第81話 ギルドカードレプリカ
職人街の工房で目的のギルドカードレプリカを見つけることができた。見た目は領域で見たものとほぼ同じなので間違いないだろう。魔眼で確認をしてみる。
【個人認証カード】
材質:硬化聖銀カーボネート
成分:聖銀、炭酸イオン
備考:未初期化状態
間違いなく古代文明の個人カードだ。フェシーの言った通り初期化がされていない。それにしても聖銀カーボネート製とは、これを見ると古代文明の技術力の高さがうかがえる。
「ありがとうございます。とりあえず目的のものは1つ見つかりました。これってたくさんありますけど、1枚おいくらですか?」
「そうかい、それは良かった。レプリカは1枚1,000シルだよ。硬い金属のような板だから結構いろんなことに使ってるのよ、家具の敷板にも使えるし、腐食しないからタイルの代わりにも使われているよ」
まあ、カーボネート化している聖銀を通常と同じ聖銀としては扱わないだろう。古代文明の遺物なので魔力が通りやすいのは当たり前であると考えている節もある。
「なるほど、便利そうなので20枚くらい購入したいです。大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、たまにしか売れないものだし、古代文明の遺跡が見つかるとそれこそ大量に手に入るからね。うちにも500枚くらいあるから好きなだけどうぞ。それにどこの工房でも譲ってくれるさ」
「ありがとうございます。他の魔道具も見せてもらいますね、何かあったら声をかけます」
「あいよ、こんな工房だけど、ゆっくりしていくといいよ」
「ヴェニカ、何か良さそうな魔道具はあった?」
「私から見れば特にないね、珍しいものはあったぞ。これだ」
ヴェニカが見つけたものは、高さ50cm程度の縦長の箱だ。幅と奥行きは15cm程度で、2段に分かれて扉が付いている。上下の扉の間に魔石が嵌まっており、何らかの魔道具であることは間違いない。
『何ですかこれ?見たことある形ですけど……』
『魔力視眼で見ればわかる。しかも動くと思うぞ、ただ使い方がわからないだけだろう。私にも良くわからんが』
ヴェニカに言われて魔力視眼で確認をしてみる。
【結合の魔導具】
物質を結合するための魔導具、素体から原子および分子の分離結合が可能。
(……まじか……領域にあった結合の魔導具の小さいやつだ)
『フェシー、これって領域にあったやつの小さいものだよね?』
『そうですね、間違いないと思います。現在の人々では「原子および分子の分離結合」はわからないですし、そもそも説明書などないので使用はできないでしょう』
『私は魔力視眼で説明を見ても理解不能だぞ?何かと何かを結合することだけはわかるが……』
『これはどんな値段であっても購入したいです。詳しくは後で説明しますが、ヴェニカにお金を借りてでも手に入れます』
『お、おう……そうか……ミオがそこまで欲しい魔導具か、わかった』
「すみません。これってどういった魔道具ですか?」
「どれどれ、ああ、それね……使い方がわからない《《魔導具》》ね。一応魔力は入るけど、何をやっても動かないのよ。魔導回路を解析しても複雑すぎて無理のようよ」
「そうなんですか……ちなみにおいくらですか?」
「えっ?買うのかい?使い方がわかるのかい?」
「いいえ、それはわかりません。ただ、動くかもしれない魔導回路を見てみたいですし、使えないなら入れ物としても使えるだろうから」
「まあ、そこまで言うなら売ってもいいけど、ちょっと主人に聞いてくるわ」
工房の女将さんは、作業をしているご主人に値段を聞きにいった。
「あんた、あの魔導具はいくらで売るんだい?」
「どれだ?ああ、あの箱か……さっぱり使い方もわからんのに、物好きもいるもんだ。流れてきた商品だし、俺が持っていても仕方がない。いくらで買ったかな?金貨1枚くらいか?」
「動かなかったり、使用方法のわからない魔導具の相場は、だいたいそんなもんだね。それでいいんじゃない、聞こえたと思うけど金貨1枚でいいよ」
「はい、ありがとうございます。そしたらこの魔導具とレプリカ20枚で、120,000シルでいいですか?」
そう言って金貨1枚と大銀貨2枚を渡した。箱を持ち上げてみるが、そこまで重くない。これなら持ち運んでも大丈夫だろう。
「毎度あり、また何か欲しかったらいつでも来てちょうだい。魔道具作りもやってるから作ってほしいものがあれば依頼してね」
「はい、ありがとうございます。機会があればまた来ます」
レプリカ20枚と魔導具を受け取り、工房の外にでた。私はホクホク顔だ。魔導回路の素材としてギルドカードのレプリカを使用しなくてもよくなったが、解析や研究を含めて何かに使えるだろう。周りに人がいないのを確認してポーチに魔導具をしまおうとしたが、入らない。
「ポーチに入らないってことは、空間拡張が使われている?」
「じゃろうな、私の保管庫には入るから入れてやろう。レプリカが古代文明の個人カードだったとはな、興味がないから魔力視眼で確認したこともなかったわい」
目的の金属、実際は魔導具になったが、手に入ったので、宿に帰ることにした。




