第69話 リデナスタに向けて
地下シェルターに入りフェシーが帰って来るのを待ちながらヴェニカと果物を食べている。今日はバーナにしてみた。まあ、普通にバナナだ。今は水を飲んでいるが、そのうち休憩するときに飲む麦茶を作ろう。大麦があれば作れるだろう。
『お待たせしました』
フェシーの声が聞こえたと思ったら、止まり木にフェシーが止まった。飛行している音は全く聞こえなかった。さすがフクロウ。
「おかえり、どの程度の距離だった?」
『約15キリグで城門に到着します。私たちの移動速度であれば、約2刻で到着します』
「普通の人たちに比べて移動速度は速いの?」
『速い方に入ります。ミオさんは、身体強化を使っていますし、ヴェニカは1日中走っても問題ない体力を持っています』
そりゃドラゴンだから体力はバカみたいに多いだろう。要は私の速度で時間が決まるってことだ。
「わかったわ。準備して出発しましょう。早く着いた方がその後の行動もやりやすくなるからね、フェシーは疲れてない?」
『私は大丈夫ですよ。ドラゴンよりは体力が少ないですけど、移動中はミオさんに止まってるだけですから』
トイレを済ませて、タラップで地上に上がる。一応入口から顔を出して周りを警戒する。誰もいないのは、索敵魔法でわかっているのだ、念のためだ。
「問題ないわね」
全員が地上にでたので、シェルターを撤去し街道に向けて歩き出した。丁度街道には人影も馬車もなく自然に合流することができた。
「ここからは、楽なもんじゃ。街道沿いに魔物が出ることは少ない。野盗もここまで街に近いと活動範囲外じゃろう」
「なんで魔物が少ないの?」
「主要な街道は、領主が領軍を派遣して魔物を討伐するからな。街道が安全でないと商人どもが近寄らなくなる。そうなると食料があっても領民は逃げ出すからな」
「確かにそうね……ここの領都でも食料の生産はしているの?」
「しているぞ、領都の北に大きな川が流れておる。それを水源に広大な農耕地がありそこで作っておる」
なるほど、領都だけである程度の防衛ができるようになっている。それに川と農地を北側に配置することで、南にあるリデナ大森林からの魔物の氾濫を領都で受け止め、農地を守る体勢になっているのだろう。
2時間程度歩くと両側に長く続く城壁が見えてきた。残り7kmから8kmなので城壁の高さはかなり高いと予測できた。
「城壁が見えてきたね、領都ってどれくらいの広さがあるの?」
『先ほど上空から見た限りでは、城壁の幅は4キリグから5キリグで形は台形になっているようでした。単純な計算で18平方キロメートルですね』
「それなりに広いわね……」
「まあ、そんなもんじゃろ。この領都は中規模と言える。リデナ大森林からの防衛はもっぱらリデナ砦の役目じゃから、ここまで魔物が迫ってくるとなると大災害じゃ」
「そういえば領都から向かってくる人や馬車を見かけないけど、どうして?」
「この時間に、領都を出ると野営になってしまう。次の村まで行くには、急ぎでもない限り午前中に出るしかない」
そうか、移動速度を考えると、こんな夕方に近い時間に領都から出る人はいないだろう。
(安全面を考えれば当たり前か……)
話しながら歩いていると城壁がどんどん大きくなってきている。城門もはっきりと視認できる距離まできた。
(確かこの城門の挿絵は描いた記憶がある。高さ30mの設定だったかな?)
「大きいわね、さすが領都といった規模ね」
「王都なんぞ、もっと無駄にでかいぞ?」
周りに徒歩で移動している旅人を見かけるようになってきた。私たちの方が速いので追い抜いていく。城門の様子もはっきりと見え始め、少し列ができているのも確認できた。
「少し時間が早いから、そこまで混んではいないようじゃな」
「夕方だともっと多いの?」
「そうじゃな、今までに追い抜いてきた旅人も到着するし、近場で仕事をしていた者達も戻ってくる時間じゃからの」
私たちは城門に到着し、列の最後尾に並んだ。視線がヴェニカに集まっている気もするが、気にしないでおく。話の内容は聞こえないが、ひそひそと話し声も聞こえている。
『村の名前はどうする?適当で良いと思っておるが……』
ヴェニカが念話で話しかけてきたので適当に考えて返しておく。
『そうね、ネアの村で。この辺にある村の名前?』
『この周辺にはありません。この地域から離れればあるかもしれませんが、どこにでもありそうな名前なので問題ないと思います』
『では、それで統一しよう。ミオも聞かれたらそう答えるんじゃぞ、基本的には私が話す。何か聞かれたら問題のない範囲で話すといい』
『わかりました』
出身地の村の名前も決めたので大丈夫だろう。人と話すのはまだ苦手に感じるが、ここ数日ヴェニカと話すことでだいぶ慣れてきたようだ。彼女で会話の練習ができたのは短い時間ではあるが、とてもありがたいことだった。
少し緊張しているが、ヴェニカも一緒なので大丈夫だろう。列はどんどん短くなっていき、やがて私たちの番がやってきた。




