫から取り出して、今度はカードケースに入れたり出したりしているようだ。ニコニコしながら何回も繰り返しているので、問題なく動作しているのだろう。
「ミオ、これは便利だぞ。保管庫の中にカードケースをしまっても、カードケースの中身が出せるのだ。それに保管庫から直接カードケースに入れたり出したりできる。保管庫が綺麗になったのじゃ」
「そんなことも出来るのね、私には試せないことだから、ヴェニカが試してくれて新しい情報として知ることができたわ」
「そうか、作ってくれてありがとう。代金は……フェシーすまんどのくらいじゃ?」
『そうですね、広さや認証機能など総合的に判断すると、最低でも大聖銀貨1枚程度の価値はあると考えますが、それだとミオさんが納得しないので、聖銀貨1枚から3枚程度で良いのでは?』
「ふむ、その程度で良いのか?確かに大聖銀貨1枚分の価値はあるだろう。そうじゃな聖銀貨3枚にするか、それとミオが死ぬまで一緒にいるとしよう。なあに長くても300年程度じゃ」
「んん?金額もあれですけど、私は人種です。早く死ぬつもりはありませんが、長くても100年が限界ですよ?」
「そんなことないぞ、ミオの魔力であれば最低でも200年から250年は生きられる。老化も極端に遅くなるから、100歳で人種の30代くらい、200歳で人種の40代くらい、といったところか。見た目は200歳でも20代の見た目が維持されることが多い」
「そうなんですか?」
「まだ18歳じゃろ?これから魔力が増えれば400年も見えてくる。私の400年なんぞ一瞬じゃ、いくらでも付き合うたる」
「まあ、年齢については実際にどうなるか自分で自分を観察するしかないわね、それより金額だけど、聖銀貨3枚って30,000,000シル??フェシー?」
『それでも安いくらいです。それ以下にするとヴェニカがカードケースを受け取れません。対価として受け取ってあげてください。そして足りない対価をミオさんが亡くなるまで一緒にいるという行動で示しています。その気持ちに答えてあげてください』
「フェシーそこまで言わんでいい、恥ずかしいじゃろ」
ヴェニカは少し顔を赤くして照れていた。いつも奔放な彼女が照れている。いいものが見られたかもしれない。ヴェニカの気持ちを快く受け取ることにした。
「わかったわ。支払い方法は相談だけど、聖銀貨3枚は受け取るわ。これからもよろしくね」
ヴェニカとの関係は3日前に始まったばかりだ。でもすでに長年一緒にいるような、姉のようにも感じるし、時には妹のようにも感じる。彼女の人柄、行動、心意気、全てが私にとって心地の良いものだった。そんなヴェニカとこれからも一緒にいられるのは、私にとっても心底嬉しいと感じた。
ヴェニカ用の拡張鞄ができ、対価も決まったので、結合の魔導具を調べる。私のポーチに入らなかったので、どこかに空間拡張が使用されているはずだ。
「ねぇヴェニカ、どこが空間拡張されているかわかる?」
「その魔導具か?ちょっと見てみよう」
そう言って、魔導具を調べ始めた。扉を開けたり閉めたりしているが、しばらく考えてから扉の中にある素体を乗せるトレーと排出されるトレーを取り出した。
「これでポーチに入れてみてくれ」
「わかった」
指示通りに結合の魔導具を収納する。テーブルの上から魔導具がなくなった。ポーチに収納できたようだ。
「やはり、このトレーが空間拡張されておる。ただ、亜空間との接合点が現状では見えぬ、何か仕掛けがあるのだろうが今はわからん」
「なるほど、トレーは代わりのものでも大丈夫だから、使う分には問題なさそうね。でもそのトレーが使えれば大きなものでも結合することが可能になるわ」
ポーチから結合の魔導具を取り出して、テーブルの上に置いた。そろそろ食事の時間なので、先ほど言った実演をしてから食堂に向かうことにした。
「さっき言ってた実演をするわ。結果は食堂でね」
トレーに小さな薪と岩塩を入れ、上にセットする。下にもトレーは戻しておく。そして結合を行う。下のトレーには30g程度の白い粉ができていた。それをポーション瓶に入れてポーチにしまった。ヴェニカは不思議そうな顔をしていた。




