第7話 魔法の検証(生活魔法・ウォータ / ファイヤ)
【生活魔法】の《ウォータ》を使用することが出来た。飲料水を出すことができ、温度調節も可能である。あとは成分の調整とどの程度の水量まで出せるのだろうか。
(とりあえず成分調整ね……)
薬剤師にとって使い慣れた純水をイメージする。これが出せれば製薬にも役に立つ。この世界で製薬するかどうかはわからないが、純水があれば不純物の少ない薬が作れると思う。マグカップに水が現れたので飲んでみる。
(相変わらず味のない不味い水ね……成分分析までは出来ないけど、この味は純水の味だ)
ミネラル分を含まない水は作れる。そうなると、あとは硬度の高い水や、何か添加した水が作れるかを試してみるしかない。こういった実験はワクワクする。良くない結果が出たとしても、それが知識として追加されていくので問題ない。
検証の結果、硬水は出せた。あと炭酸水、それから特定の成分を多く含む水、言うならば温泉水だ。ただ、成分独特の香りが付くことがあっても、フレーバーウォーターのような水や、砂糖水は出せなかった。生理食塩水は作れた。
(結果的に有機物を含む液体は無理ってことね……まあ【生活魔法】だけでここまでできるのなら十分な結果だと思う。それにミネラルを多く含むお湯が出せればそれは温泉、風呂桶さえあれば温泉に入れるってことになる)
こうなると、出せる水の量が気になってくる。この小屋にある風呂桶に満たせるくらい出せるなら、それだけでも十分だろう。風呂場に行き単純硫黄泉をイメージして《ウォータ》を使用する。
「ウォータ」
みるみるうちに風呂桶の8割程度までお湯が満たされた。風呂場には硫黄の匂いが立ち込めている。手を付けてみると少し熱めではあるが十分に入れそうだ。衣装部屋に行きタオルと着替えをひっつかんで風呂場に戻った。
本来であれば体や頭を洗ってから入るべきだが、私しか入らないし、そこまで汚れているわけでもない。まあヒートショックも起こさないだろう。それでもゆっくりと風呂桶に体を沈めた。
「おほっ、ふひぃ~~~~」
変な声が出た。でも久しぶりの温泉は気持ちが良い。ただ日本で入った温泉に比べると少し味気ない気がする。たぶん本来の温泉はもっと複雑な成分が溶け込んでいるのだろう。
これは自然界だからこそ発生するもので、人工的な成分調整だとこのくらいが限界なのかもしれない。それでも入浴剤よりは自然温泉の成分に近いだろう。
風呂から上がりタオルで体を拭くと肌がしっとりとしている。温泉の効果も十分に出ているようだ。あまり魔力を使った感じもしないし、いつでも温泉もどきだが入れるのはかなり嬉しい、それもいろんな成分で違ったお湯を楽しめる。
良い気分に浸りつつ、昨日のようにゴムで髪をまとめて外に出た。丁度お昼過ぎくらいだろうか、少しだけ太陽が西に傾いている。つぎは《ファイヤ》の検証をすることにした。
家から出て右側にある岩場へとやってきた。地面は硬い、細かい砂があるので砂岩になっていそうだ。家の前は土なのに途中から急に砂岩に変わる。完全に区域が分かれているようだ。
周りに可燃物はなさそうだ。とりあえずライター程度の炎をイメージしてキーワードを言ってみる。
「ファイヤ」
シュボという音とともにオレンジ色の炎がついた。炎が揺らめいていないので風の影響はほぼ受けていないのだろう。とりあえず成功したので他の検証を続けてみる。
まずは温度かな、高温になれば炎の色も変化するはずだ。結果は予想通り、赤色の低温域からオレンジ、黄色、白色と高温域まで再現できた。それに青色の炎も確認できたので1,600℃以上の高温も可能なようだ。
(あとは炎の大きさや、物体に対する影響度が知りたいわね)
炎の大きさを調整してみたが、ライターくらいの炎から、10cm程度の炎しか出せなかった。高温の青い炎を出しても熱は感じられないが、枯れ枝に火をつけるとその温度が感じられる。他の物質に火が移ると熱源として作用するようになるようだ。
青い炎を拳大の岩に向けて点火する。しばらくすると岩が赤くなり溶解しだした。地面の砂岩も少し溶けて凹んでいる。炎を止めると急速に冷却され、溶けた岩と地面に黒い痕が残った。別の岩をその場所に投げてみたが、ガラス化までは至っていないようだ。
引き続き検証を続ける。高温の炎を連続で使っているが、魔力が消費されている感覚はあるものの、減っている感覚はない。体全体に十分な魔力があるように感じる。
この『領域』だからこその特性か、私自身の特性なのかはここから出てみないことには検証することが出来ない。
(薄暗くなってきたし、今日は終わりにしよう……明日は属性魔法が使用できるかの検証ね……)
寝室に戻り、髪ゴムを外すと私はベッドの上に横になった。相変わらずシーツが敷いてあるとはいえ藁のベッドなので少しチクチクする。眠気は無いが常夜灯を《ライト》で灯し瞼を閉じると昨日と同じように自然と眠りについた。




