第63話 北の街道に向かって
準備を終えてシェルターから外に出る。ヴェニカはジャンプ1つで外に出て行った。《地下野営シェルター撤去》を使用して埋め戻す。ヴェニカは原初魔法、特に私のオリジナル魔法が気になるようなので、一応簡単には説明しておく。
「面白いことを考えるのう。そうなると、そのポーチは拡張の鞄か?」
「そうです」
「それを手に入れられるとは、運がええのう。フェシーから貰ったのか?」
「いいえ、自分で作りました」
「ほう……自分で作れるのか、この時代に基準なぞないのによく作れたのう」
「基準は、異世界……別の世界からたまたま持ち込めたので……」
「なるほどのう。確認じゃが、私にも同じものを作ってもらうことはできるか?もちろんタダで作れなどとはいわん」
「フェシー、どうなの?私は別に作ってもいいけど……」
『ヴェニカは複数個持っているのではないのですか?古代文明の時代も生きていた貴女であれば所持していると思うのですが……』
「いやな、どうも人が作るものは壊れやすくていかん」
『ああ、壊したんですね、それも全て……確かにあなた方はそこらへんが大雑把ですからね……おかげで領域の魔導具がわんさか増えるわけですね……』
「でも、ヴェニカは手ぶらですよね?荷物はどうしているのですか?最初は長い杖を持ってましたけど、いつの間にかないし……」
「それはな、私たちドラゴンは、種族特性として保管庫を持っておる。拡張の鞄ほど大きくないが、それなりの量の荷物をしまえる。大事なものはそこにしまっておる。拡張の鞄は普段使わないものを入れておくのに便利なのじゃ」
私たちは北の街道に向けて話しながら歩いている。魔物も動物も全くいない。フェシーに理由を聞くと、ヴェニカが少しだけ威圧を周りに放っているらしい。ヴェニカに聞くと、
「話の邪魔はされたくないからの」
と、返された。まあ、私も好き好んで戦いたいわけではないので、これはこれでありがたい。
「先ほどの拡張の鞄だけど、これで良ければ今日の夜にでも作りますよ?」
ポーチから、ホーンバッファローのポーチを取り出してヴェニカに見せる。
「そのポーチは質が良いのう。作るのは街に着いてからで良い、ベルトなんぞを購入せんといかんからのう」
「わかったわ。このポーチにこだわる必要もないから、街で鞄を見つけてもいいですし、そこはヴェニカに任せますよ。それと個人認証はつける?」
「ほう?個人認証とな?それはどういうことじゃ?」
「今、私が身に着けているポーチだけど、私しか使えないわ。ヴェニカ、ポーチを開けてみて」
「どれ、ポーションが6本入っておるのう。確かにこれは拡張の鞄だとはわからん。少量の魔力を感じるが状態維持程度か?」
ヴェニカは状態維持が掛かっていることを見抜いた。でも、拡張の鞄だとわからないと言っているのは大きな収穫だ。それに認証機能も正常に動作している。
「蓋を閉じて。私が開けるとこうなるの」
ポーチを閉じてもらい、私がもう一度開ける。ヴェニカが開けた時に見えていたポーションはなくなっている。
「ほう、拡張の鞄の収納口じゃ、亜空間との接合点が見えるのう。これはいったいどういう仕組みじゃ?」
「フェシー、ヴェニカに見せても大丈夫?」
『問題ありませんよ』
ポーチから認証用魔道具を取り出して見せた。
「ほう、魔道具か……単純な作りじゃがしっかりできておるのう。ミオが作ったのか?」
「ええ、危険な薬品もあるのでどうしても個人の認証が必要だったの、私はヴェニカのように強くないし、保管庫もないから……」
「なるほどのう。実に素晴らしいアイデアじゃ、是非私の鞄にもつけてほしい」
「でも、ヴェニカならそんなのなくても大丈夫じゃない?」
「まあ、そうなのじゃが、自分専用というのは価値があるのじゃよ。自分しか使えないという特別感が出るではないか、そういうものは長く大事に使うようになる。ミオもそのポーチが自分専用というのは嬉しいもんじゃろ?」
「確かにそうね……当たり前のように使ってるけど、愛着はあるわ」
「じゃろ?愛着が湧いたものは大事に使う。私だってそうだ。保管庫の中に入っているものは大事にしておる。じゃから、誰でも使える拡張の鞄は適当に扱って壊してしもうた。ミオが作ってくれた私専用の鞄、特別感があって大事に使いたくなる逸品じゃ」
そこまで言ってくれるのであれば、認証機能付きの拡張の鞄を作ろうと思う。大きさは作るときに相談すればいい。
「わかったわ。装備とか鞄が決まったら作るわ。街での買い物が楽しみね」
「そうじゃな」
私たちは、草原を北に向かって歩き続けている。陽もそろそろ傾いてきたので、野営の準備に入る。ヴェニカが増えたので居室を2つ追加する予定だ。中心に今までの居室を据えて、左右に少し小さい寝室を作る。サイズも大体決めてあるので、すぐに作れるだろう。個室ができたのなら、更衣室を潰してもいい。そんなことを考えながら《地下野営シェルター》を地面に展開した。




