第75話 ギルドカード
カード発行用の魔道具で発行されたギルドカードに魔力を流した。すぐに表面の幾何学模様のようなものが光り、私の情報が表示されたので内容を確認してみる。
【名前】ミオ
【性別】女
【種族】人種
【年齢】18歳
【所属】リデナスタ薬師(シルバー)
【預金】0シル
特に問題があるとは思えないので、魔力を流すのを止めた。すぐに表示が消えた。
「問題はないです。確かに私のギルドカードになりました」
「わかりました。確認ありがとうございます。続いてヴェニカさんお願いします。書類はセットしたのでいつでもどうぞ」
ヴェニカもカードを差し込み上部の魔石に魔力を注入した。数秒後に出てきたカードを確認すると頷いて懐にしまった。
「問題ない」
「わかりました。カード発行の手続きは以上で終了です。ギルドカードを紛失した場合の再発行には手数料が、50,000シルかかりますのでご注意ください。では、ありがとうございました」
そう言って、魔道具と書類を持って職員は下がっていった。
「さて、ミオさんや、買い物にでも行こうかの」
「待ってください。少々お話したいことがあります」
ギルドマスターに引き留められた。これ以上なにかやることがあるのだろうか?
「こちらには特に話はないが?」
「いえ、正直に話すので聞いていただけませんか?」
「正直と言っても、新人の薬師と行商人にわざわざ話すことなぞないじゃろ?」
「そこを何とかお願いします」
(ああ、まだ続くのか、政治的な話は別でやってほしい……)
『ヴェニカ、聞いてあげたら?私も関係するのだろうけど、任せるわ。貴女なら無茶なお願いもされないだろうし、私だと丸め込まれそうで……』
『そうじゃな、ソファーで待っておれ。フェシーもおるし大丈夫じゃろ』
『お任せください』
念話でさっさと会話を終わらすと、ポーションと薬を回収して私は席を立った。
「では、私はあちらで待っていますので、ごゆっくりどうぞ。登録ありがとうございました」
「いや、君にも関係が……」
ギルドマスターの言葉を聞き流してソファーに向かった。どのみち内容は予測ができている。
ギルドマスターが正直に話すといった点と、私に関係があると言った点、そして城門の衛兵さんが、薬師が減っていると言った点、製薬の依頼と値段の交渉、あわよくば私の薬の独占、そんなところだろう。たぶんレティシアスさんから渡されたものに、ポーションや薬をある程度確保しろといった内容が書かれていたのだろう。 条件としては、工房の無料貸し出しとかだろう。他にもあるかもしれない。
交渉なんてしなければ、適当に作って卸していたのだが、ギルドマスターはかえって損をしてしまった。領都に入ってからのヴェニカは頼もしい。それに勝つのはいくら海千山千のギルドマスターでも難しいだろう。私が了承すればいいわけだから、私が確実に狙われる。私はあの場にいない方がいい。
心が少し殺伐としてしまったので、フェシーを手の上に乗せた。
『ちょっとモフモフしていい?』
『モフモフですか?まあ構いませんけど』
両手でフェシーを揉みくちゃにする。フェシーの胸に顔をうずめ思いっきり息を吸い込んだ。フクロウ吸いだ。日向のような良い匂いがする。さらに柔らかい羽を折らないように揉みくちゃにしていく。
『あの、そろそろやめません?羽がぐちゃぐちゃです……』
『もう少し』
『はぁ……』
数分間フェシーを弄り倒した。しばらくボーっとしているとヴェニカが戻ってきた。ちらっと眼に入ったギルドマスターの背中は煤けているように見えた。にべもなく断られたのだろう。
「終わったぞ、全部断った。余計な策を立てるからこうなるのだ。放って置けばミオは普通に納品しただろうに、余計な欲をかくからだ。登録料は払っておいたぞ、10,000シルだ。今回は面倒にも巻き込んだから私が持つ」
「わかりました。でも少しは納品しますよ?薬師としての矜持はありますからね」
「それでいい、ミオの自由にすればいい」
そう言ってヴェニカは微笑んだ。まだ数日という短い時間だが、信頼できる人であり頼りになる人だ。私は彼女と一緒に行動できることが何よりの宝物だ。
商業ギルドから出て、防具や鞄を売っている店に向かっている。ヴェニカが知っているお店で、革製品を扱っており腕がいいそうだ。
「その店で胴衣と鞄も買えるからな、私もミオに細工をしてもらう鞄を買うつもりだ」
(細工?ああ、拡張の鞄か)
「サイホルスター用の工夫って思いついた?私は全然思いつかないけど……」
「ワンピースにポケットのように見える小さなスリットを入れるくらいしか、思いつかんのう」
「普段は使わないし、そういう簡単なのでいいのかもしれない。あと、ポーションの納品で運搬するための背負うタイプの鞄が欲しいかな?50本くらい入れば十分だけど」
「それは見てみないとわからないな、なにかあるじゃろ」
買い物の相談をしながら歩いていると、ヴェニカが1件の商店の前で立ち止まった。どうやら目的の店に着いたようだ。




