第61話 新たな同行者
私は今猛烈に困っている。オリハルコン冒険者の後ろ盾は非常に強力だ。国ですら逆らえないに等しい。だが、そのせいで私の存在が大変目立ってしまう。静かに暮らしたい私にとって、これは大きな難題だ。
『さて、そこの面倒なドラゴンさん。そろそろ諦めて帰ったらどうですか?ミオさんは私が守護しますし、そんな面倒な後ろ盾はいりませんよ』
「ふむ、面倒か……ならもう少し姿を変えて、野に隠れていた凄腕魔法使いとしてついていくか?」
「それって、最初の女の2人旅に戻るのでは?」
「さっきも言ったが、そんなのは撫でてやれば良い。数は多くなるかもしれんが、問題ないじゃろ」
『その提案であれば私は妥協しましょう。一人で守るより二人で守った方が確実ですからね』
「フェシーが言うなら構いませんが……私の言うことは聞いてくださいね。さっきも言いましたが、目立つのは苦手なんです」
「そうか、認めてくれるか、なら早速姿を変えよう」
ヴェンティスはそういうと、髪の色だけ黒に変えた。確かにあの緑の髪はトレードマークだろう。でもそれで大丈夫なのだろうか?それとそのでっかい胸を引っ込めてほしい。
「えっと、その大変豊かな胸を小さくすることはできないでしょうか?」
「無理じゃな」
「わかりました。問題が起こらないことを祈ります」
「なんじゃ、諦めが早いのう。無理なものは無理じゃが」
「一応聞きます。なんで無理なんですか?」
「ん?私がこのでっかいオッパイを気に入ってるからじゃ、はっはっはっはっはっ」
(……はっはっはっじゃねぇ、この糞ドラゴンめ……)
『ミオさん、諦めましょう。彼女の力は圧倒的です。よほどのことがない限り、ミオさんの安全性は揺るぎません』
彼女とやり取りしている間にお昼になってしまったので、休憩兼昼食をとることにした。《地下野営シェルター》を展開する。ヴェンティスは黙ってそれを眺めていた。
「どうぞ入ってください。少し休憩しようと思います」
「ふむ、面白い魔法じゃの、しかも原初魔法か、使い手がいたと云うより、ミオじゃから使えるのか……そこの《《お使い》》、この魔法は登録せんのか?」
『しませんよ、ミオさん専用です。わざわざ登録して貴女たちの興味を引いてどうするんですか?それと私は《《お使い》》ではありません。プロフェッサー、フェシーという名前があるのです。そちらで呼んでください』
「わかった。フェシーと呼ぼう」
そういうとヴェンティスはシェルターの中に飛び込んだ。私もタラップを使って降りて行った。
ヴェンティスは《ライト》をつけて部屋の様子を見て回っていた。私は机と止まり木を形成して、椅子を2脚作った。ヴェンティスは一通り見終わったのか、戻ってきて椅子に腰かけた。私も椅子に座る。マグカップがないので、その場で無色だが同じようなマグカップを作り出し、水を入れてヴェンティスの前に置いた。
ポーチからオレジを取り出して、皮を剥き綺麗に切って皿に並べる。
「今はお茶が出せないので、水で我慢してください。それと果物をどうぞ」
「ミオよ、そんなに気を使わなくてもかまわん。だが感謝する。いただこう」
私もオレジに手を伸ばして食べる。爽やかな酸味と芳醇な甘みが口の中に広がった。ポーチから治癒ポーションを取り出して、身体強化の魔法を切る。足に筋肉痛の痛みが広がった。治癒ポーションを飲み、痛みを消す。
「お待たせしました。一応これからの方針を話します。今はこの地域の領都であるリデナスタを目指しています。私は大森林から出てきたので、リデナの砦で怪しまれることを避けるため、今の経路を使っています」
「ふむ、目的はわかった。その前にあの奥の部屋にある椅子みたいのは何じゃ?」
「えっと、トイレ……用を足す場所です」
「なんじゃ厠か……使ってみたい、後で良いから使い方を教えてくれ」
「わかりました。続けますね、リデナスタに着いたら商業ギルドで薬師の登録をします。ヴェンティスさんも冒険者ギルドに登録しますか?」
「いや、ミオの付き添いでいいじゃろ、冒険者ギルドは、初めからとなるといろいろ面倒じゃ、それとヴェニカと呼んでくれ」
「わかりました。商業ギルドに登録した後は、私はこの世界について知らないことが多いので、いろいろ街を見て回るつもりです。公衆衛生や経済状況、治安が中心になると思います。どの程度滞在するかは決めていないので、まだわかりませんがとりあえず宿に泊まるつもりです。街を見て回る時に、つまらないかもしれませんが同行をお願いします」
「なに、かまわんさ、ミオと一緒におればいろいろと新しい発見もあるじゃろ。おぬしが使う原初魔法もなかなか見ていて飽きない」
「わかりました。改めてよろしくお願いします」
「ではさっそく、そのトイレ?の使い方を教えてくれ、要はあそこに座ってオシッコをすれば良いんじゃろ?」
「トイレで合っています。では行きましょうか」
このドラゴンは未知のことに興味津々のようだ。悠久の時を生きるドラゴンだからかもしれない。下品ではあるが……




